【第56回文藝賞】宇佐見りんさん「かか」と遠野遥さん「改良」が受賞
河出書房新社は8月27日、第56回文藝賞の受賞作を発表しました。
第56回文藝賞が決定!
第56回文藝賞は、8月22日に明治記念館にて、磯崎憲一郎さん、斎藤美奈子さん、町田康さん、村田沙耶香さんの選考委員4氏により選考会が行われ、次の通り受賞作が決定しました。
■第56回文藝賞
◎宇佐見りん(うさみ・りん)さん
「かか」
◎遠野遥(とおの・はるか)さん
「改良」
受賞者の宇佐見りんさんは、1999年、静岡県生まれ。現在学生。神奈川県在住。
同じく受賞者の遠野遥さんは、1991年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。東京都在住。
受賞者には、正賞として記念品、副賞として賞金50万円が贈られます。授賞式は10月中旬に、明治記念館で開催。
なお、受賞作・選評・受賞の言葉は、10月7日(月)発売の『文藝』冬季号に掲載されます。
受賞作の内容紹介
■宇佐見りんさん「かか」(400字×139枚)
《かか、かか、憎いくらいかあいそうなかか。
うーちゃんが救ってあげるかんね。》
19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになってしまった。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位 自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。
彼女はある祈りを抱え、熊野へと旅立つ――。
20歳の野性味あふれる感性が生み出す、独特の語り。
人が人として生まれ生きることの核心に立ち向かった、痛切な愛と自立の物語。
遠野遥さん「改良」(400字×122枚)
《どうして、私は美しくないのだろう。
女の格好をして、私はなぜ美しくなりたいのだろう。》
お気に入りのウイッグ、ニット、スカートを身につけ、「美しく」なるためのメイクに勤しむ大学生の私。
メイクが上達してゆくにつれ、ある欲望が芽生える。このまま外に出ても男だとわからないのではないか? コールセンターのバイト仲間のつくねと、いつも指名するデリヘル嬢のカオリ――希薄な人間関係にすがりながら、美への執着心の果てにもたらされた暴力とは ……。
冷徹な文体で、現代を生きる個人の孤独の淵を描き出す。男であること、そして女であることを決めるのは何か?
新世代のダーク・ロマン、誕生。
文藝賞について
文藝賞は、1962年に文芸誌『文藝』で創設された公募の新人文学賞です。河出書房新社が主催。
日本における新人作家の登竜門とされ、第一回受賞作である高橋一巳さん『悲の器』をはじめ、田中康夫さん『なんとなく、クリスタル』、山田詠美さん『ベッド タイム アイズ』、綿矢りささん『インストール』、白岩玄さん『野ブタ。をプロデュース』、山崎ナオコーラさん『人のセックスを笑うな』など、実力と才能を兼ね備えた作家を多数輩出しています。
ちなみに、創設当時の『文藝』の編集長は坂本一亀さんで、音楽家・坂本龍一さんの父。
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