ちばてつやさん引揚体験の漫画など“戦争の体験を伝える絵”を展示!企画展「こどもと大人におくる 戦争のおはなし」を開催

企画展「こどもと大人におくる 戦争のおはなし」を開催
平和祈念展示資料館(東京・新宿)は、5人の戦争体験者が、帰国後、戦争を知らない子どもや大人にコトバでは伝えにくい戦争を絵にした約40点の“戦争の体験を伝える絵”を紹介する企画展「こどもと大人におくる 戦争のおはなし」を開催します。
期間は、映像資料を含む32点を展示する前期が2022年2月1日(火)~3月13日(日)まで。8点を展示替えする後期が3月15日(火)~4月24日(日)まで。期間中の休館日は毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)と2月6日(日)。入館料は無料です。
漫画家・ちばてつやさんが描いた引揚体験の漫画など、約40点の“戦争の体験を伝える絵”を展示
第二次世界大戦における兵士、戦後強制抑留(いわゆるシベリア抑留)、海外からの引揚げに関する資料を展示する平和祈念展示資料館(東京都新宿区西新宿)は、2021年度第3回企画展「こどもと大人におくる 戦争のおはなし」を開催します。
本企画展では、兵士・戦後強制抑留者・海外からの引揚者が、戦争を知らないこどもと大人におくる“戦争の体験を伝える絵” を展示します。
戦争の絵といっても、絵本、1コマ漫画、かるた、紙しばいなど、表現の方法はさまざまです。けれども、体験者たちがコトバだけでは伝えにくい戦争をわかりやすい絵にしたことは共通しています。
こうした作品に貫かれているのは、戦争のむごさを知ってほしい、自分と同じ戦争のつらさをこどもたちに味わってほしくないという想いです。このような想いの込められた作品を、「兵士のおはなし」、「抑留者のおはなし」、「引揚者のおはなし」の順に展示します。

ちばてつやさん「トモちゃんのおへそ」

岩田ツジ江さん「引揚げ船の中で幼児二人を置き去りにしたと語る母親」
「兵士のおはなし」では、漫画家・斎藤邦雄さん(1920~2013年)の軍隊生活や満州での戦争体験を描いた漫画を展示します。
「抑留者のおはなし」では、敗戦後にシベリアで抑留生活を送った斎藤さんと上河邉長さん(1925~2006年)の作品を展示します。
「引揚者のおはなし」では、漫画家・ちばてつやさん(1939年~)が自身の引揚体験を描いた漫画や、収容所で母親を亡くした3歳の男の子の物語を描いた絵本に、想いを寄せて描いた「トモちゃんのおへそ」など3点を展示します。
また、ちばさんの漫画家人生の原点となった引揚体験を描いた自伝『屋根うらの絵本かき』(新日本出版社)の漫画や挿絵など計16ページを特大パネルで紹介します。
併せて、岩田ツジ江さん(1926~2009年)が引揚中に目の当たりにした「引揚げ船の中で幼児二人を置き去りにしたと語る母親」も展示します。
岩田さんは、1989年の広島テレビで、次のコトバを残しています。
「戦争とは、生きる人たちが一番困った、最もかなしい命取りだった。それは、コトバだけでは伝わらない。でも、絵にかいて語れば分かってくれた。そんな絵とコトバを、戦争を知らない子どもたちのために、どうしても残しておきたくなった。二度とあってはならないから…。」
本企画展は、このような想いに着目して、戦争を知らないこどもと大人におくる“戦争の体験を伝える絵”を展示します。
主催者コメント「企画展のねらい」
本企画展は、一つひとつの絵に説明文を添えていません。
その理由は、コトバ(作品の説明文)を読むのではなく、何よりも絵そのものをじっくりと見てほしい。そして、絵が物語る“戦争のおはなし”をイメージしてほしい、と考えたからです。
作品を見ていただいた皆さんに、「これはなんだろう?」「こうじゃないか?」などと“戦争のおはなし”をしていただければ、うれしい限りです。
あわせて、作品をもっと知りたいという方や、お子さんに絵を分かりやすく伝えてあげたいという方に向けて、絵の説明文をまとめた小冊子を企画展の最後に用意しました。説明文なしで作品を見ていただいた後に、この小冊子を手にゆっくりと作品を楽しむのもおすすめです。
お客様一人ひとりが、絵を見て想像していくストーリー。そして、体験者の証言に基づいて作成された小冊子から読み解くストーリー。この両方が味わえる企画展をゆっくり楽しみながら、今のわたしと戦争体験者が向き合いながら、共に織りなす“戦争のおはなし”を心に描いてほしい、というのが企画展のねらいです。
絵が物語る“戦争のおはなし”。あなたも心にえがいてみませんか。
企画展「こどもと大人におくる 戦争のおはなし」開催概要
■場所:平和祈念展示資料館 企画展示コーナー
〔所在地〕東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル33階
〔アクセス〕都営大江戸線「都庁前」駅 A6出口から徒歩 約1分/東京メトロ丸の内線「西新宿」駅から徒歩 約5分/JR、小田急線、京王線「新宿」駅西口から徒歩 約10分
■期間
◎前期:2022(令和4)年2月1日(火)~3月13日(日)
◎後期:2022(令和4)年3月15日(火)~4月24日(日)
■時間:9:30~17:30(最終入館17:00)
■休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)、2月6日(日)※新宿住友ビル全館休館日
■入館料:無料
■展示点数
◎前期:32点(通期:23点、通期設置映像:1点、前期のみ:8点)
◎後期:32点(通期:23点、通期設置映像:1点、後期のみ:8点)
※前期・後期を通じた総展示点数:40点
■映像協力:広島テレビ放送
■主催:平和祈念展示資料館(https://www.heiwakinen.go.jp)
《展示構成》
戦争体験者5人が描いた“戦争の体験を伝える絵”を「兵士のおはなし」「抑留者のおはなし」「引揚者のおはなし」の順に展示します。
※用語の解説
◎兵士とは:第二次世界大戦において、国のために家族を残し、危険な戦地に向かい、命をかけて激務に従事し、大変な労苦を体験された方々です。
◎戦後強制抑留者とは:戦争が終結したにもかかわらず、シベリアを始めとする旧ソ連やモンゴルの酷寒の地において、乏しい食料と劣悪な生活環境の中で過酷な強制労働に従事させられた方々です。
◎海外からの引揚者とは:敗戦によって外地での生活のよりどころを失い、身に危険が迫る過酷な状況の中をくぐり抜けて、祖国に戻ってこられた方々です。
主な作品紹介
■「兵士のおはなし」
漫画家の斎藤邦雄(さいとう・くにお、1920~2013年)さんが、約5年間の軍隊生活や、満州における戦争の体験を描いた漫画を展示します。
◎斎藤さんの作品として、出征する我が子をひたすら追い続ける母を描いた「戦地へ立つ日」、上官を守るため地雷原を歩かされた恐怖をユーモラスに描いた「閣下の地雷よけ」 、戦争が終わり抑留や引揚げが始まる満洲を描いた「奥地から避難する婦女子」などを展示します。

斎藤邦雄さん「戦地へ立つ日」
■「抑留者のおはなし」
約3年間の抑留生活を送った斎藤邦雄さんの紙芝居、カルタ、漫画や、約1年8か月の抑留生活を送った上河邉長(かみこうべ・おさ、1925~2006年)さんの漫画を展示します。
◎斎藤さんの作品として、シベリア抑留とは切っても切れない黒パンの思い出を伝える「紙しばい ああ黒パン」、つらい抑留生活をユーモラスに描いた「シベリア抑留 いろはかるた」全48枚をまとめたパネル、今なお日本に帰れず凍土に眠る戦友たちに対する鎮魂の想いを込めた漫画「シベリアの霊魂(れいこん)よ 故国日本へ還(かえ)れ」などを展示します。

斎藤邦雄さん「シベリアの霊魂よ 故国日本へ還れ」
◎上河邉さんの作品として、たったひとつかみの黒パンを分けるのに、目の色を変え殺気を帯びて、分配に2時間以上もかかった「怨念 <黒パン>分配」や、みんな口々に「日本にきたぞ~ッ」と絶叫した「ダモイ」(帰国を表すロシア語)などを展示します。

上河邉長さん「怨念 <黒パン>分配」
■「引揚者のおはなし」
奉天(ほうてん、現在の瀋陽〔しんよう〕)で敗戦を迎えた、ちばてつや(1939年~)さん、大連で敗戦を迎えた川崎忠昭(かわさき・ただあき、1932~1979年)さん、ハルピンで終戦を迎えた岩田ツジ江(いわた・つじえ、1926~2009年)さんなど、満州からの引揚者たちが、戦争の体験を伝えるために描いた漫画や絵本を展示します。
◎奉天からの引揚者であるちばさんの作品として、引揚船を見上げる人々の様子や、子どもと食べ物を交換しないかと持ちかけられ、わが子を手放さないでいてくれた母の気迫を伝える「引揚船は大きくてたくましく見えた」、収容所で次々と息をひきとっていった子どもたちの絵本に寄せた「トモちゃんのおへそ」など、3点の漫画を展示します。

ちばてつやさん「引揚船は大きくてたくましく見えた」
また、ちばさん一家が、中国人の徐集川(じょ・しゅうせん)さんの家の屋根うらに半年近く匿ってもらったときに、漫画家人生の原点となった引揚体験を描いた自伝『屋根うらの絵本かき』の漫画や挿し絵など、計16ページを特大パネルで紹介します。
◎大連からの引揚者である川崎さんの作品として、アカシヤの都・大連を舞台にして、甘い香りが幻想にとけこんでゆく「アカシヤ並木」、ロシア兵に追い立てられながら、散り終わったアカシヤ並木のかなたに消えていった「負けた日本兵」、中国とロシアと日本の暮らしが入りまじる国際都市に3か国語で別れを告げた「さようなら 大連」など、絵本の挿絵4点を展示します。

川崎忠昭さん「アカシヤ並木」(『おとうさんの絵本 大連のうた』より)
◎ハルピンからの引揚者である岩田さんの作品として、シベリアに送る男性を探す「男狩り」と銃を突きつけられた恐怖を描いた「ソ連軍占領、鍵をこわして家屋内に侵入した」、戦争に引き裂かれた母子の哀しみを描いた「引揚げ船の中で幼児二人を置き去りにしたと語る母親」など、絵本の挿絵を前期・後期あわせて計10点展示します。

岩田ツジ江さん「昭和20年9月頃 ソ連軍占領、鍵を壊して家屋内に侵入した」
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