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『麒麟児』刊行記念!冲方丁さんと“知の巨人”出口治明さんが初対談 「現代の我々が引き継ぐべき知恵がここにある」

『麒麟児』対談 撮影/ホンゴユウジ

『麒麟児』対談 撮影/ホンゴユウジ

KADOKAWAは、新作『麒麟児』の刊行を記念し、著者・冲方丁さんと、ライフネット生命の創業者でもある立命館アジア太平洋大(APU)学長の出口治明さんによる対談を書籍PR誌『本の旅人』2019年1月号(2018年12月27日発行)および文芸情報サイト「カドブン」(https://kadobun.jp/talks/89/0d924988)にて発表しました。

 

出口治明さんと冲方丁さんの『麒麟児』刊行記念対談が「本の旅人」「カドブン」に掲載

半藤一利さんとの共著『明治維新とは何だったのか 世界史から考える』(祥伝社)や『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇』(文藝春秋)をはじめ歴史に関する数々の著作を持つ出口治明さんと、『天地明察』『光圀伝』『はなとゆめ』以来5年ぶりの歴史長編を書き上げた冲方丁さん。

意外にも初対談というお二人が、「無血開城」が達成した意味、勝海舟の人物像などについて語ります。

 
【対談の冒頭部分(抜粋)】 ※敬称略

◆額縁は「運命の二日間」 

冲方:『麒麟児』では勝海舟と西郷隆盛の会談を柱に、近代日本の行く末を決定づけたと言っても過言ではない「江戸無血開城」に至った経緯を書きました。無血開城を取り上げたのは、個人的に好きなエピソードであるのと同時に、現代の我々が引き継ぐべき知恵がここにあると思ったからです。

出口:勝と西郷が対峙(たいじ)した二日間に焦点を定めて、物語をぎゅっと凝縮されたのはさすがの慧眼(けいがん)で、素晴らしいですね。実は、本書を拝読して、とあるアーティストの作品がふと脳裏を過(よぎ)りました。アニッシュ・カプーアというイングランドを代表する現代芸術家の「Sky Mirror」というオブジェです。これは直径五メートルほどのステンレス製の円形鏡で、それが公園にぽつんと置かれているのですが、上を向いているので鏡面にはずっと空が映っています。僕はこの鏡は空を切り取る額縁だと解釈したのです。ただ空を眺めるだけでは、「広いな、きれいだな」程度のぼんやりとした思いしか湧いてきませんが、五メートルの円形に区切られた空を見ていると、雲の流れや明暗の変化など、空のあらゆる事象に気づくことができる。冲方さんが、幕末の二日間に限定した物語を書かれたのは、これと同じ効果を狙ってのことだと推察しました。

冲方:うれしいご指摘です。おっしゃる通り、幕末は、その全てを書こうとすると、ただただ混乱した物語を提供する結果になりかねません。

出口:そうでしょうね。山ほどエピソードがある中で、あえて無血開城の前後に焦点を絞ることで二人の人物像がかえって鮮明に浮かびあがることを考えられたのではないか、と読みながら思っていました。

 
この続きは、『本の旅人』や「カドブン」(https://kadobun.jp/talks/89/0d924988)でお楽しみください。

◆対談 取材・文:門賀美央子さん/撮影:ホンゴユウジさん

★「カドブン」(https://kadobun.jp/)では『麒麟児』についてのインタビューや試し読みも掲載中。
◎前編:https://kadobun.jp/interview/144/0f46d8c3
◎後編:https://kadobun.jp/interview/145/20be3ac3

★試し読み第1回:https://kadobun.jp/readings/530/cec6f187

『麒麟児』連載時第1回扉絵 (C)獅子猿

『麒麟児』連載時第1回扉絵 (C)獅子猿

 

対談者プロフィール

■出口治明(でぐち・はるあき)さん

1948年生まれ。三重県出身。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2008年に同社を退社。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務め、還暦でライフネット生命を開業。社長・会長を10年務める。2018年より立命館アジア太平洋大学(APU)学長を務める。

著書に『全世界史(上下)』『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇』、半藤一利さんとの共著『明治維新とは何だったのか─世界史から考える』など多数。

 
■冲方丁(うぶかた・とう)さん

1977年生まれ。岐阜県出身。1996年『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。

2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞。2009年に刊行した『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞など数々の文学賞を受賞。2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。

他の著作に、『はなとゆめ』『マルドゥック・アノニマス』『十二人の死にたい子どもたち』『テスタメントシュピーゲル』など多数。
『十二人の死にたい子どもたち』は実写映画化され、2019年1月25日に公開される

★著者公式サイト:http://towubukata.blogspot.com/

 

『麒麟児』について

『麒麟児』は、『天地明察』『光圀伝』『はなとゆめ』以来、冲方丁さんにとって5年ぶりの歴史長編小説です。

幕末最大の転換点「江戸無血開城」を命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”、勝海舟と西郷隆盛の覚悟と決断とは――。
今回の試し読みで『麒麟児』の世界観に触れてみてはいかがでしょうか。

 
【あらすじ】

「ここで、この国の内戦に終止符を打たねば、皆殺しだ。国の終わりだ」

慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いで幕府軍を打ち破った官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に攻め入らんとしていた。軍事取扱の勝海舟は徳川家を守るべく、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。

和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。二人は敵中を突破して西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰った。条件を呑むのか、蹴るのか。ようやく出た徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。
三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。

幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。
命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。

 

 
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