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【第72回読売文学賞】岡田利規さん、中村哲郎さん、井上隆史さん、坪井秀人さん、池田澄子さん、角田光代さんが受賞

第72回読売文学賞が決定!

第72回読売文学賞が決定!

読売新聞社は2月1日、同社が主催する第72回(2020年度)読売文学賞の受賞作を発表しました。

 

第72回読売文学賞、6部門が決定!

第72回読売文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。

 
■小説賞
該当作なし

■戯曲・シナリオ賞
岡田利規(おかだ・としき)さん
『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(白水社)

■随筆・紀行賞
中村哲郎(なかむら・てつろう)さん
『評話集 勘三郎の死』(中央公論新社)

■評論・伝記賞
◎井上隆史(いのうえ・たかし)さん
『暴流(ぼる)の人 三島由紀夫』(平凡社)

◎坪井秀人(つぼい・ひでと)さん
『二十世紀日本語詩を思い出す』(思潮社)

■詩歌俳句賞
池田澄子(いけだ・すみこ)さん
句集『此処(ここ)』(朔出版)

■研究・翻訳賞
訳・角田光代(かくた・みつよ)さん
『源氏物語(全3巻)』(河出書房新社)

 
選考委員は、荻野アンナさん(作家、仏文学者)、川上弘美さん(作家)、川村湊さん(文芸評論家)、高橋睦郎さん(詩人)、辻原登さん(作家)、沼野充義さん(文芸評論家、ロシア・東欧文学者)、野田秀樹さん(劇作家)、松浦寿輝さん(詩人、作家、批評家)、若島正さん(英米文学者)、渡辺保さん(演劇評論家)。

 
受賞者には正賞の硯(すずり)と副賞の200万円が贈られます。贈賞式は2月15日午後6時より、東京・内幸町の帝国ホテルで開催。

 

読売文学賞について

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年(昭和24年)に創設されました。「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門があり、前年の作品から最も優れた作品を選んで表彰します。
なお、「随筆・紀行」は第19回から加わり、第46回からは「戯曲」を「戯曲・シナリオ」部門に改めています。

毎年11月に既受賞者をはじめ、文芸界の関係者に文書で推薦を依頼し、12月に第1次選考会、1月に最終選考会を行い、2月に受賞作品を発表しています。

 

未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀
岡田 利規 (著)

夢を幻視する「レクイエム」

「能はアレルゲンフリーの演劇だと、わたしは思っている。それだから、わたしは能に惹かれている。」(本書「前口上」より)
能のフォーマットを応用し、ついえた「夢」を幻視する、レクイエムとしての音楽劇――岡田利規による「能楽集」の全貌が、ついに明らかに!
東京オリンピック2020招致のため、2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家ザハ・ハディド。その圧倒的な造形のビジョンを白紙撤回され、その後ほどなく没した彼女をシテとして描く「挫波」。夢のエネルギー計画のため、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅについて謡う「敦賀」。
表題作二曲のほか、夢幻能と間狂言に今日的なキャラクター(六本木駅に現れる金融トレーダーの幽霊、都庁前駅に現れるフェミニズムの幽霊、『ハムレット』のせりふを覚える舞台女優)を登場させ、資本主義に飲み込まれている現代日本の姿を描いた「NŌ THEATER」とともに、演劇論(「幽霊はアレルギー症状を引き起こさない」、「能は世界を刷新する」)を併録する。

評話集-勘三郎の死-劇場群像と舞台回想
中村 哲郎 (著)

何と言ってもいい役者だった
面白い、愉しい役者だった
ある時代の、人の世の花だった――
戦後歌舞伎史のなかでの39年の交友を綴った珠玉のエッセイ

目次より I 十八代目勘三郎
勘三郎の死/まぼろしの還暦の『助六』/一期一会にあらず/ナミノは二人/汝は旅人
II 劇場群像――追悼・追憶賦
七世中村芝翫/四世中村雀右衛門/河竹登志夫/草森紳一/永山武臣/三島由紀夫/六代目歌右衛門
III 舞台回想
風、楼に満つ〟時代/歌舞伎座が意味するもの/戦後歌舞伎の円朝物と円朝劇/『切られお富』の記憶/道行と五・六段目の記憶
IV 書架散見
V 倫敦戯場漫歩

暴流の人 三島由紀夫
井上 隆史 (著)

その内なる声を掬い取り、自刃の謎を解き明かす。

自らの内面に渦巻く暴力性、 精神を蝕むニヒリズムを近代という時代の病、 人間存在の闇として問うた作家の実像。
『豊饒の海』の完成と自死ははぜ同時に計画されたのか。
没後50年、 三島研究の第一人者が満を持して世に問う決定的評伝。

『仮面の告白』や『金閣寺』を読めばわかるように、 三島の内面には制御しがたい暴力性が渦巻いていた。 また、 『豊饒の海』の結末が示すように、 すべては幻に過ぎないという冷え冷えしたニヒリズムが三島の精神を蝕んでいた。 しかし重要なのは、 三島はそれを単に個人の問題としてではなく、 近代という時代の病、 人間存在の闇として問うたことである。 事実、 死後半世紀を経て、 それは私たちすべてが直面する問題となったのだ。 三島はいわば、 現代を生きているのである。
(「はじめに」より)

二十世紀日本語詩を思い出す
坪井 秀人 (著)

〈終焉〉言説が拡散し続けていく中で、いまいちど二十世紀の歴史の中で詩の言葉、その思想と批評の言葉、あらわれとしてのテクストのすがたについて再考することを通して、どのような対抗的ヴィジョンが構想されうるのか。(「序章 二十世紀日本語詩を思い出す」) 未完の過去を解き放つ 本語の構築と一体に進行した近代詩史を、蒲原有明、北原白秋らへの稠密な検証により再定位し、植民地主義の傷痕を伝える日本語文学の問題系から、朝鮮日本語詩。合州国移民詩の新しい風景をひらく。百年に及ぶ〈詩の時間〉を凝視することによって、抵抗の論理を指し示す、渾身の力作評論。装幀=菊地信義

此処―句集
池田 澄子 (著)

口語を駆使した俳句で人気の池田澄子が、80代を迎えて直面したのは親しい句友、そして伴侶の死。
亡き師へ、友へ、夫へ――語りかけるように、優しく切なく真っ直ぐ言葉で、この世の「此処」から放つ380句。
前作『思ってます』以後、待望の第七句集!

◆「あとがき」より
俳句を詠むその時の思いは、この地球に何故か生まれたマンモスの、狼の、金魚の菫の人間の、偶然に生まれ合わせたもの同士の偶然の出会いと別れの、その数知れぬことの一つとして書こうとした。
少なくともペンを持っているときの私の大小の悦びや嘆きは、此の世に在る万物の思いの一つであった。

◆『此処』12句抄
初蝶来今年も音をたてずに来
私生きてる春キャベツ嵩張る
桜さくら指輪は指に飽きたでしょ
大雑把に言えば猛暑や敗戦日
ごーやーちゃんぷるーときどき人が泣く
玄関を出てあきかぜと呟きぬ
散る萩にかまけてふっと髪白し
粕汁の雲のごときを二人して
偲んだり食べたり厚着に肩凝ったり
この道に人影を見ぬ淑気かな
生き了るときに春ならこの口紅
柚子の皮刻み此の世よ有り難う

源氏物語 上 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集04)
角田光代 (翻訳)

恋に生き、切なさに、嫉妬に、美しさに涙する――
日本文学最大の傑作が、明瞭な完全新訳で甦る!
<原文に沿いながらも現代的な自然な訳文で、もっとも読みやすく美しい角田訳の誕生。 上巻には、第一帖「桐壺」から第二十一帖「少女」まで、たっぷり二十一帖分を収録! >

世に優れて魅力ある男の物語が、たくさんの登場人物を連ねて際限なく広がる。その一方で人の心の奥へも深く沈んでゆく。いうまでもなく日本文学最大の傑作。――池澤夏樹

とりかかる前は、この壮大な物語に、私ごときが触れてもいいのだろうかと思っていた。
実際にとりくみはじめて、私ごときが何をしてもまるで動じない強靭な物語だと知った。
――角田光代

解題=藤原克己(国文学 東京大学)
解説=池澤夏樹
月報=瀬戸内寂聴
大和和紀
帯写真=荒木経惟

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