【第69回H氏賞・第37回現代詩人賞】H氏賞に水下暢也さん『忘失について』 現代詩人賞は齋藤貢さん『夕焼け売り』
日本現代詩人会は3月2日、新人の優れた詩集に贈る第69回H氏賞および、中堅以上の詩人の優れた詩集に贈る第37回現代詩人賞の受賞作を発表しました。
第69回H氏賞および第37回現代詩人賞が決定!
第69回H氏賞および第37回現代詩人賞の選考会が3月2日に開催され、次の通り受賞作が決定しました。
■第69回H氏賞
水下暢也(みずした・のぶなり)さん
『忘失について』(思潮社)
〔選考委員〕 福田拓也さん(選考委員長)、池田瑛子さん、伊藤悠子さん、斎藤貢さん、高橋英司さん、谷元益男さん、野木京子さん
■第37回現代詩人賞
齋藤貢(さいとう・みつぐ)さん
『夕焼け売り』(思潮社)
〔選考委員〕 細野豊さん(選考委員長)、相沢正一郎さん、岡本勝人さん、小柳玲子さん、佐々木洋一さん、細見和之さん、若山紀子さん
H氏賞を受賞した水下暢也さんは、1984年生まれ。東京都町田市出身。北本高等学校卒業。受賞作『忘失について』は第一詩集。2018年に現代詩手帖賞を受賞。
現代詩人賞を受賞した齋藤貢さんは、1954年生まれ。福島県出身。茨城大学卒業。福島県現代詩人会・理事長。
水下暢也さんと齋藤貢さんには、それぞれ賞金50万円と記念品が贈られます。
H氏賞および現代詩人賞について
H氏賞は、実業家の平澤貞二郎さんが1950年、詩を目指す新人のために私財を投じて基金を創設し、日本現代詩人会が主催する文学賞です。新人の優れた現代詩の詩集に贈られます。
なお、賞の名称は、平澤さんが自身の名前を公表する事を固辞したことから、ご本人のイニシャルをとって定められたものです。
選考は毎春、前年1月1日から12月31日の間に発行された新人の全詩集が対象となり、日本現代詩人会会員投票と選考委員の推薦により決定されます。
また1983年には、中堅以上の詩人を対象とし、優れた日本の現代詩集に贈られる現代詩人賞が創設されました。
忘失について 開け放たれた戸の先で 夕映えに染まった浮き雲と 正午を迎える青空とを 半々に見ている (「怪の鳴る」) 「硬質な詩語たちの佇まいはあまりにも儚い。瞬きの美しさ。しかし奥深く響いては余韻を残し去る音楽のようだ」(広瀬大志)、「ささやかな日常を印画紙としているのではない。(…)夢が夢を見ているかのようなヴィジョンがここにはあるのだ」(岸田将幸)。記憶の底を照らし出す、29篇の明滅。カバー写真=著者 |
夕焼け売り こんなにも背後の夕焼けは美しいのに ここにも、そこにも/たおやかな夕日が地に照り映えているのに。 呪われた火で/今も、ふるさとは燃えている。 (「火について」) 「彼は不思議な虚心をもって人や物や出来事をあるがままに迎え入れる。その凝視の底からある沈黙のしみとおったことばが身を起こすのである」(粟津則雄)。 震災後の福島の悲惨を、詩人はしずかに見つめてきた。人としての自然を奪われた理不尽な現実に抗う、魂の声24篇。 装画=宮崎進 |
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