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『知略を養う 戦争と外交の世界』外交の肝は“ケンカしたあと”の対処法 教養の達人・出口治明さんが世界を動かした交渉の5000年史を徹底解説!

出口治明さん著『知略を養う 戦争と外交の世界史』

出口治明さん著『知略を養う 戦争と外交の世界史』

出口治明さん著『知略を養う 戦争と外交の世界史』が、かんき出版より刊行されました。

 

交易、戦争、そして条約

人類の歴史は、争いの歴史と言っても過言ではありません。

社会的な動物である人間は、他者との交易を通じて生きるために必要な物質を手に入れます。しかし、その交易がうまくいかない場合、それは争いに発展します。個人間であればただの喧嘩にすぎませんが、集団、さらには国家間の争いは大規模な戦争へと発展し、互いに殺し合う結果となります。

人類は、その戦争を回避するため、また、戦争になってしまった場合は解決のための交渉を重ねてきました。

 
本書は、その交渉に注目し、当事者たちが、どう考え、何に悩み、1つの選択をしたのか、その経緯を詳しく検証しています。

著者は、元ライフネット生命保険株式会社の代表取締役会長であり、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さん。1200以上もの都市を旅し、1万冊以上の本を読破。特に歴史への造詣が深く、数々の著書を執筆しています。

今回は出口さんが、歴史上の有名な戦争や条約をピックアップし、当事者たちがどのように“ケンカの後始末”をしてきたのか、興味深く分析します。

 
歴史を「戦争と条約」という切り口で読み解くと、新しい見方が現れます。歴史から学ぶことで、人生を成功に導く交渉術が身につく一冊です。

 

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

太古の昔から、生活を豊かにすることの最も重要で基本的な条件、それは交易だったといっても決して過言ではないと思います。ところが交易がうまくいかない場合もあります。

たとえば交易を行う両者のいずれかが、自分だけ得することに固執したり、相手の物品を奪い取ったり、粗悪品を相手に掴ませたりすることです。

 
交易がうまくいかなければ、個人の場合は殴り合いとなり、集団や国同士の場合は戦争になる。すなわち交易の歴史の隣に戦争の歴史があり、戦争を止めるためや防ぐために外交がある。その外交の重要な駆引きや取り決めを文書の形にして残したものが、条約です。

それゆえに条約の歴史には必ずといってよいほど戦争そのものや戦争の影がある、と考えていいのではないでしょうか。

また、私たちが働いて生きていく日々の中で繰り返される、喧嘩や仲直り、妥協と打算、取引きと駆引き、握手と裏切り、それらの多くも、自分や自分の所属する集団や組織の利益を優先することに端を発している場合がほとんどです。

 
<「まえがき」より>
「世界史の中で結ばれた条約や勃発してしまった戦争を振り返って検証してみることは、現代を生き抜くことの知恵につながるのではないか。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とビスマルクは言いました。自分の経験だけで考えずに、戦争と条約締結の裏側で展開された人間模様を学ぶことが、人生の急場を救ってくれるかもしれない、そんな思いからこの本を書きました。
本書では、世界を動かしたり支えてきた、代表的な条約について考えていきたいと思います。」

 

歴史的に有名な事件の内幕を現代の視点で考える

たとえば、宋の三代真宗の時代の家臣のNO.1で宰相の地位にあった寇準(こうじゅん)と、強力な軍事力でモンゴル高原を支配していたキタイが結んだ和約、「澶淵の盟(せんえんのめい)」。

宋の繁栄は、この澶淵の盟に代表されるモンゴル高原の遊牧民と結んだ平和条約が守られ続けたことが大きな原因です。戦争がないために交易が飛躍的に拡大して、宋は豊かになりました。

しかし、当時このシステムは、「お金で平和を贖う」、卑屈な方法だという見方も少なくありませんでした。ただただお金を貢いで平和を贖うのであれば、いかにも臆病なだけの、無能な政策に思われます。

ところが近年になって、澶淵システムの評価は変わりつつあります。それは現代でいえばODA(Offi cial Development Assistance 政府開発援助)に匹敵するのではないか、という見方が有力になってきたからです。

たとえば発展途上国に日本が経済援助を行うと、その国はダム建設や水道施設などの整備を始めようとする。多くの場合発注先は日本です。発展途上国は国のインフラを豊かにし、日本も援助したお金が工費として戻ってくる。

そのようなウィン・ウィンの関係を目指すのがODAです。仕掛人の寇準は臆病どころではなく、冷静でしたたかな政治家だった、という評価が一般的になりつつあります。

 

本書の目次

第一章:平和条約の貴重な先例

第二章:三〇年戦争とヴェストファーレン条約

第三章:あり得ないような同盟の話

第四章:The Civil War アメリカの将来を決めるために避けられなかった戦争

第五章:中国が初めて外国と結んだ条約、ネルチンスク条約

第六章:ピョートル一世の強運がロシアを北の大国に押し上げたニスタット条約

第七章:世界史を変える分水嶺となった二つの戦争と条約

第八章:第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約と第二次世界大戦時の大西洋憲章

おわりに

参考文献

 

出口治明さん プロフィール

著者の出口治明(でぐち・はるあき)さんは、1948年、三重県美杉村生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)学長。

京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。
同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命保険株式会社に社名を変更。2013年、代表取締役会長に就任。2018年より現職。

訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊を超える。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義で歴史の講義を受け持った。

おもな著書に、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『仕事に効く 教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『全世界史(上、下)』(新潮社)、『人類5000年史I: 紀元前の世界』(筑摩書房)、『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇』 (文藝春秋) など多数。

 

知略を養う 戦争と外交の世界史
抗争、分裂、外圧・・・
先人たちは、人生の難題をどう解決したのか?

人類の歴史は戦争の歴史と言っても過言ではありません。
この戦争を止めるため、そして、防ぐために外交という手段を駆使してきました。

私たちが働いて生きていく日々で繰り返される、「ケンカや仲直り」「妥協と打算」「取引と駆け引き」「握手と裏切り」…
こうした人生の難題も、先人たちが積み上げてきた戦争と外交の歴史を紐解くことで、解決の糸口を見つけることができるかもしれません。

 


コメント

  • 交易、戦争、そして条約 のところで

    「1200国以上もの世界を旅し、」は、「1200以上もの都市を旅し」ですね(*^-^*)

  • ご指摘ありがとうございます。
    修正いたしました<(_ _)>。

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