宮部みゆきさんが10年の歳月をかけた初の本格的SF作品集『さよならの儀式』を刊行へ!
宮部みゆきさんの最新単行本『さよならの儀式』が、河出書房新社より7月に刊行されます。
1987年にデビューして、平成とともに作家生活を歩んできた宮部みゆきさんの、令和を迎えて最初の単行本は、初のSF作品集です。
淡く美しい希望が灯る――10年の歳月をかけ、ついに完成した「新たなる物語世界」
「わたしはSFもミステリーもどっちも好きで、どちらも大切な宝箱だと思っています」(「SF Japan MILLENNIUM:00」より)という宮部みゆきさんは、『蒲生邸事件』で第18回日本SF大賞を受賞していますが、SFを書くことからは、しばらく逃げまわっていたのだとか。
心境に変化が生じたのは、今から10年前。2009年に、SF翻訳家・書評家の大森望さんによる責任編集の書き下ろしSFアンソロジー・シリーズ『NOVA』(河出文庫)が刊行を開始します(のちに『NOVA』第1期・全10巻は、第34回日本SF大賞特別賞を受賞)。
シリーズ開始にあたって大森さんから新作SFを依頼された宮部さんは、長編小説なみのインパクトを誇る「聖痕」を発表します。以来、1年に1作ほどのペースでSFを書き続けてきました。
こうして生まれた本書収録の8つの物語は、現代ミステリーや青春物のようにさりげなく始まりながら、不思議な事件や出来事とともに、少しずつ、未知なる世界へと読者をいざないます。そして最後には、あっと驚く現実が待ち受ける、宮部版『世にも奇妙な物語』、あるいは、「すこしふしぎ」(=SF/藤子・F・不二雄さんの造語)な物語です。
『さよならの儀式』に寄せて――宮部みゆきさん コメント
《10年前、新しく始まるSFアンソロジー『NOVA』に参加しませんか――と誘っていただいたとき、これまでのような「なんとなくSF」ではなく、「ちゃんとSF」を書こうと思いました。その積み重ねで出来上がったのが本書です。歳月のなかで私が変化したところと変化しないところが浮かび上がり、作家的血液検査の結果を見るようで、嬉しくもあり恐ろしくもある作品集になりました。》
『さよならの儀式』各編の内容
◆母の法律
育ての母が死に、わたしの家族は解体された――「マザー法」に従って。「子は親を選べない」という絶対的な不公平を緩和し、被虐待児とその親を救済する奇蹟の法律、それがマザー法。でも、救いきれないものはある。
◆戦闘員
定年退職した孤独な老人は、日課の散歩がきっかけで、防犯カメラの秘密に気づく。今はもう守るべきものができた。「我々は戦う。手強いぞ。そう簡単に、いいようにされてたまるか」
◆わたしとワタシ
45歳のわたしの前に、女子中学生のワタシが現れた。「――やっぱり、あたしタイムスリップしちゃってる!」
◆さよならの儀式
長年一緒に生活してきた家庭用ロボットが廃棄処分に。ロボットはすでに回収されたが、窓口の担当者に一縷の望みをかけて質問する。「もう一度、会えますか?」
◆星に願いを
あの隕石が落ちてきた日の数日後から、小学3年生の妹の調子がおかしくなった。「人騒がせなおともだち、到着」
◆聖痕
探偵事務所に持ち込まれた相談。それは都市伝説の一種のように思えた。元〈少年A〉が発見したサイト「黒き救世主と黒き子羊」によれば、〈少年A〉はすでに死んでいて、人間を超えた存在になっているという。
◆海神の裔
明治日本の片田舎にやってきた「屍者」のトムさんが、村を救ってくれました。
◆保安官の明日
人口823人の平和な町〈ザ・タウン〉でただ一人の保安官のパトロール中、車載の無線がなった。「保安官、急いで戻ってください。女子大生の拉致監禁事件、発生です」。カードがまた揃ってしまったか……。
宮部みゆきさん プロフィール
著者の宮部みゆき(みやべ・みゆき)さんは、1960年生まれ。東京都出身。1987年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
主な受賞歴に、1989年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞、1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、1993年『火車』で山本周五郎賞、1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、1999年に『理由』で直木賞、2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、2002年に同作で司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞。
さよならの儀式 宮部 みゆき (著) 人騒がせなお友達、到着。長年一緒に暮らしてきたロボットとの別れの日を描いた表題作他、宮部みゆきの新境地、少し不思議な作品集。 |
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