気になる本、おススメの本を紹介

B O O K P O O H

『悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿』読売新聞の名物連載「人生案内」から日本の今が見えてくる

『悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿』読売新聞の名物連載「人生案内」から日本の今が見えてくる

『悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿』読売新聞の名物連載「人生案内」から日本の今が見えてくる

ディスカヴァー・トゥエンティワンより、山田昌弘さん著『悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿』が刊行されました。

 

読売新聞で100年以上同じ形式で継続されている「人生案内」

読売新聞の名物連載「人生案内」をご存知でしょうか。すでに100年を超える歴史があり、一般読者から寄せられた悩みに識者が誌上で応える形式は連載当初からまったく変わっていません。

実は、この「人生案内」は多くの社会学者の研究対象とされていて論文も多数存在しています。100年以上同じ形式で継続されているため、極めて貴重な資料となり得るのです。

本書の著者・山田昌弘さんは、現代社会の深層を分析し、「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」といった概念を生みだした気鋭の社会学者です。2009年からは「人生案内」の回答者のひとりとして現在も活動しています。社会学者として、回答者として何を感じ取っているのでしょうか。

 

価値観の多様化が進んでいる

相談:50代の女性。夫が女装していることに気づきショックを受けた。成人になった子どもも知っている。これから老後を一緒に過ごすのかと思うと不安だ。(要約)

回答:夫が誰かに迷惑をかけているわけではありませんが、あなたがどうしても受け入れられないのなら別々に生活するしかありません。多少なりとも我慢できるようなら、変な趣味を持った夫としてそっとしておくのが良策です。(要約)

社会学者にとっては男性の女装趣味という性向はけして珍しいことではありません。要するに、昔からよくあることなのです。ただ、この相談で驚かされたのは、奥さんからの相談であるという点、そして、子どもまで知っているという点です。そこから、夫自身はバレても構わないと思っていることが推測できるのです。つまり、本人は女装趣味であることを悩んでいるわけではないのです。以前は、このようなことは誰にも言えない悩みとして本人から相談されるものでした。仮に、家族がそのことに気づいたとしても、ひた隠しにして墓場まで持っていく類の出来事だったはずです。いわゆる「あたりまえ」というスタンダードが通用しなくなり、様々な価値観が存在する時代になったことを実感します。

 

恋愛しない若者と恋愛に走る高齢者

昨今盛り上がっているのは高齢者の恋愛相談です。背景には健康寿命の延び、未婚率や離婚率、配偶者との死別の増加などがあげられます。そして、不本意な結婚生活をおくったという理由から、恋愛をやり直したいという欲求を持つ人がかなりの割合で存在しています。

対して若者からは恋愛に積極的になれないという相談が増えています。厳密に言えば恋愛に積極的な若者もいるのですが、恋愛しない若者はまったくと言っていいほど縁がないという恋愛格差が生まれているのです。恋人がほしいと思わない理由の1位が「恋愛が面倒くさい」という調査結果があります。そして、このような若者が男女ともに増えているのが現状です。

 

価値観の多様化に対応できない日本社会

日本の社会は既存モデルの人生を歩んでいる人に都合よくできています。ところが「人生案内」から垣間見られるように価値観の多様化は着実に進んでおり、その結果、既存モデルからこぼれ落ちる人々が増えてきています。

例えば、日本では終身雇用や専業主婦といったモデルに合わせて制度、慣行、意識が形成されてきましたが、昨今、非正規雇用や保育園不足といった問題が指摘されています。これはモデルからこぼれ落ちる人が多数派になってきたことを示しています。いまの日本はレールから外れた人にとって非常に生きづらい社会になっているのです。

また、価値観の多様化が進む一方で、日本には昔から「世間体」という圧力が存在します。この圧力がこのところますます過剰になっているのを感じます。

例えば、個人や企業の活動がほんの一部のクレームによって中止や謝罪に追い込まれたという話をよく耳にします。様々なリスクを恐れて自主規制してしまう風潮も顕著になりました。つまり、99人がOKでも1人がNOだと物事が成立しない時代なのです。

「人生案内」から見えてくるのは、多様な価値観と世間体のはざまで苦しんでいる人がたくさんいるという点です。そこには縮こまっていく日本社会の実像が浮かび上がってきます。

 

本書で紹介されている相談

 
・父の死を夫がSNSに投稿 (40代女性)
・夫の女装趣味が発覚(50代女性)
・交際相手が心変わり、苦しい(60代女性)
・70歳男性 年下の彼に未練(70代男性)
・性的少数者 就活どう臨む(20代男性)
・妻が不倫 謝罪されたが苦しい(50代男性)
・失業の30代息子 職探し二年(60代女性)
・声優の夢 限界感じる(10代男性)…他多数

 

山田昌弘さん プロフィール

著者の山田昌弘(やまだ・まさひろ)さんは、1957年東京生まれ。中央大学文学部教授。1981年東京大学文学部卒。1986年同大学院社会学研究科博士課程退学。専門は家族社会学。親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。

『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)、『希望格差社会』(ちくま文庫)など、次々に話題書を執筆。2006年「格差社会」で流行語大賞トップ10受賞。その後、共著の『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)がベストセラーとなり、婚活ブームの火付け役ともなった。近著に『モテる構造』(ちくま新書)、『結婚クライシス』(東京書籍)等がある。2009年から読売新聞の名物連載「人生案内」の回答者をつとめる。

 

悩める日本人 「人生案内」に見る現代社会の姿 (ディスカヴァー携書)
白熱する高齢者の性・恋愛
激増! 夫の知らない妻の不倫
不安な中高年パラサイト・シングル
LGBTの就活
高学歴ワーキングプア
夢見る前にあきらめる若者…etc.

社会学者山田昌弘氏が100年以上つづく読売新聞大人気連載「人生案内」から読み解くモデルなき混沌の時代を生き抜く秘訣とは!?
ワイドナショーほかメディアでも話題沸騰!
・父の死を夫がSNSに投稿 愛が冷めました・・・(40代女性)

現代社会を動かす潮流の深層を鋭く分析し、「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」等の時代を表す概念を生み出してきた社会学者山田昌弘氏の考察によって、現代社会の実像(リアル)、解決策が見えてくる!

 
【出版社からのコメント】
社会学の永遠のテーマの一つは、「価値観が異なる人とどう付き合っていくのか」というものです。 近代社会は、さまざまな考えを持つ人が集まっている社会です。 ですから、価値観がますます多様化していて、どれが正しい・正しくないと決められない時代になっている今の社会において、極めて重要なテーマとなります。 価値観が多様化している要因は複数ありますが、たとえばグローバル化はわかりやすい例でしょう。世界がグローバル化する中で、国や地域によってさまざまな文化や価値観の中で育ってきた人たちと出会います。 そして、彼らと一緒に生きていく必要があるということです。これは、多くの方にとって、想像に難くないことではないでしょうか。 価値観というものは、行動に現れ、人間関係に影響をおよぼすものです。 特に家族、恋愛、セクシュアリティ(性的指向)に関していえば、価値観は一人ひとり違うものであり、どれが正しいと決められない領域です。 非常にプライベートであるからこそ、違いが問題になりやすいという側面も持ち合わせています。そのうえ、人の感情や自尊心に関わることでもあります。 (略) 本書では、若年層~高齢者における恋愛・セクシュアリティから仕事・生き方にまつわる多様な相談事例をもとに、 2010年代に入り、ますます多様化を極める価値観を、そして一方で硬直化して現状と合わなくなっている社会制度や意識のあり方を浮かび上がらせていきたいと考えています。 本書をお読みの皆さんも、他人事でありながらいつ自分事となるかもわからない相談を読みながら、一緒に考察を深めていく機会となれば幸いです。 (はじめにより抜粋)

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です