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「神様のカルテ」著者・夏川草介さんがコロナ医療現場の〝リアル〟を綴る『レッドゾーン』が刊行

夏川草介さん著『レッドゾーン』

夏川草介さん著『レッドゾーン』

『神様のカルテ』で知られる、作家で現役医師の夏川草介さん著『レッドゾーン』が小学館より刊行されました。

 

お父ちゃんはお医者さんなのに、コロナの人、助けてあげなくていいの?

本書は、報道ステーション、朝日新聞、NHKなど80以上のメディアに取り上げられ大反響を呼んだ『臨床の砦』の続編となります。

現役医師である著者の夏川草介さんが、「かつてより少しばかり冷静になった目で」未知のウイルスが医療現場にもたらしたものを再思します。

 
<著者コメント>

「昨年、私はコロナ診療をとりあげた一冊の小説を上梓した。第三波を題材とした『臨床の砦』という名のそれは、圧倒的な不安や苛立ちの中で、ともすればコロナ診療から逃げ出したくなる自分を、なんとか踏みとどまらせ、精神の安定を保つための、いわば強壮剤であった。ゆえに完成した作品は、悲鳴のような様相を帯びている。各所で発言したとおり、私は『臨床の砦』に一言も嘘は書いていない。すべて自分自身が経験した事実に基づいて書き上げた。けれどもどんな事実も、伝え方によって受け手の印象はいくらでも変わる。無我夢中で書き上げた『臨床の砦』に、伝え方を考慮する余裕があったかと問われれば、いささか心もとない。

本書『レッドゾーン』は、そんな思いの中で、この長い戦いの始まりとなったコロナ第一波に、改めて目を向けた作品である」

 
★著者による本書『レッドゾーン』についての紹介はこちら:https://shosetsu-maru.com/yomimono/essay/redzone

 

現役医師である著者が、2年半前クルーズ船の患者をいち早く受け入れてから現在まで、コロナの最前線に立ち続ける信濃山病院の〝勇気〟と〝葛藤〟を描く!

(本書「プロローグ」より)

≪敷島の勤務する『信濃山病院』は、病床数二百床弱の、長野県の片田舎にある病院だ。その裏口は、本来、患者の車が入ってくる場所ではなく、職員たちの通用口に過ぎないのだが、二年前に発熱外来が設置されて以来、当たり前のように来院者の車が並ぶようになっている。
車列の間を、ガウンとN95マスクを身に着けた看護師が、iPadを抱えて往来しているのも、いまでは見慣れた景色である。
「今日はゴールデンウイークでしたよね」
敷島が、そんなことを言いながら、今オンライン診療を終えたばかりの患者のカルテを差し出した相手は、感染担当医の四藤である。
電子カルテに向き合っていた四藤が肩をすくめて答えた。
「そうですよ。夢と希望に溢れたゴールデンウイークです。しかも三年ぶりに緊急事態宣言も蔓延防止措置もない、夢いっぱいのゴールデンウイーク」
「おまけにラジオだと、第六波は収束傾向だと言っていましたが……」
敷島がもう一度軽くため息をつく。
朝の外来開始からすでに二時間が経過し、十人以上が診察を終えているはずだが、一向に途切れる様子もない。
「先週の日曜日は、この時間に三十人は来ていましたから、これでも減っている方だと思いますよ。六波のピークのときなんて、一日で百人以上来て、三十人くらい陽性だった日もあったじゃないですか」≫

 
信濃山病院の院長が横浜港に停泊中のクルーズ船内で増加する新型コロナ患者の受け入れを決めたことで、院内外が紛糾する第一話「レッドゾーン」から第二話「パンデミック」、第三話「ロックダウン」まで、息苦しいくらい濃厚なエピソードが続きます。

これはコロナ禍のドキュメンタリーであり世の中へのメッセージです。専門じゃないとか役割分担だとか関係なく、「病める人がいるから診る」というスタンスを全うする医師の〝誠実さ〟に一条の光が見える希望の書です。

 
★本書『レッドゾーン』に関する書評:https://shosetsu-maru.com/review/oshiteke/23

 

著者プロフィール

著者の夏川草介(なつかわ・そうすけ)さんは、1978年生まれ、大阪府出身。信州大学医学部卒業。医学博士。認定内科医。消化器病専門医。消化器内視鏡専門医。肝臓専門医。長野県にて、地域医療に従事。

2009年「神様のカルテ」で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作で10年本屋大賞第二位。「神様のカルテ」シリーズは三度映像化された。他の著作に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』などがある。

 

レッドゾーン
夏川 草介 (著)

病む人がいるなら我々は断るべきではない。

【第一話】レッドゾーン
日進義信は長野県信濃山病院に勤務する内科医(肝臓専門医)だ。令和二年二月、院長の南郷は横浜港に停泊中のクルーズ船内で増加する新型コロナ患者の受け入れを決めた。呼吸器内科医も感染症医もいない地域病院に衝撃が走る。日進の妻・真智子は、夫がコロナ感染症の患者を診療することに強い拒否感を示していた。

【第二話】パンデミック
千歳一郎は五十二歳の外科医である。令和二年三月に入り、コロナの感染者は長野県でも急増していた。三月十四日、千歳は限界寸前の日進に変わり、スペイン帰りの32歳女性コロナ確定患者を診察し、涙を流される。翌日、コロナ診療チームに千歳が合流した。

【第三話】ロックダウン
敷島寛治は四十二歳の消化器内科医である。コロナ診療チームに加わって二月半が過ぎた。四月上旬、押し寄せる患者に対応し、信濃山病院が総力戦に突入するなか、保健所は感染症病床を六床から十六床に増床するよう要請する。医師たちはすべての責務を信濃山病院だけに負わせようとする要請に紛糾するが、「病める人がいるのなら、我々は断るべきでない」という三笠内科部長の発言により、増床を受け入れる。

【編集担当からのおすすめ情報】
報道ステーション、朝日新聞、NHKなど80以上のメディアに取り上げられ大反響を呼んだ『臨床の砦』続編!
コロナ禍の最前線に立つ現役医師(作家)が自らの経験をもとに綴った、勇気と希望の物語。

 
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