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小説講座の名物講師が書いた”受賞への指南書”!佐藤誠一郎さん『あなたの小説にはたくらみがない』が刊行

佐藤誠一郎さん著『あなたの小説にはたくらみがない 超実践的創作講座』

佐藤誠一郎さん著『あなたの小説にはたくらみがない 超実践的創作講座』

宮部みゆきさんや髙村薫さんの担当編集者として伴走する傍ら、「日本推理サスペンス大賞」をはじめ5つの文学新人賞を立ち上げた佐藤誠一郎さんが、小説の書き方の基礎から応用までを分かりやすく丁寧に教える『あなたの小説にはたくらみがない 超実践的創作講座』が新潮社より刊行されました。

 

小説の新人賞に「傾向と対策」は通用しない

文芸編集者として数多くの作品を担当した後、「新潮講座」の名物講師として小説を書きたい受講生を数多く指導してきた佐藤誠一郎さん。長年、様々な生徒と話す中で、作品を書き出す前にどこの新人賞に応募するかを決め、その賞を獲るための「傾向と対策」から始める人が多いことに気が付きました。

 
しかし、この方法は残念ながらあまり意味がないと佐藤さんは言います。試験や小論文ならいざ知らず、小説の新人賞では物語を評価する価値基準それ自体が刻々と変化するからです。

 
さらに言うと、ある新人賞で2年続けて多重人格ものが最終候補になった場合、新人賞がカバーする領域が偏るのを避けるため、次の年には多重人格に関する作品を排除するベクトルが働く方が自然なのです。佐藤さんは「書きたいものを書くのが一番。完成した時点で、カバーするジャンルや締切、制限枚数といった条件に適う新人賞を探すのがいい」と語ります。

 
では書き始めるにあたって、具体的にどうすれば新人賞を取れるような作品が書けるのでしょうか?

本書では古今東西の名作を紐解きながら、ストーリー構成やキャラ設定、テーマの捉え方、時系列の動かし方など、小説の基礎から応用まで丁寧に教えます。小説家デビューを目指す人の指南書としてはもちろんですが、そうでない人も物語制作の裏側を楽しめる内容となっています。

 
なお、佐藤誠一郎さんが講師を務める「新潮社 本の学校」が9月20日にプレオープンしており、講座の副読本としてもぴったりの一冊です。

 
【書籍の内容】

小説の新人賞には「傾向と対策」が通用しない――小説を評価する物差しは、時代とともに常に変化しているからだ。では、入賞する作品としない作品の違いはどこにあるのか。古今東西の様々な名作から作家たちの「たくらみ」を暴き、小説の基礎からテクニックまで徹底解説。編集者として数多くの著名作家を担当する傍ら、5つの新人賞を立ち上げた著者だからこそ語れる、小説家には書けない小説の書き方。

 

本書の構成

第一章 小説指南書には要注意
小説を書く理由を今いちど問い直す季節/作家の数だけ「書き方」はある/物語の女王かく語りき/アーティストかアルチザンか/「正解」に至る家元制度の誘惑/作家による「書き方本」は究極の自著解説/小説指南書の最適格者とは/コラムツカミのある冒頭(1)

第二章 小説の物差しはどんどん変化している
傾向と対策が機能しない!/変化に次ぐ変化――エンタメ小説市場の四十年/ブームに惑わされっぱなしの編集者/信長や龍馬人気も、源氏物語でさえも/「キャラ立ち」狂騒曲/小説を評価する際の五大要素とは/ガイジン曰く「日本の文学は面白くない」/キャラ立ち最優先の時代の次には……/小説の本卦還り/コラムべからずの部屋(1)

第三章 「起承転結」はウソかも知れない
「承」って何?/中国起源で文科省公認なのだが……/「承」の行方/三幕構成はソナタ形式/クライマックスが三度なら、ターニングポイントは二度/誰も「統一理論」を示そうとしない/構成がしっかり頭に入ったとしても……/意外性はなぜ必要なのか/話の順序を「ペタペタ」で考える/時系列と「ペタペタ」/スタンダードはあくまでスタンダード/コラムツカミのある冒頭(2)

第四章 誰の視点で書くべきなのか
小説コンクールは一人称だらけ/いちど「自分」から離れてみよう/日本のノンフィクションの特異性/一人称をエンタメ界の職人たちが使うとき/六つのパターン/それぞれに特性あり/視点人物が多すぎる?/複合型は名作だらけ/三人称ノンフィクションと語り部を立てたフィクション/主人公と視点人物が同じとは限らない/二人称という離れ業/コラムべからずの部屋(2)

第五章 キャラクター狂騒曲よ、さようなら
「女が描けてない」と大家言い/根拠なきモテ系小説/バカが描けてない/ 最初のキャラ設定で通すのは不自然の極み/人間関係は必ず変化する/脇役はたやすく主人公は難しい/矛盾のない人間はいない/多重人格でもないのに別人格/登場人物の整理統合を/走りながら人物紹介を/コラムツカミのある冒頭(3)

第六章 安易な同時代性は無用
現代語訳源氏物語、第四次ブーム到来か/コンテンポラリーな源氏物語/古川日出男の場合/藤沢周平かく語りき/同時代性なのか普遍性なのか/小説もメディアの一部である/猪瀬直樹『ペルソナ』のラストに注目!/『それから』の代助が最後に見たもの/コラムべからずの部屋(3)

第七章 テーマを説くな、テーマを可視化せよ
テーマになり得るものと、なり得ないもの/公序良俗もテーマにならない/七つの大罪/ピンとくる罪、こない罪/「こうであったはず」の自分になる/小説のテーマに多い「三つの大罪」/教皇フランシスコが指摘するコロナ禍時代の「怠惰」/第一の大罪/そして動機、さらにテーマへ/動機は時代を映すのみに非ず/『火車』に見る動機からテーマへの進化論/時代小説における動機は、現代小説より素朴/作者がテーマを語るのは是か非か/主人公がテーマを語るのは是か非か/「可視化」されたテーマだけが読者を揺さぶる/コラムツカミのある冒頭(4)

第八章 ロジックで押し切らないという選択
コンバート/裏切り者呼ばわりされた直木賞作家/ミステリーを踏み台にする度胸を持て/ミレニアムで別の作家になった!/トラウマを背負った人々の物語/ロジックの輪を閉じては成立しないジャンルとは?/恋愛小説を金太郎アメにしないために/不可能性が高みに導く/怖すぎた後楽園のアトラクション/構成に問題あり/予感が何より大事/正体が知れれば怖くない/『抱擁』はただのパスティーシュではない/安易なコンバートは絶対禁止/コラムべからずの部屋(4)

第九章 プロの手捌きをすぐ脇で盗み見る
隆慶一郎が最後に会いたがった男/有名人がほとんど登場しないネタ/先行作を超えなければ書く意味がない/『カラマーゾフの兄弟』の大審問官/視点人物の選択はテーマとつながっている/都を知る者の視界/白熱する議論を叙述するための視角/その場に登場しない三成の「視点」視点人物と文体、ドキュメントと文体/読者をどうツカむか/現在進行形で描くタームを短くする/時系列を動かす/同時代性は「ほの見え」程度がベスト/複数のファクターが連動しつつ決まってゆく/コラムべからずの部屋(5)

最終章 小説の海に北極星はあるのか
小説に「たくらみ」を呼び戻せ/「小説にしかできないこと」を作家は求めすぎる/純粋になることの危険/純文学が発想しエンタメが完成させる/型を壊すためには

 

著者プロフィール

著者の佐藤誠一郎(さとう・せいいちろう)さんは、1955年生まれ。東京大学文学部卒業。編集者。

「新潮ミステリー倶楽部」他3つの叢書を手がけるとともに、「日本推理サスペンス大賞」をはじめ5つの文学新人賞を立ち上げた。

 

 


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