『82年生まれ、キム・ジヨン』著者が来日決定 芥川賞作家・川上未映子さんとのトークイベントも
筑摩書房より2018年12月に刊行されたチョ・ナムジュさん著『82年生まれ、キム・ジヨン』(訳:斎藤真理子さん)が、刊行後たちまち完売店が続出したことで重版を重ね、発売1カ月で累計発行部数は早くも5万部を突破しました(1月22日現在、5刷・累計発行部数5万7,000部)。
完売店続出、刊行1カ月で5万部突破! 話題の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』著者が緊急来日!
本書は韓国で絶大な共感から社会現象を巻き起こし100万部を突破、チョン・ユミさん、コン・ユさん共演で映画化も決定した異例の大ベストセラー小説の邦訳です。
紀伊國屋書店 新宿本店では発売から既に500冊以上を売り上げ、青山ブックセンター本店、丸善 丸の内本店など、各書店の文芸ランキング1位も獲得し始めています。TwitterなどSNS上では、本書を探し求める人たちの言葉と、入手できた人の感想が連日上がり、日本でも圧倒的な共感の波が生まれています。
この状況の中、『82年生まれ、キム・ジヨン』のアナザーストーリーとも言える表題作を収めた『ヒョンナムオッパへ――韓国フェミニズム小説集』(チョ・ナムジュさんほか著・斎藤真理子さん訳/白水社)の2月22日発売も決定し、著者・チョ・ナムジュさんの緊急来日(2019年2月19日)が決定しました。
来日にあたり、トークイベントの実施も決定。芥川賞作家の川上未映子さんを迎えて、女性作家の視点でこの二作について深く語り合います。
また、この二作を翻訳した斎藤真理子さん、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)の翻訳者の一人であるすんみさんに、韓国の社会状況について解説してもらいながら、作品をどのように読み、私たち自身の問題として考えていけばよいかを語り合います(同時通訳有り)。
来日トークイベント 概要
■イベント名
第291回新宿セミナー@Kinokuniya
『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著/斎藤真理子訳、筑摩書房)、『ヒョンナムオッパへ――韓国フェミニズム小説集』(チョ・ナムジュほか著/斎藤真理子訳、白水社)刊行・著者来日記念
特別対談 チョ・ナムジュ×川上未映子
■出演:チョ・ナムジュさん、川上未映子さん、斎藤真理子さん、すんみさん
■通訳:宣善花(ソン・ソナ)さん、延智美(ヨン・ジミ)さん
■日時:2019年2月19日(火)19:00開演(18:30開場)
■会場:紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4F)
■入場料:1,500円(税込)
■チケット取扱
◎キノチケットカウンター:新宿本店5F・営業時間10:00-18:30
◎キノチケオンライン(24時間受け付け):https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/ticket.html
■問い合わせ:紀伊國屋ホール 03-3354-0141(10:00-18:30)
■共催:紀伊國屋書店、筑摩書房、白水社、韓国文学翻訳院
出演者プロフィール
■チョ・ナムジュさん
1978年生まれ。ソウル出身。梨花女子大学社会学科を卒業。卒業後は放送作家として社会派番組のトップ「PD手帳」や「生放送・今日の朝」などで時事・教養プログラムを10年間担当。
2011年、長編小説『耳をすませば』で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞を受賞。フェミニズムをテーマにした短編小説集『ヒョンナムオッパへ』(タサンチェッパン)に「ヒョンナムオッパへ」が収録されている。
『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』(タサンチェッパン)刊行。
■川上未映子(かわかみ・みえこ)さん
1976年8月29日生まれ。大阪府出身。 2007年、デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が第137回芥川賞候補に。同年、第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞を受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞を受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞を受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞を受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞を受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。
「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。
他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹さんとの共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。『早稲田文学増刊 女性号』では責任編集を務めた。最新刊は短編集『ウィステリアと三人の女たち』。
■斎藤真理子(さいとう・まりこ)さん
翻訳家。訳書に、パク・ミンギュさん『カステラ』(共訳/クレイン)、『ピンポン』(白水社)、チョ・セヒさん『こびとが打ち上げた小さなボール』(河出書房新社)、ファン・ジョンウンさん『誰でもない』(晶文社)、ハン・ガンさん『ギリシャ語の時間』(晶文社)、チョン・ミョングァンさん『鯨』(晶文社)、チョン・スチャンさん『羞恥』(みすず書房)、チョン・セランさん『フィフティ・ピープル』(亜紀書房)などがある。
『カステラ』で第一回日本翻訳大賞を受賞した。
■すんみさん
翻訳家。早稲田大学大学院文学研究科修了。訳書にキム・グミ『あまりにも真昼の恋愛』(晶文社)、共訳書にリュ・ジョンフンさん他『北朝鮮 おどろきの大転換』(河出書房新社)、イ・ミンギョンさん『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)など。
『82年生まれ、キム・ジヨン』は、もはや<事件>!ひとつの小説が韓国を揺るがす大事態に
『82年生まれ、キム・ジヨン』は、韓国で2016年10月に初版2,000部で刊行されました。
キム・ジヨンさん(韓国における82年生まれに最も多い名前)の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生を克明に回顧していき、女性の人生に当たり前のようにひそむ困難や差別が淡々と描かれています。そして彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始め――。彼女を抑圧しつづけ、ついには精神を崩壊させた社会の構造は、日本に生きる私たちも当事者性を感じる部分が多々盛り込まれています。
韓国ではその共感性の高さから、国内だけで100万部突破という異例の大ベストセラーとなりました。
2017年3月8日の世界女性の日に、共に民主党のクム・テソプ議員がFacebookを通じて同小説300冊を購入してプレゼントした事実が伝えられたのに続き、正義党のノ・フェチャン院内代表が文在寅大統領の就任記念に「82年生まれ、キム・ジヨンを抱きしめてください」という言葉ととともにこの本をプレゼントしたことで本書のブームに火が付き、国全体に及ぶ社会現象となりました。
K-POPアイドルなど影響力のある芸能人が度々話題にしたことでも注目を集め、ガールズユニット、Red Velvetのアイリーンさんが本書を読んだと発言したところ、一部男性ファンが「アイリーンがフェミニスト宣言をした」として一斉に反発、アイリーンさんの写真やグッズを破損する様子を動画投稿サイトに投稿するという事態も起きました。
アイリーンさんだけでなく、少女時代のスヨンさんやBTSのRMさんも『82年生まれ、キム・ジヨン』に言及しています。2018年1月、少女時代・スヨンさんはYouTubeを介して放送されたリアリティ番組『90年生まれチェ・スヨン』で「読んだ後、何でもないと思っていたことが思い浮かんだ。女性という理由で受けてきた不平等なことが思い出され、急襲を受けた気分だった」と、BTS・RMさんもNAVERのVライブ生放送を通じて「示唆するところが格別で、印象深かった」と本書にコメントを寄せました。
この反響からついに映画化も決定。主人公キム・ジヨンを演じるチョン・ユミさんとその夫役・チョン・デヒョンを演じるコン・ユさんは『トガニ 幼き瞳の告発』『新感染ファイナル・エクスプレス』に続き、3作目の共演となります。キム・ドヨン監督が手がけ、クランクインは2019年上半期に予定されています。
既に台湾でもベストセラーとなり、ベトナム、英国、イタリア、フランス、スペインなど16ヵ国で翻訳も決定しています。
著者からのメッセージ
「日本の読者の皆さんへ
この小説を書きはじめた2015年、韓国では多くの事件がありました。道徳観念のない女性たちが、MERS(中東呼吸器症候群)にかかっているのに隔離を拒否したという噂が流れました。もちろん事実ではありません。女性をばかにする暴力的な言葉を使ったお笑い芸人が番組を降板しました。母親を虫にたとえる「ママ虫」という造語が生まれました。韓国最大のポルノサイトにおいて、盗撮やレイプの共謀などの話題が公然とやりとりされていたことが明らかになりました。
私は、誰も女性だからという理由で卑下や暴力の対象になってはならないと考えてきました。女性たちの人生が歪んだ形で陳列され、好き勝手に消費されていると感じました。女として生きること。それにともなう挫折、疲労、恐怖感。とても平凡でよくあることだけれど、本来は、それらを当然のことのように受け入れてしまってはいけないのです。そういう物語を書きたいと思い、そこから『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説は始まりました。
この小説はありがたいことに韓国で多くの読者に出会うことができました。そして、読者イベントやお手紙、ブックレビューを通して読者自身の話を聞かせてもらうこともできました。キム・ジヨン氏より年上の女性たちも、若い女性たちも、この小説はまるで自分の話のようだと言っています。共通する経験、そのときには気づかなかった感情、似ているようで違っているそれぞれの選択……おかげで女性たちの多様な物語が世の中に現れ、大きな意味を持って受け入れられました。
女性たちをとりまく世界は変わりつつあります。Me too運動はハーヴェイ・ワインスタインをはじめ、性犯罪を犯した政界・文化界の大物たちを追い出しました。アイルランドは国民投票によって、妊娠十二週までは制限なく妊娠中絶を許容しました。賃金公開制度を実施する国家が増えています。韓国の女性たちもまた、メディアによる性の商品化を指弾し、家父長的な慣習に叛旗を翻し、自分が経験した性暴力を暴露して厳重な処罰を要求しています。
日本の読者の方々にとっても『82年生まれ、キム・ジヨン』が、自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれればと願っています。あなたの声を待っています。
2018年秋」
訳者あとがきより
「『82年生まれ、キム・ジヨン』は変わった小説だ。一人の患者のカルテという形で展開された、一冊まるごと問題提起の書である。カルテではあるが、処方箋はない。そのことがかえって、読者に強く思考を促す。 小説らしくない小説だともいえる。文芸とジャーナリズムの両方に足をつけている点が特徴だ。きわめてリーダブルな文体、等身大のヒロイン、ごく身近なエピソード。統計数値や歴史的背景の説明が挿入されて副読本のようでもある。」
著名人からのコメント
「次から次に積み上げられる不条理を前に、思わずもっと楽しんで生きようよ、と言ってしまいたくなる人もいるだろう。だから私はあえて言いたい。「これが私たちの日常だけど、なにか?」、と。」
――鳥飼茜さん
「この本のノンフィクション的書法での女性差別への抗議は一歩先に行ってる。良きベストセラーが国を動かすケースだ。」
――いとうせいこうさん(Twitterより)
「女であるということ。たったそれだけで、そのせいで、被らなければならなかった無数の悲しみ、それらを耐えなければと繰り返しこらえ続けた狂おしさが……実は、自分だけのものではなかった、と思えたなら、それだけでもたぶん救いになるんだ。救われるべき人たちに届きますように。」
――温又柔さん
「小説は語れなかった名もなき感情に言葉を与えることができる。だから、韓国中の女性たちがこの本に熱狂したのだ。自分の中の言葉にならなかった、声に出せなかった感情が、ここにすべて書かれているから」
――星野智幸さん(「ちくま」2019年1月号書評より)
ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!韓国で100万部突破!異例の大ベストセラー小説、ついに邦訳刊行。
解説:伊東順子
装丁:名久井直子
装画:榎本マリコ
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