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【第43回日本SF大賞】荒巻義雄さん『SFする思考』と小田雅久仁さん『残月記』が受賞

日本SF作家クラブは2月19日、2021年9月1日より2022年8月31日までの間に発表されたSF作品の中から最も優れた作品に贈る「第43回日本SF大賞」の受賞作を発表しました。

 

第43回日本SF大賞が決定!

第43回日本SF大賞は、2月19日にZoomで行われた選考会の結果、次の通り大賞が決定しました。
なお功績賞が、故・鹿野司さん、故・津原泰水さん、故・八杉将司さんに贈られます。

選考委員は井上雅彦さん、草上仁さん、小谷真理さん、斜線堂有紀さん、立原透耶さん。

 
<第43回日本SF大賞 受賞者・受賞作品>

【大賞】

『SFする思考 荒巻義雄評論集成』荒巻義雄さん/小鳥遊書房)、『残月記』(小田雅久仁さん/双葉社)

『SFする思考 荒巻義雄評論集成』荒巻義雄さん/小鳥遊書房)、『残月記』(小田雅久仁さん/双葉社)

◎荒巻義雄(あらまき・よしお)さん
『SFする思考 荒巻義雄評論集成』(小鳥遊書房)

◎小田雅久仁(おだ・まさくに)さん
『残月記』(双葉社)

 
【功績賞】

◎鹿野司(しかの・つかさ)さん(サイエンスライター)
◎津原泰水(つはら・やすみ)さん(小説家)
◎八杉将司(やすぎ・まさよし)さん(小説家)

 
大賞受賞作には正賞として賞状とトロフィー、副賞として賞金100万円(但し、受賞が複数の場合は等分)が贈られます。また、功績賞には正賞として賞状と記念品が贈られます。

贈賞式は、2023年4月22日(土)、代官山 蔦屋書店にて開催されるイベント「SFカーニバル」内で行われ、日本SF作家クラブ公式YouTubeにてオンライン配信されます。

★日本SF作家クラブ公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-zZT661Iyh_df6AX07IkgA

★「SFカーニバル」(4月22日&23日開催)
◎公式サイト:https://store.tsite.jp/daikanyama/sf-carnival2023/
◎公式Twitter:https://twitter.com/SF_CARNIVAL

 

受賞者プロフィール

 
【大賞】荒巻義雄(あらまき・よしお)さん

1933年生まれ、北海道小樽市出身。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業後、出版社勤務を経て、家業を継ぐために帰郷。仕事上の必要から北海学園大学短期大学部土木科を卒業。1965年から札幌を拠点として創刊されたSF同人誌『CORE』でSFの執筆を始める。1970年、評論「術の小説論」を『SFマガジン』5月号に、短編小説「大いなる正午」を同誌8月号に発表してデビュー。

1972年、短編「白壁の文字は夕陽に映える」で第3回星雲賞日本短編部門を受賞。同年刊行の第一長編『白き日、旅立てば不死』(早川書房)が翌年の第1回泉鏡花文学賞の最終候補作となる。2011年刊行の詩集『骸骨半島』(林檎屋文庫)で翌年の第46回北海道新聞文学賞詩部門を受賞。日本SF大賞では、2014年の『定本荒巻義雄メタSF全集』(彩流社)で第36回、2017年の『もはや宇宙は迷宮の鏡のように』(白樹直哉シリーズ完結編)で第38回の最終候補作となっている。

他の著作に『神聖代』『空白の十字架』『ニセコ要塞1986』『紺碧の艦隊』、評論『シミュレーション小説の発見』など多数ある。

 
【大賞】小田雅久仁(おだ・まさくに)さん

小田雅久仁さん

小田雅久仁さん

1974年生まれ、宮城県仙台市出身。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。

2012年の『本にだって雄と雌があります』は、同年の「SFが読みたい!」国内篇で第7位、翌年の第3回Twitter文学賞国内部門で第1位となる。2013年の短編「11階」が第25回SFマガジン読者賞国内部門を受賞。9年ぶりの著作『残月記』で2022年本屋大賞第7位、第43回吉川英治文学新人賞を受賞。他に雑誌やアンソロジーに掲載された単行本未収録の中短編が多数ある。

 
【功績賞】鹿野司(しかの・つかさ)さん

故・鹿野司さん

故・鹿野司さん

19599年生まれ、愛知県出身。日本大学文理学部応用物理学科卒業。サイエンスライター。パソコンゲーム雑誌「ログイン」でサイエンスコラムを連載するなど、様々な媒体で執筆。高度な科学知識が必要な対象を平易で親しみやすい文体で解説・紹介することに努めた。『SFマガジン』での長期連載「サはサイエンスのサ」は1994年から逝去直前まで続いた。同連載を元にした科学エッセイ集『サはサイエンスのサ』(早川書房、2010年)で第42回星雲賞ノンフィクション部門を受賞。

他の著書に『オールザットウルトラ科学』(ビジネスアスキー、1990年)、『ウィザードリィ5 プレイングマニュアル(ビジネスアスキー、1990年)、『狂牛病パニック 脳が溶けていく』(石原洸一郎さんとの共著、竹書房、1996年)、『巨大ロボット誕生 最新ロボット工学がガンダムを生む』(秀和システム、1998年、第30回星雲賞ノンフィクション部門参考候補作)、『教養』(小松左京さん、高千穂遙さんとの共著、徳間書店、2000年)、『狂牛病ショック』(石原洸一郎さんとの共著、竹書房、2001年)などがある。

ほか「科学救助隊テクノボイジャー」「ガメラ1 レギオン襲来」「宇宙戦艦ヤマト2199」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」などアニメや映画のSF考証も手掛けた。2022年10月17日に逝去。

 
【功績賞】津原泰水(つはら・やすみ)さん

故・津原泰水さん

故・津原泰水さん

1964年生まれ、広島県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。1989年に津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。1997年に現名義で『妖都』を刊行、以降幅広いジャンルで執筆を行う。

2006年『ブラバン』がベストセラーに、2012年短篇集『11』が第2回Twitter文学賞国内部門1位となる。2014年に短篇「五色の舟」がSFマガジン“オールタイム・ベストSF”国内短編部門1位に選出される。同年、マンガ化されていた同作(漫画:近藤ようこさん)が第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。

著書に『ペニス』『少年トレチア』『綺譚集』『バレエ・メカニック』『流璃玉の耳輪』『ヒッキーヒッキーシェイク』、〈幽明志怪シリーズ〉〈ルピナス探偵団シリーズ〉〈たまさか人形堂シリーズ〉などがある。

法政大学大学院客員教授やよみうりカルチャー文章講座の講師なども務めた。2022年10月2日に逝去。

 
【功績賞】八杉将司(やすぎ・まさよし)さん

故・八杉将司さん

故・八杉将司さん

1972年生まれ、兵庫県姫路市出身。九州国際大学法経学部法律学科卒業。2003年、第5回日本SF新人賞を受賞。翌2004年に刊行された『夢見る猫は、宇宙に眠る』で作家デビュー。同作は量子論とナノテクノロジーを軸に人間の認知と宇宙のあり方を問うた本格SFで、作家の基本的スタンスを示した。

以後、視覚描写を排して“全人類盲目”の世界を描いた『光を忘れた星で』(第43回星雲賞日本長編部門参考候補、講談社BOX、2011年)、多種多様なSFガジェットを盛り込み「継承」のテーマに挑んだ壮大なポストヒューマンSF『Delivery』(第33回日本SF大賞最終候補・第44回星雲賞日本長編部門参考候補、ハヤカワSFシリーズJコレクション、2012年)、人気SFアニメのノベライゼーション『楽園追放―Expelled from Paradise―』(原作:虚淵玄さん、ハヤカワ文庫JA、2014年)、第一次世界大戦とフッサール現象学への綿密な調査に裏打ちされた『LOG-WORLD』(pixivにて公開、2021年)といった意欲的な長編群を発表。他方で短編作家としても定評があり、脳の認識異常によって “動くものが見えず、静止したものしか見えない” という症状に見舞われた青年の行動と心理を描いた「ハルシネーション」(『SF JAPAN』2006年春号、徳間書店)、メタヴァースでのロマンスと量子もつれを軸に奇想を炸裂させた「うつろなテレポーター」(『SF JAPAN』2007年冬号、徳間書店、のちに『虚構機関 年間SF傑作選』、創元SF文庫、2008年に再録)、“存在失認”と人間自身に内在するフィクション性との関係を鮮やかに結びつけた「私から見た世界」(『小説現代』2013年7月号)をはじめ、『SF JAPAN』『異形コレクション』『小説すばる』『小松左京マガジン』といった文芸誌やアンソロジー、人工知能学会やロボット学会の学会誌にも短編やショートショートを寄稿、九十九神曼荼羅シリーズや夢幻∞シリーズ(ともに小学館eBOOKs)といった電子書籍の競作企画にも精力的に参加した。2011年、日本SF作家クラブ公認ネットマガジンとして有志と「SF Prologue Wave」を立ち上げ、初代編集長に就任(2013年まで)。退任後も同サイトの主要寄稿者であり続け、複数作が韓国語に翻訳紹介、遺稿となった「宇宙の選択」「やり直す」も「SF Prologue Wave」に発表された。2021年12月逝去。

 

日本SF大賞について

日本SF大賞は、一般社団法人「日本SF作家クラブ」が1980年に創設し、主催している文学賞です。毎年9月1日から翌年8月31日までの1年間に発表された作品を対象としています。ピクシブ株式会社と株式会社ブックリスタが協賛。

大賞受賞作には正賞として賞状とトロフィー、副賞として賞金100万円(但し、受賞が複数の場合は等分)が贈られます。また、特別賞、功績賞には正賞として賞状とトロフィーが贈られます。

トロフィー原型デザイン:横山宏/写真:藤井太洋

トロフィー原型デザイン:横山宏/写真:藤井太洋

第34回より、候補作選出にあたって「エントリー制」を導入。日本SF作家クラブ会員だけでなく、一般のファンや読者も、同等の権利でエントリーに参加できます。

エントリーされた作品のなかから、日本SF作家クラブ会員の会員投票によって、5作品ほどの最終候補作品が選ばれます。そして、「選考委員の討議」により、最終候補作品のなかから日本SF大賞が決定します。

エントリーできる作品は「出版物や映像作品、および現実に起きた出来事や製品も含む」となっており、「はやぶさ帰還」などの出来事や、「ボーカロイド」「ASIMO」などの製品も対象となります。

エントリーの際の評価基準は、SFとしてすぐれた作品であり、「このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品」や「SFの歴史に新たな側面を付け加えた作品」となります。

自薦・他薦は問わず、同人誌、インターネット上の活動、自主制作ゲーム・動画・音楽等、インディーズの作品全般もエントリーできます。

 

SFする思考: 荒巻義雄評論集成
荒巻義雄 (著)

「術の小説論」からマニエリスム論へ、50余年の軌跡

世界を思辨するツールとしてのSF。
SFを書くこと、考えることで文明批評をしてきた荒巻義雄は いかにして小説を書き、詩作したのか。 評論するSF作家の思考の全貌
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解説「読むことのドラマ:メタSF的実験とマニエリスム的遊戯」
巽孝之(SF批評家、慶應義塾大学名誉教授)

残月記
小田 雅久仁 (著)

近未来の日本、悪名高き独裁政治下。
世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。
「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。
足を踏み入れたら最後、イメージの渦に?み込まれ、もう現実には戻れない――。
最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!

 
【関連】
第43回日本SF大賞・受賞作決定! – SFWJ:日本SF大賞

 


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