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【第70回読売文学賞】平野啓一郎さん、西成彦さん、渡辺京二さん、時里二郎さん、古井戸秀夫さん、桑原裕子さんが受賞

読売新聞社は2月2日、同社が主催する第70回(2018年度)読売文学賞の受賞作を発表しました。

 

第70回読売文学賞、6部門が決定!

第70回読売文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。

 
■小説賞
平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)さん
『ある男』(文藝春秋)

■随筆・紀行賞
西成彦(にし・まさひこ)さん
『外地巡礼 「越境的」日本語文学論』(みすず書房)

■評論・伝記賞
渡辺京二(わたなべ・きょうじ)さん
『バテレンの世紀』(新潮社)

■詩歌俳句賞
時里二郎(ときさと・じろう)さん
詩集『名井島』(思潮社)

■研究・翻訳賞
古井戸秀夫(ふるいど・ひでお)さん
『評伝 鶴屋南北』全2巻(白水社)

■戯曲・シナリオ賞
桑原裕子(くわばら・ゆうこ)さん
「荒れ野」(『悲劇喜劇』2018年5月号)

 
選考委員は、池澤夏樹さん(作家)、荻野アンナさん(作家、仏文学者)、川上弘美さん(作家)、川村湊さん(文芸評論家)、高橋睦郎さん(詩人)、辻原登さん(作家)、沼野充義さん(文芸評論家、ロシア・東欧文学者)、野田秀樹さん(劇作家)、松浦寿輝さん(詩人、作家、批評家)、渡辺保さん(演劇評論家)。

 
受賞者のプロフィールと選考委員の選評など詳細は、https://www.yomiuri.co.jp/culture/20190201-OYT8T50110/ をご覧ください。

なお、贈賞式は2月20日午後6時30分から、東京・内幸町の帝国ホテルにて開催されます。。

 

読売文学賞について

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年(昭和24年)に創設されました。「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門があり、前年の作品から最も優れた作品を選んで表彰します。
なお、「随筆・紀行」は第19回から加わり、第46回からは「戯曲」を「戯曲・シナリオ」部門に改めています。

毎年11月に既受賞者をはじめ、文芸界の関係者に文書で推薦を依頼し、12月に第1次選考会、1月に最終選考会を行い、2月に受賞作品を発表しています。

受賞者には正賞の硯(すずり)と副賞の200万円が贈られます。

 

ある男
愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。

人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

 
外地巡礼
「冷戦の影響がいまでも深く刻みこまれている〈東アジア〉において〈歴史〉も〈文学史〉も何もかもが流動的、そして進行形である。そして、それがまさに〈進行形〉であることを最もはっきりと示しているのが各〈語圏文学〉のまさに周縁に位置している〈マージナルな文学〉なのである。旧来の〈日本文学〉がどこまでも〈定住民の文学〉でしかありえなかったなかに、今日の〈日本語文学〉という広域的な人間の移動を背景にした〈移動民の文学〉を先取りするようなさまざまな様態がすでに刻みこまれていたということ(…)。リービ英雄や楊逸や温又柔らの華々しい登場は、けっして〈現代〉にのみ特徴的なものではない」

舞台は旧植民地・占領地のみならず北海道・沖縄から南北アメリカの移住地まで。「日本語使用者が非日本語との不断の接触・隣接関係を生きるなかから成立した文学」、すなわち「〈外地の日本語文学〉という問題を過去に封じこめることなく、今日的な問題としてあらためて引き受けること」。

ポーランドのイディッシュ文学、カリブ海のクレオール文学、英語で書くコンラッド、ドイツ語で書くカフカ、アルゼンチンのゴンブローヴィチ、日本のハーン…。マイノリティの言語・文学、あるいは異言語・異文化接触による文学的創造を一貫してたどりつづけてきた著者による「日本語文学史」書き換えの試み。

 
バテレンの世紀
日本とヨーロッパの「ファースト・コンタクト」。『逝きし世の面影』『黒船前夜』に続く待望の書、刊行! 大航海時代、日本もまたグローバルプレーヤーだった。世界が海で?がった世紀を、ポルトガル海上帝国の構築、イエズス会の積極的布教、信長・秀吉・家康や諸大名ら権力者の反応、個性的な宣教師、禁教、弾圧、島原の乱、鎖国というキリスト教伝来をめぐる出来事を軸に、壮大な文明史的視点で振り返る「渡辺史学」の到達点!

 
名井島
植物図鑑の雨の中を 男は朝狩から帰還する 猟の身繕いのまま弓と胡簗(やなぐい)を床に投げ出して 仕留めた獲物を閲覧室の机に置く (「朝狩」)
「見えない島の 鳴かない鳥の/ささ ここ きき しし け//みなほどかれてそこに ある」 (「鳥のかたこと 島のことかた」)。
用済みになった人形やアンドロイドが余生を送るサナトリウムの島。過去―未来をつらぬいて、精妙にスタイルを変容させながら、多層的に織り上げられた、言語の島をめぐる探求の地誌。 装幀=望月通陽

 
評伝 鶴屋南北(全2巻・分売不可)
《第一人者が半生を賭して著す空前絶後の大作歌舞伎を歌舞伎たらしめた狂言作者の生涯》

江戸歌舞伎の発展と成熟に多大な業績を残した狂言作者の生涯と作品を、第一人者が半生を賭し、同時代の人間模様と共に描く渾身の大作。

坪内逍遥が、日本のシェイクスピアに譬えた四世鶴屋南北、いわゆる大南北の生涯と作品を、同時代の役者や作者などの動向をふまえながら、第一人者が長年にわたる研究成果を基に書き下ろした畢生の大作。
中村座や市村座が立ち並ぶ芝居町の一角にある紺屋で産声をあげたとされる南北は作者部屋へと飛び込み、爾来75年に及ぶ生涯の50余年をその作者部屋で過ごしながら、押しも押されぬ狂言作者へと上り詰めた。
その自由自在な演劇構造──悪人が善人になり、善人は悪人に変わる。女だと思えば男、男が女にもなり、姫は遊女にもなった。歴史という名の時間も、人格も、男女の性までも自在に操られ、鮮やかな仕掛けで見物を引き込む筆づかいを見せた。
作品数は「九十数点に及ぶ」と著者は類推する。現在『鶴屋南北全集』には62作品が収録されているが、こぼれ落ちた写本も少なくはない。
一度は途絶えた南北再評価の動きは、大正の震災後、渥美清太郎を中心にするものだった。そしてそれ以降、日本の演劇は南北を求め続けている。五代目松本幸四郎をはじめとする役者を通して、南北の筆が探し求めて動いたものは何か。本書は南北を取り巻いて渦巻く「畸人」たちの群像ドラマでもある。

 
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