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【第33回トップポイント大賞】ビジネスリーダー1万人が選ぶ2020年下半期のベストビジネス書は『ブルシット・ジョブ』が受賞

ビジネスリーダー1万人が選ぶ<2020年下半期>のベストビジネス書が決定!

ビジネスリーダー1万人が選ぶ<2020年下半期>のベストビジネス書が決定!

新刊ビジネス書情報誌『TOPPOINT(トップポイント)』は、1万名以上の定期購読者を対象とした定例の読者アンケートを行い、第33回(2020年下半期)「トップポイント大賞」を決定しました。

 

ビジネスリーダー1万人が選ぶ<2020年下半期>のベストビジネス書が決定!

第33回トップポイント大賞の大賞に輝いたのは、『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバーさん/岩波書店)。世の中にはびこる“クソどうでもいい仕事”(ブルシット・ジョブ)の実態を明らかにし、世界的に話題となった書です。

 
■大賞受賞書籍『ブルシット・ジョブ』について

欧米では、過去数十年で労働生産性が大きく上昇しました。にもかかわらず、労働時間は減らず、報酬も平行線をたどっています。著者は、その原因は管理部門や金融部門などの「完璧に無意味で、不必要」な「ブルシット・ジョブ」の増加にあると指摘。真に価値のある仕事とは何かを問い直します。

 
今回、投票に協力した読者の方々からは、「コロナ禍で、エッセンシャル・ワーカーの方々の奮闘に敬意を覚える一方で、なぜこのような方々の待遇がかくも悪いのかと暗澹たる気持ちでいたところに、非常にタイムリーな本を紹介していただきました」といったコメントが寄せられました。

 
『ブルシット・ジョブ』は、私たちが人生の時間の大半を費やす「労働」について、改めて考える機会を与えてくれた書籍といえるでしょう。

 
■『ブルシット・ジョブ』編集担当者・奈倉龍祐さん(岩波書店 編集局第一編集部)の受賞コメント

『ブルシット・ジョブ』は、仕事についての本ですが、効率化やノウハウは教えてくれません。仕事や労働にまつわる様々な不合理・ストレスに目を向けて、「なんでこんなに無駄な仕事が増えているんだろう」という素朴な疑問を、深くふかく掘り下げていく本です。その点で、ちょっと変わり種のビジネス書といえるかもしれません。そんな不思議な書物を「TOPPOINT大賞」に選んでくださったことに、心よりお礼申し上げます。

著者のグレーバーは、『負債論』でも話題になった気鋭の人類学者でしたが、残念ながら2020年9月に急逝しました。彼が本書で伝えたかったことの一つは、私たちの仕事はじつは「生産」より「ケア」の割合が多いということ、その「ケア」の観点から経済や社会を再建しなければならないということでした。グレーバーの遺した願いを、燠火(おきび)のように胸の中であたため、誰も仕事で傷つくことのない世界を共に築いていけましたら幸いです。

 
■『ブルシット・ジョブ』に投票した読者のコメント(抜粋)

◎コロナ禍で、エッセンシャル・ワーカーの方々の奮闘に敬意を覚える一方で、なぜこのような方々の待遇がかくも悪いのかと暗澹たる気持ちでいたところに、非常にタイムリーな本を紹介していただきました。「ブルシット・ジョブ」問題に関する議論が深まることを期待しています。(40代・男性)
◎衝撃的なタイトルですが、本当に必要な仕事とは何か、改めて考えさせられる内容です。逆に考えると、いかにして仕事に価値を認めてもらうかも、考えさせられます。(50代・男性)
◎仕事論に関して自分が考えもつかなかった点から、大きな納得を得られることができた。また、著者への弔意を表す意味でも推薦させていただく。(20代・男性)
◎普段仕事をしていると無駄だと思えることは多い。しかし、構造的に無駄を作っているのであれば話は変わる。人生の重要な部分を占める仕事について、根本的な問いを投げかけてくれる点で大変有益と感じた。(30代・男性)
◎なぜ生産性が向上する中、サービス業の比率が上昇するのか、なぜエッセンシャルワーカーの給与が安いのかを分析している。(男性)
◎これは目から鱗でした。(50代・男性)

 
<著者・デヴィッド・グレーバー(David Graeber)さん プロフィール>

1961年ニューヨーク生まれ。文化人類学者・アクティヴィスト。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授。

著書に『アナーキスト人類学のための断章』『負債論――貨幣と暴力の5000年』(以文社)、『デモクラシー・プロジェクト――オキュパイ運動・直接民主主義・集合的想像力』(航思社)など。2020年死去。

 

2020年下半期「トップポイント大賞」およびベスト10冊〔敬称略〕

【大賞】『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバー/岩波書店)

 
2位:『共感経営』(野中郁次郎、勝見明/日経BP・日本経済新聞出版本部)

3位:『仕事の哲学』(酒巻久/PHP研究所)

4位:『直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍』(伊丹敬之/東洋経済新報社)

5位:『プロフェッショナル経営参謀』(杉田浩章/日経BP・日本経済新聞出版本部)

6位:『スタンフォード式 人生を変える運動の科学』(ケリー・マクゴニガル/大和書房)

7位:『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』(大山健太郎/日経BP)

8位:『NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘』(マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール /サンマーク出版)

9位:『LIFESPAN』(デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント/東洋経済新報社)

10位:『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(酒井大輔/日経BP)

 

「トップポイント大賞」決定に合わせた書店店頭フェアを開催!

本賞の決定に伴い、丸善ジュンク堂書店ほか全国の主要大型書店44店舗にて、「トップポイント大賞受賞書籍フェア」が開催されます。

フェアでは、ベスト10冊に選ばれた各書籍を、その書籍の読みどころや読者のコメントと併せて展示するとともに、本賞の概要がわかる小冊子(無料)を配布します。フェアは、2月より約1ヵ月間の開催予定です。

 

「トップポイント大賞」とは

「トップポイント大賞」は、新刊ビジネス書情報誌『TOPPOINT』が読者アンケートによって半年ごとの「ベストビジネス書」を決定するものです。2004年より前身の「読者が選ぶベストブックアンケート」を開始し、今回で通算33回目の開催となります。

読者アンケートは、ビジネスリーダーを中心とする1万名以上の『TOPPOINT』読者を対象に、本誌が半年間で紹介した書籍60冊の中から「ベスト3」を選ぶ形式で実施。1位3点、2位2点、3位1点として集計し、総得点1位の書籍を「トップポイント大賞」として選定。併せて、得点順に上位10冊を選出します。

 

新刊ビジネス書情報誌『TOPPOINT』について

『TOPPOINT』は、毎月数多く出版されるビジネス関連の新刊書の中から、「一読の価値ある本」を厳選し、その概要を紹介する月刊誌です。

毎月、100冊前後のビジネス関連の新刊書を熟読、その中でも特に「内容が斬新」「アイデアに溢れた」10冊を厳選し、その概要を紹介します。1987年の創刊以来30年以上にわたり、第一線のビジネスリーダーを中心に購読されています。

★公式ホームページURL:https://www.toppoint.jp/

 

ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論
デヴィッド・グレーバー (著), 酒井 隆史 (翻訳), 芳賀 達彦 (翻訳), 森田 和樹 (翻訳)

やりがいを感じないまま働く。ムダで無意味な仕事が増えていく。人の役に立つ仕事だけど給料が低い――それはすべてブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)のせいだった! 職場にひそむ精神的暴力や封建制・労働信仰を分析し、ブルシット・ジョブ蔓延のメカニズムを解明。仕事の「価値」を再考し、週一五時間労働の道筋をつける。『負債論』の著者による解放の書。

■推薦コメント
みんなが自分の仕事について真面目に考えたら世界は変わるかもしれない
グレーバーの提議がこれほど切実に聞こえるときはない
コロナ禍を体験した私たちに「思索のタネ」を与える福音の書
ブレイディみかこ(ライター・コラムニスト)

「クソどうでもいい仕事」は実在する。どころか、4割くらいの人が自分の仕事がそうであると知りながらそれに従事している。なのに誰もそれを「クソどうでもいい」と言えずにいた。が、それも本書が出るまでの話だ。現代社会最大のタブーは晒された。「クソどうでもいい仕事」はあなたの錯覚ではないし、誰がどれだけ言い繕おうとそこに意義はない。だから大手を振って中指を立ててやろう。こんな痛快な本はまたとない。何もせず威張ってるだけの上司や同僚のまぬけづらを思い浮かべて、大爆笑しながら読もう。
若林恵(編集者)

ムダで無意味だと思いながらも、働いているふりを強いるブルシット・ジョブ。本書のエピソードの数々に誰もが共感を覚えるはずだ。でも「辞めてやる! 」とは言えない。他に選択肢はないと思い込んでいる。それが個人や社会を蝕んできた。なぜこうなってしまったのか? これは「働き方」の問題ではない。グレーバーは、そこに何重にも絡まる歴史的な政治・経済・宗教の問いを解き明かしてくれる。ケア労働が見直されている今だからこそ、ポスト・コロナの世界を考えるためにも。必読です。
松村圭一郎(文化人類学者)

かつて惑星の99%を勝手に味方につけたグレーバーは、「勝ち組」ホワイトカラーの内心の苦しみをケアするこの著作で、改めて階級横断的な「人間」一般の秘密をわたしたちに伝えながら自由な未来を開こうとする。
片岡大右(批評家)

ハッとさせられたのは、あらゆる労働は本質的にケアリングだ、という指摘である。橋を作る仕事だって、その根本にあるのは川を横断したい人へのケアだ。ケアは数値化できず、生産性には結びつかない。私たちがコロナ禍で学んだのは、このケアの部分こそ機械によって代替することができず、また休むことも許されないという事実だった。
人間らしく働き、ケアしあいながら社会を作るとはどういうことか。日常が完全に元に戻る前に、立ち止まって考えたい。(9/12『毎日新聞』より)
伊藤亜紗(美学者)

「いかに会議の時間を短くするか」というお題の会議を長時間やったことがある。あれには意味があったらしい。会議がなくなると困っちゃう人たちの仕事を守っていたのだ。
武田砂鉄(ライター)

■「ブルシット・ジョブ」とは?
◇ブルシット・ジョブの最終的な実用的定義
ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。

◇ブルシット・ジョブの主要5類型
1. 取り巻き(flunkies):だれかを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事
2. 脅し屋(goons):雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素をもち、そのことに意味が感じられない仕事
3. 尻ぬぐい(duct tapers):組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事
4. 書類穴埋め人(box tickers):組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事
5. タスクマスター(taskmasters):他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブをつくりだす仕事

 
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2020年下半期 TOPPOINT大賞 発表 – 新刊ビジネス書の要約『TOPPOINT(トップポイント) 』

 


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