『ヒストリア』 「誰か戦争を止めて」第二次世界大戦後、沖縄からボリビアへ・・・南米を単身生き抜いた女性の波乱の一代記
KADOKAWAより、池上永一さんの4年ぶりの長編小説『ヒストリア』が刊行されました。沖縄復帰45年、チェ・ゲバラ没後50年の今年におすすめの一冊です。
構想20年、執筆4年、池上永一さんの集大成作品
構想20年、執筆4年、僕の集大成です。
作家として、この作品だけは絶対に書かなければならないと思っていました。
――池上永一さん
池上永一さんは『レキオス』や『シャングリ・ラ』といった壮大なスケールのSF作品、『テンペスト』『黙示録』など沖縄を舞台にした歴史時代作品で注目を集めてきました。本作は、『黙示録』から4年ぶりの新刊、そして、ボリビアへ移民した主人公の目を通し、初めて沖縄戦を描いたことでも話題の作品です。
戦前は日本と清国、そして戦後は日本とアメリカに挟まれ、大国に揺り動かされてきた沖縄。その沖縄出身者である著者だからこそ、ボリビアに移民し、浮遊してしまった人々のアイデンティティはどこにあるのか、そして戦争とは何かを、エンターテインメント作品を通して現代人に問いかけます。
いやはや、一気読みの面白さだ。
激動の時代を逞しく生きたヒロインの波瀾の人生が、かくて彫り深く描かれていくのだ
――北上次郎さん(『本の旅人』9月号より)
『ヒストリア』あらすじ
第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉(ちばな・れん)。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。
移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう……。果たして煉の魂の行方は?
<豆知識>
第二次世界大戦後、経済難、食糧難に対し日本政府は南米への移民政策を実施した。特に沖縄人に奨励されたのはボリビア。だが沖縄から移住した人々は、現地に着いて愕然とする。まったくの原生林を与えられ、そこを切り拓けというのだ。だが移民一世たちは大河の氾濫、疫病に苦しめられながら、荒野を切り拓き遂に「コロニア・オキナワ」をつくりあげる。
池上永一さん プロフィール
著者の池上永一さんは、1970年生まれ。沖縄県石垣市出身。1994年『バガージマスパナス わが島のはなし』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。
1998年、『風車祭(カジマヤー)』が直木賞候補となり話題となる。以後、『レキオス』や『シャングリ・ラ』などの壮大なスケールのSF作品、『テンペスト』『黙示録』などの沖縄を舞台にした歴史時代作品などで注目を集める。南米文学に影響を受け、沖縄との共通点を見出してマジック・リアリズムを作品に取り入れている。
著書に、『トロイメライ』『夏化粧』『統ばる島』など多数。