筒井康隆さんが最愛の息子を喪った体験をもとに描いた掌篇小説「川のほとり」を『新潮』2月号で発表

『新潮』2021年2月号
新潮社が発行する文芸誌『新潮』2021年2月号(1月7日発売)に、筒井康隆さんの最新掌篇小説「川のほとり」が掲載されます。昨年、最愛の息子を喪った筒井さんの体験が濃厚に反映された、涙なくして読めない小説です。
死した息子との再会は時空を超えた――。
映像化された『時をかける少女』『私のグランパ』『パプリカ』などでも知られ、幅広い読者を持つ作家・筒井康隆さん。そのひとり息子にして気鋭画家だった筒井伸輔さんが昨年(2020年)、わずか51歳の若さで亡くなられました。
物語は夢のなかの川のほとり。そこで主人公の小説家は亡くなって間もない「伸輔」と再会します。主人公は、この再会が自分の夢にすぎないことを知っています。それでも、息子と語り続けずにはおれません。喋り終えたら、夢が覚めてしまうから。
「父さん」
「おう」
「母さんは元気」
「元気だよ」
そのとき、息子が発した思わぬ一言とは……。
原稿用紙にしてわずか十枚の掌篇ですが、筒井康隆さんが生涯で一度しか書けない感動の物語が誕生しました。
著者からのコメント
「(新潮社の)中瀬ゆかり出版部長からは、涙のあとをたくさん原稿用紙に残してしまったという有り難いメール、「波」の楠瀬啓之編集長からも、言葉もなく、問答無用に打たれたというお褒め、矢野氏からも、とてつもない、異常な感動を与える作品という過分のメールを頂いた」
(筒井康隆ウェブ日記「偽文士日碌」より)
著者プロフィール
著者の筒井康隆(つつい・やすたか)さんは、1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒業。1960年、弟3人とSF同人誌『NULL』を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が『宝石』に転載される。
1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。1997年、パゾリーニ賞受賞。2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章を受章。2010年、菊池寛賞を受賞。2017年『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。
他に『時をかける少女』『家族八景』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』『アホの壁』『聖痕』『世界はゴ冗談』など著書多数。
新潮 2021年 02 月号
筒井康隆 岸政彦 三国美千子 小説 |
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