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【第71回H氏賞・第39回現代詩人賞】H氏賞に石松佳さん『針葉樹林』 現代詩人賞は鈴木ユリイカさん『サイードから風が吹いてくると』

第71回H氏賞および第39回現代詩人賞が決定!

第71回H氏賞および第39回現代詩人賞が決定!

日本現代詩人会は3月6日、新人の優れた詩集に贈る第71回H氏賞および、中堅以上の詩人の優れた詩集に贈る第39回現代詩人賞の受賞作を発表しました。

 

第71回H氏賞および第39回現代詩人賞が決定!

第71回H氏賞および第39回現代詩人賞の選考会が3月6日に開催され、次の通り受賞作が決定しました。

 
<第71回H氏賞 受賞作品>

石松佳(いしまつ・けい)さん
『針葉樹林』(思潮社)

〔選考委員〕 秋亜綺羅さん(選考委員長)、長田典子さん、高山利三郎さん、塚本敏雄さん、松尾真由美さん、森水陽一郎さん、和田まさ子さん

 
<第39回現代詩人賞 受賞作品>

鈴木ユリイカ(すずき・ゆりいか)さん
『サイードから風が吹いてくると』(書肆侃侃房)

〔選考委員〕 杉本真維子さん、鈴木良一さん、鈴村和成さん、新延拳さん、水島英己さん(選考委員長)、 三田洋さん、吉野令子さん

 
H氏賞を受賞した石松佳さんは、1984年生まれ。大分県出身。2019年に現代詩手帖賞を受賞

現代詩人賞を受賞した鈴木ユリイカさんは、1941年生まれ。岐阜県出身。明治大学文学部仏文科卒業。1984年にラ・メール新人賞、1986年『Mobile・愛』でH氏賞、1988年『海のヴァイオリンがきこえる』詩歌文学館賞を受賞。

石松佳さんと鈴木ユリイカさんには、それぞれ賞金50万円と記念品が贈られます。

 

H氏賞および現代詩人賞について

H氏賞は、実業家の平澤貞二郎さんが1950年、詩を目指す新人のために私財を投じて基金を創設し、日本現代詩人会が主催する文学賞です。新人の優れた現代詩の詩集に贈られます。

なお、賞の名称は、平澤さんが自身の名前を公表する事を固辞したことから、ご本人のイニシャルをとって定められたものです。

選考は毎春、前年1月1日から12月31日の間に発行された新人の全詩集が対象となり、日本現代詩人会会員投票と選考委員の推薦により決定されます。

 
また1983年には、中堅以上の詩人を対象とし、優れた日本の現代詩集に贈られる現代詩人賞が創設されました。

 

針葉樹林
石松 佳 (著)

第57回現代詩手帖賞 馬の背中は喪失的にうつくしい作文だった。沼に立ち尽くす馬は暗く燃え、やがて皮膚の上には雪が結晶する。 (「絵の中の美濃吉」) 「文字が透き通るだけではなく、書かれている内容も完璧に透き通ってしまう。読み取れるのは、詩の向こうから差し込んでくる陽射しのまぶしさだ」(松下育男)。「直喩と隠喩が分かちがたく用いられている。自在な喩と意味の接続に変化を加えることで、わたしたちの想像力を越えていく」(須永紀子)。清冽なる心音――。水面を吹き抜け、傘を開いてゆく言葉たち。装幀=佐野裕哉

サイードから風が吹いてくると (Suzuki Yuriika Selection 1)
鈴木ユリイカ (著)

1984年に現代詩ラ・メール新人賞で鮮烈デビューした鈴木ユリイカ。『MOBILE・愛』(第36回H氏賞)、『海のヴァイオリンがきこえる』(第3回詩歌文学館賞)、『ビルディングを運ぶ女たち』という3冊の詩集を上梓したあと、長く詩集の出版が待たれましたが、今回実に29年ぶりの新詩集が発刊されます。
長年にわたって戦争や平和、家族、社会、芸術についてなど、壮大なテーマに真摯に向き合ってきた鈴木ユリイカのその後をたどる3冊を、「Suzuki Yuriika Selection」として1か月に1冊刊行いたします。1冊目『サイードから風が吹いてくると』では、ヒロシマから物語を始めます。

 
HIROSHIMA MON AMOUR
見えない時間(とき)が泉のように湧き そして
世界の人びとにあの日のことを知ってもらいたいと思っている
これほど語らない これほど静かな これほど美しい
都市(まち)をわたしは見たことがなかった

 
わたしはこの世で生まれて見たものを書かなければならない。たとえ映像の中だけのものでも、たとえ触ることができなくても、このふたつの目が見たものは忘れることができない。数千回の春を迎えた都市よ。祈りの都市よ。わたしは虚無の下の虚無の下の虚無の下にわたしのマントから爆風に吹き飛ばされる種子を蒔く。またもや砕け散った巨大な穴に消えていった人々のまえで、熱風のなかで種子を蒔く。何かを信じるということがもはやできるだろうか? 「春」より

 
【関連】
日本現代詩人会

 


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