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井上ひさしさん晩年のインタビュー本『ふかいことをおもしろく』を文庫化

PHP研究所は、井上ひさしさん晩年のインタビュー本『ふかいことをおもしろく』をPHP文庫より刊行しました。

井上ひさしさんは独自のユーモア感覚と鋭い風刺で幅広い読者を得た日本を代表する作家で、2024年は生誕90年にあたります。これを記念して文庫化された本書は、晩年にその人生を振り返り、自ら語った、まさに「井上ひさし」入門書といえる一冊です。

 

父との死別、児童養護施設での青春、作家を志した原点

1934年11月16日生まれの井上ひさしさんは、5歳で父と死別しており、小学生だった戦時中の体験は後の作品にも大きな影響を与えています。

 
14歳で児童養護施設に預けられ、上智大学に進学するも東北なまりの悩みから吃音になり挫折。釜石で働いていた母の元へ身を寄せた際の図書館のアルバイトがきっかけで文学の素晴らしさに気づき、作家を志して再び上京します。20代は浅草の劇場のコントを書いたり、ドラマの脚本の懸賞で稼いだりしていました。

 
本書で「自信はなかったけれど、とにかく書くのが楽しかったのです」と作家を志した原点として、当時を懐かしんでいます。

 

戦争、日本語、笑い……若い人たちに伝えたいこと

本書は、2007年のインタビューをまとめたもので、激動の半生と共に戦争のことや日本語のこと、笑いについてなど、若い世代に伝えたいことを、ユーモアいっぱいに語っています。時代を越えてもなお色褪せない「ふかくておもしろい」メッセージが満載の一冊です。

 
【本書より】

●頑張れば光は見えてくる

●読んでいる間はゲラゲラ笑って 一日ぐらいホッとするような そういう小説を絶対書きたい

●見る人が目の前にいるのが 一番厳しく、しかし面白い

●笑いとは、人間が作るしかないもの それは、一人ではできない
人と関わって、お互いに共有しないと 意味がないものでもある

●明日命が終わるにしても 今日やることはある

●自分が使いこなせる言葉で ものを考えることが大切

●「それ、わかりませんので教えてください」と無知のふりをして聞き返せばいい
やっぱり無知が一番賢いのです

●手が記憶する 記憶した手で 新しいことを作っていく

 

本書の目次

1 父から受け継いだもの
2 僕の戦争体験
3 物語に魅せられて
4 本とのつき合い方 
5 母の波瀾万丈人生
6 児童養護施設の青春
7 人生の時刻表作り
8 挫折して釜石へ
9 国立療養所に勤めて
10 文学との出会い
11 浅草フランス座へ
12 懸賞応募からプロの道へ
13 僕の創作術
14 劇作の喜び
15 笑いとは何か
16 文学が持つ力
17 変化する言葉
18 日本語の新世紀
19 デジタルの時代に

 

著者プロフィール

井上ひさし(いのうえ ひさし)さんは、1934年11月16日生まれ、山形県東置賜郡小松町(現・川西町)出身。作家、劇作家。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。

戯曲「うかうか三十、ちょろちょろ四十」が芸術祭脚本奨励賞を受賞。1964年からNHKの連続人形劇「ひょっこりひょうたん島」(共作)の台本を執筆。1969年に『日本人のへそ』で演劇界にデビュー。1972年には『手鎖心中』で直木賞を受賞。同年、『道元の冒険』で岸田國士戯曲賞と芸術選奨新人賞受賞。以降、戯曲『しみじみ日本・乃木大将』『小林一茶』で紀伊國屋演劇賞と読売文学賞(戯曲部門)、小説『吉里吉里人』で日本SF大賞、読売文学賞(小説部門)受賞。また『私家版日本語文法』『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』などがベストセラーになる。1984年には劇団「こまつ座」を旗揚げ。「昭和庶民伝三部作」でテアトロ演劇賞、『シャンハイムーン』で谷崎潤一郎賞、『太鼓たたいて笛ふいて』で毎日芸術賞・鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説『腹鼓記』『不忠臣蔵』で吉川英治文学賞、『東京セブンローズ』で菊池寛賞を受賞。2001年には、朝日賞を受賞。2004年、文化功労者に選ばれる。2009年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞、日本芸術院会員に選ばれる。2010年4月9日、永眠。

 

ふかいことをおもしろく(PHP文庫)
井上 ひさし (著)

「自信はなかったけれど、とにかく書くのが楽しかったのです」――生誕90年、名作を生み続けた作家の数々の言葉は、没後の今も心を打つ。

1964年からNHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』(共作)の台本を執筆。69年に、『日本人のへそ』で演劇界にデビュー。小説『吉里吉里人』で日本SF大賞、読売文学賞(小説部門)も受賞するなど、作家・劇作家として多くの業績を遺し、2010年に永眠された著者。晩年にその人生をふりかえり、自ら語った本書は、まさに「井上ひさし」入門書といえます。

【本書に収録された言葉の数々】
<父が死んだ年齢と同じ三十四歳くらいまでに 父が目指した道を自分も歩いていたいと 小さい頃から思っていました>
<情報をどんどん入れて知識になり 知識を集めて知恵を作っていく どんな仕事もきっと同じはず>
<頑張れば光は見えてくる どうしても物語性の中に自分を置きたがる それは、子どもの頃から変わっていない>
<読んでいる間はゲラゲラ笑って 一日ぐらいホッとするような そういう小説を絶対書きたい>
<見る人が目の前にいるのが 一番厳しく、しかし面白い>
<笑いとは、人間が作るしかないもの それは、一人ではできない 人と関わって、お互いに共有しないと意味がないものでもある>
<明日命が終わるにしても 今日やることはある>
<自分が使いこなせる言葉で ものを考えることが大切> など

*本書は、NHK BSハイビジョンで2007年9月20日に放送された番組「100年インタビュー/作家・劇作家 井上ひさし」をもとに原稿を作成し、2011年4月にPHP研究所から刊行された作品を文庫化したものです。

 


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