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『僕の神さま』『空想クラブ』刊行記念!芦沢央さん×逸木裕さんがオンライン対談 子どもの世界を題材にミステリーを描いた2作の意外な共通点とは?

『僕の神さま』『空想クラブ』刊行記念!芦沢央さん×逸木裕さんがオンライン対談

『僕の神さま』『空想クラブ』刊行記念!芦沢央さん×逸木裕さんがオンライン対談

小学生の日常に起きた「悲劇」を描いた連作ミステリ『僕の神さま』(芦沢央さん)と、中学生が親友の少女の死の謎を追う『空想クラブ』(逸木裕さん)――ともに8月にKADOKAWAより刊行された二つの小説の共通点について、著者のふたりが文芸WEBマガジン「カドブン」(https://kadobun.jp/)にてオンライン対談をしました。

 

『僕の神さま』『空想クラブ』刊行記念!芦沢央さん×逸木裕さんが緊急オンライン対談! クライマックスは「なぞ解きの先」にある

芦沢央さん著『僕の神さま』と逸木裕さん著『空想クラブ』には、ある共通点がありました。

 
<以下、対談記事の一部を紹介> ※敬称略

――今回のお二人の対談には、意外なきっかけがあったそうですね。

芦沢:そもそもは小説家の谷津矢車(やつ・やぐるま)さんが『僕の神さま』の感想をツイートしてくれて、その中で逸木裕さんの『空想クラブ』と「問題意識のあり方が似ている」という指摘をいただいたんです。対談を組んでいいレベル、という言葉に、それは楽しそうだな、と反応したら、あっという間に対談が決定(笑)。

逸木:本当に実現しちゃいましたね(笑)。

芦沢:谷津さんに詳しくお聞きしたのですが、2作の共通点として、「ミステリ的な枠組みでは救われない子供の世界」というモチーフ、そしてミステリ的な解決がストーリーの解決にならず、別のアプローチで話を閉じている、という点を挙げてくださいました。

逸木:表面的な流れを見ていると、この2作は全然違う話だと思うんですよ。でも谷津さんのご指摘はその通りだと思いましたし、さすがの読み込みの深さだと感じました。確かに、『空想クラブ』も謎が解けたことが必ずしも登場人物たちにとっての解決にならないストーリーです。

芦沢:『僕の神さま』には父親から虐待を受けている川上さんという女の子が出てくるんですけど、彼女はどうしたら救われるのか、そもそも彼女にとっての救いとは何なんだ、というところでかなり悩んで、筆が数か月止まってしまいました。実際に現実で起きている虐待では、悲劇が起こってしまうことがたくさんある。そうした現実へ向けて発表する作品として、物語の中ですべてがうまくいって手放しのハッピーエンドになるという展開を、私自身が信じられなかったんです。それでは物語のためのご都合主義で勝手に「閉じて片づける」ことになってしまうんじゃないかと。それがミステリ的な解決とは別のアプローチを取ることにつながったのだと思います。

逸木:エンタメ的なわかりやすい解決を選ぶのではなく、現実的な問題と誠実に向き合うほうを選んだということですね。

芦沢:はい、なのでラストについては様々な受け止め方がありうると思いますが、私自身はアンハッピーエンドだとは思っていません。一度離れた方がいい人間関係もある、別離はそれまでの時間を否定するものではない、という思いがあって。
『空想クラブ』は別れた仲間が再集結するじゃないですか。でも、すぐ先の別離がすでに決まっている。いつか終わるんだとわかっていて、でも心を通わせていく。構造からしてすごくエモーショナルだなと思いました。

逸木:真夜(まや)という頭の良い女の子が登場するんですけど、河原から動けないという設定もあって、安楽椅子探偵的に活躍します。彼女が様々な謎を解くことで、周囲の人にいいフィードバックが生まれる。でも、現実的に何かの謎を暴くことは、必ずしもいい結果になるわけではない。残酷な現実に直面した子供たちが、そこからどう生きていくのか、ということが描きたかったんです。

 
※対談全文は、文芸WEBマガジン「カドブン」(https://kadobun.jp/feature/talks/bamgfobhwjcw.html)にて、お楽しみください!

※なお、文芸WEBマガジン「カドブン」(https://kadobun.jp/)では各作品の試し読みもできます。

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『僕の神さま』について

<あらすじ>
知ってる? 川上さんって、お父さんに殺されたらしいよ……

「神さまに決めてもらおう」
僕たちは何か問題が起きると、同級生の水谷くんに相談する。みんなから頼りにされる名探偵。彼が出す答えに決して間違いはない。だって水谷くんは「神さま」だから。夏休み直前、僕と水谷くんは同じクラスの川上さんからある相談を受ける、それは……。小学生の日常で起きた「悲劇」が胸をえぐる、残酷で切ない連作ミステリー。
少女のため、2人の小学生が取った行動とは――

 

『空想クラブ』について

<あらすじ>
夜の川で死んだ彼女の魂を救うため、ぼくはある決断をした
ラスト16ページの「奇跡」をあなたはこれから体験する

「絶対に、また、どこかで会おうね」
吉見駿は空想好きな中学生。祖父から受け継いだ「能力」によって、見たい風景を「見る」ことができる。
かつて共に「空想クラブ」を作った親友・真夜の葬儀の帰り道、駿は河川敷で幽霊となった彼女に再会する。川で死んだ真夜は、死の瞬間の謎のために河川敷の、半径二十メートルの範囲に捕らわれてしまったという。塾からの帰宅途中、河川敷を自転車で走っていた真夜は川の方から「助けて!」という叫び声を耳にした。子供が溺れていることに気付いた彼女が川に入ったそのとき、木の枝を踏んだような音と共に意識を失ったという。
「能力」のためか、自分だけが真夜の姿を見ることができると知った駿は、「空想クラブ」の仲間と彼女の死の真相を探っていくが――。

 

対談者プロフィール

 
■芦沢央(あしざわ・よう)さん

1984年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。

2017年『許されようとは思いません』が第38回吉川英治文学新人賞の、2019年『火のないところに煙は』が本屋大賞、第32回山本周五郎賞の候補となった。

他の著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『雨利終活写真館』『貘の耳たぶ』『バック・ステージ』『カインは言わなかった』がある。

★Twitter(@ashizawayou):https://twitter.com/ashizawayou

 
■逸木裕(いつき・ゆう)さん

1980年東京都生まれ。学習院大学法学部法学科卒業。フリーランスのウェブエンジニア業の傍ら、小説を執筆。2016年『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。

他の著書に『少女は夜を綴らない』『星空の16進数』『電気じかけのクジラは歌う』『銀色の国』がある。

★Twitter(@yu_itk):https://twitter.com/yu_itk

 

僕の神さま
芦沢 央 (著)

空想クラブ
逸木 裕 (著)

 
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