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【第21回『このミステリーがすごい!』大賞】小西マサテルさん「物語は紫煙の彼方に」が大賞を受賞 文庫グランプリに美原さつきさんとくわがきあゆさん

宝島社は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的とする公募新人賞「第21回『このミステリーがすごい!』大賞」の受賞作を発表しました。

 

第21回『このミステリーがすごい!』大賞が決定!

応募総数447作品の中から1次選考(19作品通過)、2次選考(8作品通過)を経て、第21回『このミステリーがすごい!』大賞は、小西マサテル(こにし・まさてる)さんの「物語は紫煙(しえん)の彼方に」が受賞しました。

また文庫グランプリには、美原さつき(みはら・さつき)さんの「イックンジュッキの森」と、くわがきあゆさんの「レモンと手」が選ばれました。

 
大賞賞金は1,200万円、文庫グランプリ賞金は200万円(均等に分配)で、同3作品は2023年1月から順次、書籍化される予定です。
※刊行時、タイトルが変わる場合があります

 

大賞受賞作品「物語は紫煙の彼方に」について

<あらすじ>

「認知症の老人」は「名探偵」たりうるのか?
孫娘の持ち込むさまざまな「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは

楓(かえで)は、小学校教師をしている27歳の女性。彼女の祖父は素晴らしく頭の切れる人物だったが、71歳となった現在、認知症を患い介護を受けていた。「レビー小体型認知症」だったため、幼児退行するようなことはなかったものの、「青い虎が見える」といった幻視や記憶障害などの症状が現れていた。しかし、楓がある時ちょっとした謎を持ち込むと、祖父はそれに対する鮮やかな解答を語ってくれたのだ。かつての知能と、レビー小体型認知症特有の症状とによって。それ以降、楓は身辺で何か事件が起こると、祖父のところへ相談に行くのだった。やがて、彼女の人生に関わる重大な事件が・・・・・・

 
【著者プロフィール】

小西マサテル(こにし・まさてる)さんは、香川県高松市出身。東京都在住。明治大学在学中より放送作家として活躍。2022年現在、ラジオ番組「ナインティナインのオールナイトニッポン」「徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー」「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM」「明石家さんま オールナイトニッポンお願い!リクエスト」や単独ライブ「南原清隆のつれづれ発表会」などのメイン構成を担当。趣味・特技は落語。

 
〔受賞コメント〕

ミステリを書くというのは少年期からの夢だったのですが、本作を執筆する直接的なきっかけは、長らくレビー小体型認知症を患っていた父の存在でした。5年以上に及び妻と共に介護を続けるうち、世間にこの認知症への誤解があまねく広がっていることに気がつきました。この病気への理解を深めたい、せめて興味を持ってもらいたい──そう強く思ったうえでのアプローチのかたちが、私にとってはミステリでした。自分の場合は亡父への想いをこの作品に仮託していて、どうしてもこの作品でデビューしたいという強いこだわりがありました。それだけに今回の大賞受賞は、望外の喜びではありますが、本懐を遂げたという気持ちもあります。本作の主人公、楓と同じく、自分も一人っ子です。でも幼い頃から、そばには常にミステリという“兄弟”がいました。今後もさまざまな兄弟たちを自分の手で生み出すことができれば、などと思っています。

 
《選評》

◎レビー小体型認知症を患う老人が安楽椅子探偵をつとめる“日常の謎”系の本格ミステリー連作で、ラストがきれいに決まっている。(大森望さん/翻訳家・書評家)
◎マニア心をそそられる趣向が凝らされており、古典作品へのオマージュも好印象。ディーヴァーのリンカーン・ライムのヴァリエーションのようだ。(香山二三郎さん/コラムニスト)
◎キャラクターが非常に魅力的。彼らの会話がとっても楽しい! 全体を通しての空気感、安定感が秀逸でした。魅力的な物語を書き続けていける方だと確信しました。(瀧井朝世さん/ライター)

 

文庫グランプリ受賞作品について

 
■美原さつきさん「イックンジュッキの森」

<あらすじ>

舞台はアフリカのコンゴ!
ボノボ調査隊を幻の生命体が襲う、企業と研究者と野性の論理がバトルする刺激作

大学院で霊長類学を研究する父堂季華。彼女が属する研究室に、米国企業からコンゴでの道路建設に関するアセスメントへの協力依頼が舞い込んだ。ボノボへの影響を見極めようというのだ。指導教官や先輩と共に現地に飛んだ季華は、米国企業が率いるボノボ調査隊に加わった。彼等は、ボノボの生息地を目指してコンゴの大地を進む……。

 
【著者プロフィール】

美原さつき(みはら・さつき)さんは、大阪府大阪市出身。東京都在住。1986年生まれ。滋賀県立大学・滋賀県立大学大学院では環境動態学を専攻。動物・魚類・昆虫グループの研究室に所属。農業害虫の基礎生態解明の一環でインドネシアの研究所に滞在経験あり。現在は衛生管理会社に勤務。趣味は昆虫採集。ブラックバスやブルーギル、モンクロギンシャチホコ、クマゼミなどさまざまな生き物を食した経験もあり。

 
〔受賞コメント〕

大学時代のノートを整理していたとき、文化人類学の講義のメモを見つけて、霊長類を題材にした作品を書きたいという強い衝動に駆られました。哺乳類の中では霊長類が最も好きなので、サルをテーマにして書き上げた本作への思い入れは強いです。未知の霊長類との出会いを想い描きながら、キャラクターたちと共に想像のジャンルの中を旅する時間はとても楽しかったです。

 
《選評》

◎こりゃもうマイクル・クライトン直系の秘境冒険小説ということで、一気に読まされた。(香山二三郎さん/コラムニスト)

 
■くわがきあゆさん「レモンと手」

<あらすじ>

肉親を殺された女が真実を追う、巧みなプロットの異色スリラー

保険外交員の妹が殺された。生前、彼女が保険金殺人を行っていたという報道に、姉の「私」は驚愕する。妹がそんなことをするはずがない。私たち姉妹はかつて父親を少年犯に殺されたつらい過去を共有していた。私は妹の潔白を証明するため、独自に調査を始める。しかし、妹にとって不利な証拠ばかりが見つかるうえに、出所した元少年犯が行方をくらましたという情報が入る。妹は何を思い、誰に殺されたのか。混乱する私の身のまわりで、次々と不審な出来事が起こり始める。

 
【著者プロフィール】

くわがき あゆさんは、京都府京都市出身・在住。1987年生まれ。京都府立大学文学部文学科国文学中国文学専攻卒業。現在は高校で国語教師として勤務。趣味はヨーロッパ旅行。

 
〔受賞コメント〕

応募はしていたものの、実際に文庫グランプリをいただけるとは思わず、びっくりしています。連絡をくださった編集者の方の様子からして、実は『この水』とか『粉ミス』とかいう別の賞だった、ということもなさそうです。この幸運なチャンスを生かして、今後いっそうの技術力の向上に努めたいと思います。

 
《選評》

◎後半の、やりすぎじゃないかというくらいの二転三転四転五転の展開にねじ伏せられました。登場人物それぞれの、ちょっと歪んだキャラクターも面白かった。(瀧井朝世さん/ライター)
 

『このミステリーがすごい!』大賞について

『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的に、2002年に創設された新人賞です。

 
これまで、第153回直木賞を受賞した東山彰良さんや、累計1070万部突破の「チーム・バチスタの栄光」シリーズの海堂尊さん、音楽ミステリー『さよならドビュッシー』や社会派ミステリー『護られなかった者たちへ』で知られる中山七里さんなどの作家を輩出してきました。

また、志駕晃さんの『スマホを落としただけなのに』シリーズなど、映像化作品も多数世に送り出しています。さらに、受賞には及ばなかったものの、将来性を感じる作品を「隠し玉」として書籍化。岡崎琢磨さんの「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズをはじめ、「隠し玉」からもベストセラー作品が多く生まれています。

 
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『このミステリーがすごい!』大賞

 


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