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【中央公論文芸賞】森絵都さん『みかづき』が受賞

第12回(平成29年度)「中央公論文芸賞」の選考会が8月24日に行われ、森絵都さんの『みかづき』(集英社)が受賞作に決定しました。

 

中央公論文芸賞について

中央公論文芸賞は、中央公論新社が創業120周年を記念して、2006年に創設した文学賞です。「第一線で活躍する作家のさらなる飛躍、新たな代表作となる優れたエンターテインメント作品」を顕彰します。

前年7月から当年6月までを対象期間とし、受賞者には正賞として記念品、副賞100万円が授与されます。

 

第12回中央公論文芸賞について

第12回中央公論文芸賞は、森絵都さんの『みかづき』が選ばれました。『みかづき』は、昭和30年代から平成にかけての塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の物語。今年の本屋大賞では惜しくも2位となりましたが、今回はめでたく受賞となりました。

選考委員は、浅田次郎さん、鹿島茂さん、林真理子さん、村山由佳さん。

なお、受賞作の選評は、10月10日発売の『婦人公論』10月24日号に掲載される予定です。また、贈呈式は10月11日午後6時から、東京・紀尾井町のホテルニューオータニにて開催。

 

みかづき
【メディア掲載レビューほか】
熱い教育論が飛び交う、戦後史にして大河ロマン

日本における学習塾の変遷、その塾の経営者三代の奮闘、女系家族の確執、理想の教育……本書は実に重奏的なテーマを含んでいるが、全ての主音が合わさり見事なメロディとなって奏でられる。スケールの大きな小説だ。

昭和三十六年。教員免許はないが、抜群の教える「才」を持つ大島吾郎は、小学校の用務員室で生徒の補習を行っていた。ある日生徒の蕗子の母・赤坂千明から自分の立ち上げる学習塾へ来て欲しい、と頼まれる。

千葉の一軒家を借りて始めた塾経営は、半年ほどで波に乗り始める。一方、新聞では「塾は受験競争を煽る受験屋だ」「塾は実のない教育界の徒花だ」というコラムが掲載されていた。

千明が公教育を嫌う理由は、国民学校で国への忠誠心を植え付けられた六年間を忘れられずにいたからである。教育とは、国の根幹であり、人を作ることに直結する。戦後その教えが一変したことで、千明は学校教育以外の教育を模索し、塾の経営に海路を見いだす。

こうして吾郎と千明は学習塾という小さな舟で教育界という大海にこぎ出したが、吾郎はあくまで補習、千明は進学と目的地がはっきりとしている。ならば二人のどちらかが舟を降りなければならない。

結婚した二人の元、育った長女蕗子、吾郎と千明の間に生まれた次女蘭、三女菜々美は両親の影響を受け、自分なりの教育論を築いていた。母への反発から家を出た蕗子は「理想の教育」について母に問う。

「理想理想ってお母さんは言うけど、本当にそんなものがあるんですか。あるとしたら、どこに?」

理想の教育は母の幻想だと蕗子は切り捨てる。時代と共に補習塾から進学塾へと舵を切っていくが、これは公教育に従った結果だ。受験戦争が過熱する中、公教育を否定しながら、塾はその跡を追うしかなくなっていく。理想の教育を見失ったまま――。

団塊のジュニア世代で小中学校と公教育を受け、塾には行ったことがないわたしが本書を読んで羨ましい、と思う場面がいくつかあった。それは学校の授業について行けない生徒が、学ぶことで理解する喜びを表わすところだ。この喜びを知るか知らないかによって、この先の学ぶ力は随分変わっていくだろう。

教育とは、教え育てることでその人に内在する資質や能力を発展させ、もっと学びたい欲求を生み出していく。そんな無限ループによって結果的に自分を高めていくことだと思う。

学ぶ喜び、そして導く喜びが本書の中でキラキラと光っていた。

評者:中江 有里
(週刊文春 2016.11.07掲載)

 
【内容紹介】
祝! 2017年本屋大賞第2位!!
祝! 王様のブランチ ブックアワード2016大賞受賞!!

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」
昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。
胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。

小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、
塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。

阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」

驚嘆&絶賛の声、続々! 昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。

 
【著者プロフィール】
森 絵都(もり・えと)
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒。90年『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。
95年『宇宙のみなしご』で第33回野間児童文芸新人賞と第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を、98年『つきのふね』で第36回野間児童文芸賞を、99年『カラフル』で第四六回産経児童出版文化賞を、2003年『DIVE!!』で第52回小学館児童出版文化賞を受賞するなど、児童文学の世界で高く評価されたのち、06年『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞を受賞した。『永遠の出口』『ラン』『この女』『漁師の愛人』『クラスメイツ』など、著書多数。

 
【関連】
第12回「中央公論文芸賞」は、森 絵都さんの『みかづき』|中央公論新社

 


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