故・藤沢周平さんの未発表小説の草稿が見つかる 『オール読物』に一部掲載
1月21日発売の文芸誌『オール讀物 2017年 02 月号』(文藝春秋)に、直木賞作家で1997年に亡くなった藤沢周平さんの未発表小説の一部が掲載されています。
今回見つかったのは、藤沢周平さんの未発表小説『遥かなる信濃』の草稿で、俳人の小林一茶を題材にしたもの。
スポーツニッポン新聞社の報道によれば、「400字詰め原稿用紙74枚分の短編。同時に明らかになった創作ノートの記述などから、書かれたのはデビューした71年ごろとみられる。78年刊行の評伝小説『一茶』につながる作品で、藤沢さんの創作手法を知る上でも貴重な資料といえそうだ」とのことです。
21日発売の『オール読物』2月号で「草稿の一部が公開されるとともに、元担当編集者の鈴木文彦さんが内容を紹介、分析。しかし草稿のテキスト全文は、シーンが一部飛んでいたり、別の文案がたびたび書き込まれていたりすることから発表しない」(スポーツニッポン)そうです。
『遥かなる信濃』の内容については、「俳人夏目成美の別邸で起きた盗難事件を題材に、嫌疑を掛けられた一茶の屈辱やその後の日々を描く。40代後半の一茶が登場しているが、実在しない人物も造形されており、フィクション性の高い作品だ。藤沢さんの自作の句を一茶が評価する場面もあり、藤沢さんの遊び心が感じられる」(同)とのこと。
今回の発見は、藤沢周平さんの長女が、昨年10月ごろ、藤沢周平さんの出身地の山形県鶴岡市立藤沢周平記念館の企画展に出す資料の整理を行ったことによってもたらされました。
文壇デビュー前に執筆した初期作品の草稿約700枚を見つけたそうで、同館で一部を公開しています。
また、日本経済新聞の報道では、
「草稿の中には、藤沢さんが専門新聞社に勤めながら65~66年にオール読物新人賞に投稿した作品で、未発表のため題名しか知られていなかった「蒿里曲」と「赤い月」の2作品もあった。
「蒿里曲」は史実を基にしたあだ討ち物で、73年発表の小説「又蔵の火」の原型とみられる。「赤い月」は、流刑地から故郷へ戻った男を近所の女が出迎える冒頭の描写から、書き出しが似た短編「割れた月」の草稿と推測される。欄外に吹き出しで文章を付け足したり、二重線を引いて書き直したりした跡から、納得するまで表現を考え抜いた様子が垣間見える。」と伝えるとともに、
「73年の直木賞受賞作「暗殺の年輪」の草稿も見つかった。「眼」「襲撃」「刺客」など題名の候補が6つ用意され、主人公の名前も複数考えるなど、作品への情熱がうかがえる。」としています。
なお、『オール読物』2月号では、「没後二十年 総力特集 藤沢周平の美学」として、
・阿川佐和子×遠藤展子 “作家の娘”に生まれて
・藤沢周平への旅路──娘・展子と家族たち 後藤正治
・未公開新資料発掘! 「一茶」映画化 創作のたくらみ 鈴木文彦
・ドラマ『立花登 青春手控え』主演 溝端淳平 青春時代劇のヒーローに挑んで
・グラビア 蓬田やすひろが描く「藤沢周平の世界」
・作家の本棚 あさのあつこ 今、読みたい藤沢作品10冊
といった特集を組んでいます。
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