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小手鞠るいさんが母のことを初めてつづった泣き笑いエッセイ『お母ちゃんの鬼退治』が刊行

小手鞠るいさん著『お母ちゃんの鬼退治』(絵:川瀧喜正さん)

小手鞠るいさん著『お母ちゃんの鬼退治』(絵:川瀧喜正さん)

小手鞠るいさんが、中年になって視力を失ったお母さんのことをつづったエッセイ『お母ちゃんの鬼退治』(絵:川瀧喜正さん)が偕成社より刊行されました。

なお、お母さんをモデルにしたフィクションである絵本『うちのおかあちゃん』(絵:こしだミカさん)も7月に刊行されています。

 

小手鞠るいさんのお母さんは「目が悪い、耳が悪い、口が悪い」まさに日本のヘレン・ケラー

今までの著作の中では、「母親」を登場させることが少なく、ご自身のお母さんについても書いてこなかったという小手鞠るいさん。本作で、初めてお母さんのことをつづりました。そのきっかけは、刊行時の著者インタビューで語られています。

★母のことを初めてつづった泣き笑いエッセイ『お母ちゃんの鬼退治』小手鞠るいさんインタビュー:https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/ath/ath220921/

 
もともと視力が悪かったお母さんは、年月とともに少しずつ視力を失い、ある日とうとう視界が真っ白になってしまいます。さらにその後、目の薬の副作用で、耳まで遠くなります。

「目が悪い、耳が悪い、口が悪い。それはまさに日本のヘレン・ケラーだわ」と小手鞠さんが笑いながらいうと、「おまえ、年老いた、目の悪い母親に向かって、ようそんなことが言えるな。薄情な娘じゃ。ばちが当たるで」と負けじと言い返すお母さんは、「かわいそう」と相手に思わせないほど、口が悪く、頭の回転も早くて、小手鞠さんはいつも言い負かされるといいます。

 
ほかにも小手鞠さんとお母さんのやり合いがふんだんにつまったエッセイになりました。また、楽しく読めるのはもちろん、いろいろなことにチャレンジし続けているお母さんの生き方に、生きるヒントを見つけることができるでしょう(なんとお母さんは、視力を失いつつある中、三味線と民謡を習いはじめ、今ではたくさんの弟子を抱えるお師匠さんなのです!)。

 
また、絵本『うちのおかあちゃん』では、ある日全く目が見えなくなったときのようすとともに、意地も悪いが、ガッツがあって優しいお母さんのその豪胆っぷりが、ダイナミックなイラストで描かれています。

 

挿絵に使われているのは、お父さんが描かれた漫画!

表紙に散りばめられたイラストと、挿絵は、小手鞠さんのお父さんが描きました。お父さんは、漫画を描くのが趣味で、当時描きためていたスケッチブック6冊の中から、本の挿絵を選んだということです。

小手鞠さんが住むニューヨークに両親そろって遊びに来たときは、美術館を訪れたときのようすや、食べたものを細かに描いたりした、楽しい旅行記もしたためました。

はじめてのニューヨークに驚き、楽しんでいるようすが、ポカンと開けた口からもいきいきと伝わってきます。

 

著者からのメッセージ&インタビュー公開中!

【小手鞠るいさん メッセージ】

《日本に帰国し、久々に実家に戻ったとき、すでにほとんど視力を失っている母から、手紙のようなものをもらったことがあります。見えない目で書かれた文字は、ゆがんで、ばらばらになって、前後左右に揺れていました。小学生みたいなその文字を目にしたとき、私の胸の中にあたたかい感情が流れ込んできました。ああ、これが「愛」というものなのかと、60代になって初めて「母の愛」を知ったように思います。(中略)美人で、優しくて、がんばり屋さん。顔に似合わず、毒舌家。そんなお母ちゃんについて、あますところなく書いてみました。お母ちゃん、大好き!(口ではとても言えないから、ここに書いておくね)イラストを描いてくれたお父ちゃんにも感謝します。》

 
また、Kaiseiwebにて、刊行時のインタビューを公開中です。なぜお母さんのことを書こうと思ったのか、お父さんとお母さんが原稿を読んだ感想など、小手鞠さんにたっぷりと伺っています。

★母のことを初めてつづった泣き笑いエッセイ『お母ちゃんの鬼退治』小手鞠るいさんインタビュー:https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/ath/ath220921/

 

著者プロフィール

 
■作:小手鞠るい(こでまり・るい)さん

1956年生まれ、岡山県出身。同志社大学卒業。小説家。詩とメルヘン賞、海燕新人文学賞、島清恋愛文学賞、ボローニャ国際児童図書賞などを受賞。2019年には『ある晴れた夏の朝』で子どもの本研究会第3回作品賞、小学館児童出版文化賞を受賞。

主な作品に『アップルソング』『きみの声を聞かせて』『放課後の文章教室』『庭』『森の歌が聞こえる』『ぶどう畑で見る夢は~こころみ学園の子どもたち』『初恋まねき猫』『午前3時に電話して』など多数。

1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。

 
■絵:川瀧喜正(かわたき・よしまさ)さん

小手鞠るいさんの父。

 

お母ちゃんの鬼退治
小手鞠るい (著), 川瀧喜正 (イラスト)

まりえのお母さんは目が見えない。
だんだんと見えなくなってきて、 まりえが小学生の時に完全に失明。2022年7月刊行の絵本『うちのおかあちゃん』は、 作者がお母さんをモデルにして、その一時期を描いたフィクションである。
本書はもっと具体的に、リアルにお母さんについてつづられたエッセイ集。
本が好きで好きで作家になりたかったお母さんと、似たような道を歩む作者は、 人生の節目節目でぶつかりあうこともしばしばだった。戦争にも学歴偏重の社会にも、 障害にも、差別偏見にも負けずチャレンジし続けた「お母ちゃん」は、 世間や自分のなかの「?退治」を成し遂げた。
小手鞠さんいわく「60代になって初めて『母の愛』を知ったように思います。 美人で、優しくて、がんばり屋さん。顔に似合わず、毒舌家。 そんなお母ちゃんについて、あますところなく書いてみました。」
若い人たちにとって、生き方の一つの指針となるような作品。

うちのおかあちゃん
小手鞠るい (著), こしだミカ (イラスト)

おかあちゃんは、ほとんど目がみえない。
三味線をひくのがうまい。口が悪くて、えばっていて、たくましい。
ひとりでどこへでも出かけていく。
みんなのことが、ぼ?っとゆうれいみたいにしか見えていない、
と言っていたおかあちゃんの目が、ある日とうとう、何も見えなくなった。
その日だけ、おかあちゃんが泣いた。
でもおとうちゃんの一言
「目も悪くて、口も悪くて、意地も悪い。それはヘレン・ケラーじゃな」で、
お母ちゃんは笑顔に。
「ようし、こうなったら、日本一のヘレン・ケラーになっちゃるで」

作者の小手鞠るいさんが目の見えないお母さんに心を寄せて描いたフィクション。
全て岡山弁でつづる。(小手鞠さんは岡山出身)
エピソードは、実際あったことばかりなので、リアリティがある。
障害のある人が身近にいたら、障害を特別と思わず普通のこととして受け入れる、
そんな世界を子どもたちに知ってもらいたくてと書かれた作品。
ダイナミックなこしだミカさんのイラストがストーリーを盛り上げている。

 
【関連】
母のことを初めてつづった泣き笑いエッセイ『お母ちゃんの鬼退治』小手鞠るいさんインタビュー | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン

 


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