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新川帆立さん『このミス』大賞受賞作『元彼の遺言状』が書籍化 型破りで金の亡者の敏腕「女性弁護士」が主人公の遺産相続ミステリー

新川帆立さん著『元彼の遺言状』

新川帆立さん著『元彼の遺言状』

宝島社は、第19回『このミステリーがすごい!』大賞で大賞を受賞した新川帆立さん著『元彼の遺言状』を2021年1月8日に刊行します。

 

選考委員をはじめ、編集部全員がそのキャラクターの魅力にノックアウト!

本書は、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という元彼の奇妙な遺言を受け、女性弁護士が依頼人と共謀して分け前を狙う遺産相続ミステリーです。

『このミステリーがすごい 』大賞の選考委員より、「強烈にキャラの立った女性弁護士もの」「とにかく主人公の人物造形に魅了されました」「人間関係もよく練り込まれていると思った」と強烈で魅力的なキャラクター造形と発想力が高い評価を受け、満場一致で大賞に決まりました 。

 
著者の新川帆立(しんかわ・ほたて)さんは、自身も弁護士として働いています。「自分の年齢と近くて同じ弁護士という職業の女性をしっかり書くことを1つの目標とした」と語っており、自身の経験を生かしたリーガルミステリーとなっています。

 

新川帆立さんコメント

16歳の時に「作家になる」と決めて以来、両親にはもちろん、友達にも「私、作家になろうと思う」と宣言していました。 別に文才があるわけでもなかったので、作家への道は厳しいだろうなとは思っていて、「粘り強く
長期戦に対応できるための食い扶持が必要」と考え弁護士になりました。今回の作品ではスカーレット・オハラのような強くて癖のある女の人を描きたいと思っていて、女性の好む女性像として強い女の人をイメージして主人公のキャラクターを作っていきました。本の世界にいる数時間だけでも、型破りな主人公と一緒になって、笑ってもらえるといいなと思います。

 

新川帆立さんインタビューを公開

 
◆選考委員を唸らせた魅力的なキャラクター 『元彼の遺言状』と新川帆立◆
(聞き手:ライター 大西展子さん)

 
【執筆のきっかけは実体験から】

もともとファンタジーかSFを書こうと思っていて、去年(2019年)の『このミス』にもファンタジー小説で応募しました。ところが、一次で落ちてしまって。師匠からは「まず一番書きやすい、同世代の女性を主人公に書きなさい。自分に近いところのものを深くしっかり書けるようになってから、少しずつ幅を広げていかないと、どれも浅くて小器用に書く人になる」というアドバイスをいただきました。それで今回は、自分の年齢と近くて同じ弁護士という職業の女性をしっかり書くことを1つの目標にしたのです。

そもそもこの物語を思いついたのは、私自身の経験からで、私の3つ前の彼が急に連絡をしてきたことにヒントを得ました。何でこんなふうにいきなり連絡をしてくるんだろうと思って無視したんですけど、また数か月後に「最近、どう?」って連絡がきたんですよ。男の人って変なことをするなと思ったのと同時に、男女で元カレとか元カノに対しての考え方が違うのが面白かった。じゃ、もしこの3つ前の彼が亡くなったら自分は悲しむだろうか、葬式に行くだろうか、と考え出したところから物語がふくらんでいきました。

 
【頑張っている女性たちを勇気づける主人公を描きたい!】

『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラのような強くて癖のある女の人を描きたいと思っていて、男性の好む女性像とは違う女性の好む女性像として強い女の人をイメージして主人公のキャラクターを作っていきました。とにかく女性が憧れるような主人公にしようと決めていたので、我がままなんだけれども変に意地悪な面のない子にしたのです。普通に暮らしていても相変わらずセクハラとか、男性には言わないようなことを女性には平気で言う男の人が多いですね。そういうことをされると働いていてすごく消耗するし、もうイヤだ!ってなるわけです。ですから、そういうものを笑い飛ばせるような、頑張っている時に思い出してもらえるような麗子がキャラクターになるといいなという思いを込めて書きました。男性とガチで競争すると、同期の男性からでさえやたら上から目線で「おまえ、頑張ってるじゃん」とか言われ、牽制パンチはあるし、「オジさん転がしがうまいからねえ」みたいな言い方もされる。意外と男性のほうが競争意識がすごいし、男の嫉妬は怖いので、女性はしなくてもいい苦労をしていると思います。私の経験上、同期の女子はいがみ合いもなく喧嘩もしないし、むしろ助けてくれる人が多かったんです。男性のほうが嫌味を言ってくるという実感があったので、今作でも女性同士はそんなに喧嘩をしない前提で書きました。

 
【16歳からの夢、「作家」になるために弁護士資格を取得】

16歳の時に読んだ夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたことで、自分もこういう小説が書きたい、作家を目指そうと、初めてなりたい職業が見つかったんです。ただ、作家になるまでは時間もかかるし、もし運良くなれたとしても収入が安定するまでは大変だろうと思ったので、これは兼業でやっていくしかない、と。そのためには 「粘り強く長期戦に対応できるための食い扶持が必要」 で、いわゆる手に職ではありませんが、何か資格を取ろうと思ったんです。大学は前期試験で医学部を受けたんです。ところが、落ちてしまったので、後期試験で合格した医学部以外どの学部でも入れる枠で、弁護士資格を取れる法学部に入学して弁護士になりました。ただ、作家になるために成り行きで職業を選択したので、その志のなさが、のちに弁護士事務所のハードワークに耐えられなかった原因だと思います。今は企業の法務部で働いています。

 
【受賞後、家族の反応】

私は結構突拍子もないことをするから、両親は驚きもしなかったですね。プロの雀士になった時だってさほど驚かなかったぐらいですから。夫は本当にポジティブな人なので、去年『このミス』で落ちた時は首をかしげて、私より納得してないんですよ、作品を読んでもないのに(笑)。だから今回、受賞したことを知らせると、「宝島社ってきちんと見てくれてるんだね」って、夫だけは私が受賞することを疑ってなかった。夫は大学、大学院、職場とずっと一緒だった弁護士です。夫にも「本当は作家になりたいんだよね」と言っていたこともあって、執筆している時は何も他のことができない私をメチャクチャ支えてくれました。それこそ、「お風呂沸いたよ」とか、ご飯の支度や洗濯物も全部やってくれました。こんなふうに私を全面肯定してくれる存在ってすごくメンタルの支えになったので本当に感謝しています。

 
【今後書きたい作品ジャンルは?】

男性作家の小説で、女の人は登場してもあくまでもサブ的なんですよね。それが悲しいな、と思って。それこそ職場の花的な、小説に花を添えるという役割しか与えられていない場合が多い。しかも、その美人が急に主人公とくっつくみたいな展開にも毎回モヤッとしていて、すごく都合のいいキャラクターだなあって。私が働いている世界では別に女同士で喧嘩なんてしないし、どちらかというと男の人のほうが面倒くさく思えるので、そういう私が実際に見たり感じたりしたことをこれからも書いていきたい。基本的には女性が主人公で女性が楽しく読めるミステリー小説、かつリーガル系や経済ネタの知識が生かせるようなものを書いていけたらと思っています。 今、プロットを作り込んでいる段階なのでご期待ください。

 

著者プロフィール

著者の新川帆立(しんかわ・ほたて)さんは、1991年2月生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。

高校時代は囲碁部に所属し全国高校囲碁選手権大会にも出場。囲碁部で麻雀にも興味を覚え、司法修習中に最高位戦日本プロ麻雀協会のプロテストに合格しプロ雀士としても活動経験あり。

作家を志したきっかけは16歳のころ夏目漱石の 『吾輩は猫である』に感銘を受けたこと。作家になるために「粘り強く長期戦に対応できるための食い扶持が必要」と考え弁護士になる。

 

『このミステリーがすごい!』大賞について

『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメントブックガイド『このミステリーがすごい!』を発行する宝島社が、新時代の新しいミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的に、2002年に創設した新人賞です。大賞賞金は文学賞最高額である1200万円。受賞作はすべて書籍化されます。

 
これまで、第153回直木賞を受賞した東山彰良さんや、累計1000万部突破の『チーム・バチスタの栄光』シリーズの海堂尊さんなどの作家を輩出しています。受賞作品からは多数のベストセラーが生まれ、『さよならドビュッシー』(中山七里さん/2013年映画化・主演:橋本愛さん、2016年テレビドラマ化・主演:黒島結菜さん・東出昌大さん)、『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』(梶永正史さん/2016年テレビドラマ化)、『一千兆円の身代金』(八木圭一さん/2015年テレビドラマ化)、『がん消滅の罠 完全寛解の謎』(岩木一麻さん/2018年テレビドラマ化)など、映像化作品も多数世に送り出しています。

また、受賞には及ばなかったものの将来性を感じる作品を「隠し玉」として他の受賞作と同様に書籍化しており、『スマホを落としただけなのに』(志駕晃さん/2018年、2020年映画化)などの話題作も生み出しています。

 

元彼の遺言状(第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作)
新川 帆立 (著)

本年度の第19回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作は、金に目がない凄腕女性弁護士が活躍する、遺産相続ミステリー! 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と3か月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家の主催する「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円とも言われる財産の分け前を獲得するべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。一方、麗子は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、避暑地を訪れて手続きを行なったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう――。

 
【関連】
元彼の遺言状|新川 帆立|宝島社

 


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