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文学には「住所」がある――三島由紀夫が愛した店、作品の舞台、執筆場、旅行先のガイドブック『三島由紀夫 街歩き手帖』が刊行

来年1月の生誕100年を前に、三島由紀夫が愛した店や旅行先、執筆場所や作品の舞台などを紹介するガイドブック『三島由紀夫 街歩き手帖』が太田出版より刊行されました。著者は三島作品の論考も手掛ける横山茂彦さん。また、本書では三島による最後の作品『豊饒の海』の謎解きも試みています。

 

三島作品の舞台や執筆場となった、数々の店や場所、風景――「行って、馳せる」読書を愉しむための新ガイドブック

本書は3部で構成。第一部は「三島由紀夫が愛した店」と題して、ランボオ(神保町)、東京會舘(丸の内)、末げん(新橋)、福田屋(千代田区紀尾井町)、弁天亭(現森本、渋谷区道玄坂)などなど、都内に実在する・実在した店を紹介しています。

第二部では、新婚旅行など全国での旅先の宿と店を紹介。掲載店は、万平ホテル メインダイニングルーム(軽井沢)、Poppy(横浜市中区)、強羅環翠楼(箱根町強羅)、明治記念館(千代田区内幸町)、柊家旅館(麩屋町)ほか多数。

第三部では、三島による大作、最後の作品となった『豊饒の海』の謎や、舞台となった場所、作中人物のモデルにも迫っています。

このほか、気になるコラムも多数収録。収録コラムは以下の通りです。

三島由紀夫とお酒/三島由紀夫のスィーツ/短編小説『橋づくし』の風景/銀座と三島由紀夫/三島と船舶/怪奇小説『月澹荘綺譚』について/三島文学における乗馬/自決三部作/『金閣寺』のモデルと風景

 
本書に掲載されているお店は一部休業・閉店もありますが、今もなお営業中の老舗も多数。三島作品に想いを馳せながら、ゆかりある場所を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

『三島由紀夫 街歩き手帖』各章トビラより

 
●第一部 三島由紀夫が愛した店

三島由紀夫は清水基吉(俳人)への書簡に「僕は大食ひではないが、美食家であることは自認しています」と記している。このとき弱冠二十二歳の新進作家の言は、若々しく自信にあふれている。三島の三十歳前後に食事をともにすることが多かった豊田貞子は、作家の食べっぷりをこう証言している。
「食が細かったなんて書いてあるものがあるんですか? あら、わたくしの知っている頃の公威さんは違いますよ、どちらかと云えば健啖家でした」(『直面』)。
若き三島のような旺盛な食欲こそ、かの時代を輝かせたのかもしれない。昭和二〇年に二十歳だった三島は、アメリカの食と飲酒文化を時代の最先端で受容していく。晩年の和食への覚醒にいたる変遷は、そのまま作品の成熟に結実する。第一部では、作家の日記や書簡にある首都圏の喫茶店、レストラン、クラブ、ホテルなどから現存するもの、作家活動と作品との関連性の高いものに絞って掲載した。

掲載スポットの一例……ランボオ(神保町)、東京會舘(丸の内)、末げん(新橋)、福田屋(千代田区紀尾井町)、弁天亭(現森本、渋谷区道玄坂)ほか

 
●第二部 旅先の宿と店

三島由紀夫ほど、作品のために綿密な取材をした作家は珍しい。取材ノートや創作ノートを読むと、ほんのわずかな描写のためにも取材と調べを尽くしている。
したがって三島の旅は逗留先での執筆とともに、作品のモチーフになるものだった。旅館やホテルからの風景、豪華な調度や晩餐そのものが、しばしば作品に投影されている。それはとくに熱海から下田、西伊豆にいたる、昭和時代のリゾートに凝縮していた。三島という作家は年齢もバカンスも昭和そのものだった。
観光施設は、リゾートスタイルの変転とともに、廃業したものが少なくない。またその系譜がたどりにくい。
華やかな外食・旅行産業は、往時の派手さの裏返しで、廃業したあとは記録が残らないのだ。観光文化の記録を残すことで、本書のような刊行物も意義があるかもしれない。

掲載スポットの一例……万平ホテル メインダイニングルーム(軽井沢)、Poppy(横浜市中区)、強羅環翠楼(箱根町強羅)、明治記念館(千代田区内幸町)、柊家旅館(麩屋町)ほか

 
●第三部 『豊饒の海』の謎を解く

いよいよ三島文学の神髄に乗りこもう。三島文学の集大成、最後の作品となった『豊饒の海』四部作である。作品としての質量は、他の長編とはおよそ別次元にある。その意味では、処女出版『花ざかりの森』いらいの少なくない作品群が、この大作の物語としての完成度、生と死をめぐるテーマを深める過程だったと思わせる。そしてこの作品は、昭和史の最大の謎のひとつ、市ヶ谷蹶起事件と不可分である。それゆえに作品と事件の謎をめぐり、百万言がついやされてきたのだった。作家が作品に仕組んだ謎解き、舞台となった場所の探索。そして作中人物のモデルを解明してみた。(※以下省略。舞台となった場所やモデルは本書でご確認下さい!)

 

著者プロフィール

横山茂彦(よこやま・しげひこ)さんは、著述業・編集者。複数の筆名でノンフィクション、エンタメ小説など著書多数。

三島由紀夫に関する論考に「『芸術としての政治』の完成」(「情況」2020年秋号)、「市ヶ谷事件から50年」(「紙の爆弾」2020年12月号)、「肉体が思想に変容する瞬間」(「武道通信」平成11年1月号)など。

食と旅に関する著書に『日本の温泉宿』(レタスクラブ)、『池波正太郎が愛した宿』(夏目書房)など。

 

三島由紀夫 街歩き手帖
横山茂彦 (著)

文学には「住所」がある。
三島作品の舞台や執筆場となった、数々の店や場所、風景。
「行って、馳せる」読書を愉しむための新ガイドブック!

●第一部 三島由紀夫が愛した店
【神田神保町・本郷・城東界隈】
【銀座・有楽町界隈】
【港区・新橋・六本木界隈】
【新宿・四谷・渋谷界隈】

●第二部 旅先の宿と店
【東日本】
【横浜界隈】
【箱根・熱海・伊豆半島】
【新婚旅行】
【『金閣寺』と京都界隈】

●第三部 大作『豊饒の海』の謎を解く

コラム多数収録!
・三島由紀夫とお酒  ・三島由紀夫のスィーツ
・短編小説『橋づくし』の風景  ・銀座と三島由紀夫
・三島と船舶 ・怪奇小説『月澹荘綺譚』について
・三島文学における乗馬 ・自決三部作 ・『金閣寺』のモデルと風景  など

 


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