詩集『永遠の詩2 茨木のり子』が12刷! 拠り所のない時代に「こころの支え」となる、生きるための言葉
小学館より2009年に刊行された『永遠の詩2 茨木のり子』が詩集では異例の12刷に到達しました。
※永遠の詩シリーズ(全8巻)は、読者に生きる勇気を与える八人の詩人を選び、傑作詩40~50編をセレクト、各詩編に詩人・童話作家が解説を書き下ろし。巻末には作家・評論家の書き下ろしエッセイとビジュアル年譜を収録。
「今だから響く」「元気が出る」「迷いがなくなる」「色あせない感性」・・・茨木のり子さんの詩が時を超えて愛される理由
戦後を代表する女性詩人・茨木のり子さんの詩集が今、売れています。没後16年経っても尚、人気を博している理由はなんなのでしょうか。
茨木のり子さんは、1926年大阪に生まれました。第二次世界大戦敗戦の年には19歳。若い女性の視点から、戦中・戦後の実相をすくい取った。2006年に79歳で亡くなるまで、多数の叙情詩を創作しました。
本書で各詩の鑑賞解説をしている高橋順子さんは、茨木さんのことを「生きかたについて示唆してくれる数少ない女性詩人」 と評します。
≪荒廃した国土の中で誰もが萎縮していたときに、自分と他人を勇気づける詩を書いた。名詩「根府川の海」「わたしが一番きれいだったとき」などは、時代を超えて人々の感銘を呼び、心を揺さぶる。≫
(本書「時代を超えて、りんと」より)
茨木のり子さんの詩には弱った心を勇気づける力があります。混迷する社会で格差や分断が進み、己の環境を呪いたくなることもありますが、茨木さんからの〝檄〟が、みずからの弱さや甘えを浮き彫りにし、凝り固まったマインドをリセットするきっかけを与えてくれます。
ここに一部抜粋する「自分の感受性くらい」は、人を〝鼓舞する〟茨木さんの象徴ともいえる詩です。
≪初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ≫
(本書「自分の感受性くらい」より抜粋)
弱さを乗り越えるために、自分自身を奮い立たせているかのような彼女の言葉は、まっすぐで力強く、それでいてあたたかい。先行き不透明な時代でも、自分らしく生きるには何が必要かを教えてくれます。
ヒューマニズム溢れる名詩から、亡夫を想う挽歌までの36篇を、鑑賞解説付きで収録。
「嘘がつけない人だった。詩においても、生活においても」――谷川俊太郎さん(詩人)
「言葉が滅んだ時代に、なお発光し続ける言葉がここにある」――後藤正治さん(ノンフィクション作家)
「よく生きたい――心底そう願うとき、このひとの詩が背中を押す」――梯久美子さん(ノンフィクション作家)
本書の目次
根府川の海
対話
方言辞典
見えない配達夫
ぎらりと光るダイヤのような日
六月
わたしが一番きれいだったとき
小さな娘が思ったこと
怒るときと許すとき
女の子のマーチ
汲む
一人は賑やか
みずうみ
握手
兄弟
吹抜保
自分の感受性くらい
知命
木の実
幾千年
落ちこぼれ
この失敗にもかかわらず
花ゲリラ
寸志
隣国語の森
答
さゆ
食卓に珈琲の匂い流れ
時代おくれ
倚りかからず
ある一行
夢
恋唄
急がなくては
(存在)
歳月
高橋順子「時代を超えて、りんと」
天野祐吉「茨木さんの素顔」
主著・参考文献
茨木のり子年譜
著者プロフィール
茨木のり子(いばらぎ・のりこ)さん(1926[大正15]~2006[平成18])は、敗戦後、結婚前後から詩を書き始め、川崎洋さんとともに詩の同人誌「櫂」を創刊。ヒューマニズムと批評精神溢れる詩で多くの読者の心を鼓舞した。
戦後を代表する女性詩人にして、エッセイスト、童話作家でもあった。
永遠の詩 (全8巻)2 茨木のり子 茨木 のり子 (著) 弱ったこころを勇気づけ、希望に導いてくれた詩人、茨木のり子。そこにはいつも生きるための言葉があった。ヒューマニズム溢れる名詩から、亡夫を想う挽歌まで、鑑賞解説付きで収録。 |
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