羽田圭介さんがSDGs時代の歪みを浮き彫りにする『滅私』を刊行 ふかわりょうさん推薦「よし、無駄なものに囲まれて生きていこう!」

羽田圭介さん著『滅私』(新潮社)
羽田圭介さんがSDGs時代の歪みを浮き彫りにする不気味な小説『滅私』が、新潮社より刊行されました。
物を捨てろ、心も捨てろ! 物欲から解放され、人間関係もスマートに――その生き方でどこまで行ける?
筋トレ、SM、投資、名声欲――日常につきまとう様々な物心両面のガジェットに振り回される現代人の、真面目だけどエキセントリックな姿を描き続けてきた羽田圭介さん。最新作は、ミニマムなライフスタイルがテーマです。
低成長もおぼつかない現代では、ほどほどの生活が営めれば十分。パンデミックで先行き不透明な今だからこそ、本当に必要なものだけを携え、しがらみのない自由な生き方をしたい――そんな人たちが増えている今の日本を、真摯に、しかし毒とおかしみを交えて書いた小説です。
【あらすじ】
主人公・冴津武士は三十代前半、「捨て」をキーワードに、物を持たない生き方を推奨するウェブサイト「身軽生活」を運営している。ミニマムなライフスタイルのためのブランド「MUJOU」も監修するその暮らしぶりは、都心の18㎡ワンルーム、家具は必要最小限、持ち物も、仕事に必要なデジタル機器の他は、わずかな衣服と食器のみ。決して裕福な暮らしではない。しかし、何事にも縛られない自由を手に入れるために、冴津は積極的にこの生き方を選択している。
今日も、サイトに載せる取材先でお土産にもらったメロンパンを、中身もろくに見ないで捨てた。どうせ捨てるなら早い方がいい。愛着が湧く前に捨てる。それが鉄則だ。
その冴津の前に、更伊という年下の男が現れる。彼は大学入学を機に東京に出てくる前の冴津が付き合っていた女性の弟だった。更伊の話では、姉が冴津と交際中に妊娠中絶をしたことがきっかけとなって一家離散となってしまったという。その妊娠は冴津が相手だったのかどうか定かではないのだが、当時の冴津は他にも数々の破天荒な言動で悪名高い存在だった。冴津に煽られた知人が起こしたことも多いのだが、店をつぶされたり、怪我で重い障碍が残った人もいるらしい。そんな過去に自分が復讐されようとしているのか……しかし物語は意外な展開を辿る。
著者プロフィール
著者の羽田圭介(はだ・けいすけ)さんは、1985年生まれ。高校在学中の2003年に「黒冷水」で文藝賞を受賞しデビュー。2015年に「スクラップ・アンド・ビルト」で芥川賞を受賞。
主な著作に『走ル』『盗まれた顔』『メタモルフォシス』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『成功者K』『ポルシェ太郎』『Phantom』など。テレビ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」へのレギュラー出演でも有名。
滅私 羽田 圭介 (著) 物を捨てよ、心も捨てよ。ミニマリストの男が直面するSDGs時代の悲喜劇。必要最低限の物だけで暮らすライターの男。物だけでなく人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で生計を立て、裕福ではないが自由でスマートな生活を手に入れた。だがある日、その人生に影が差す。自分の昔の所業を知る人物が現れたのだ。過去は物ほど簡単には捨てられないのか。更新される煩悩の現在を鋭く描く。 |
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