【第33山本七平賞】磯野真穂さん『コロナ禍と出会い直す』が受賞
PHP研究所は9月11日、第33回山本七平賞の受賞作を発表しました。
第33回山本七平賞が決定!
PHP研究所は、先日発表された最終候補作3作品を対象に、第33回山本七平賞の最終選考会を9月11日に人形町「玄冶店 濱田家」で開催し、次の通り受賞作を決定しました。
<第33回山本七平賞 受賞作>
磯野真穂(いその・まほ)さん
『コロナ禍と出会い直す ──不要不急の人類学ノート』(柏書房)
受賞者の磯野真穂さんには、賞金300万円、記念品として腕時計、山本七平さん著『静かなる細き声』の特装本が贈呈されます。贈呈式は11月13日(水)、都内で開催予定。
なお、最終候補作は、以下の3作品でした。
【最終候補作】
◎『コロナ禍と出会い直す ──不要不急の人類学ノート』(磯野真穂さん/柏書房)
◎『天才の光と影 ──ノーベル賞受賞者23人の狂気』(高橋昌一郎さん/PHP研究所)
◎『本居宣長 ──「もののあはれ」と「日本」の発見』(先崎彰容さん/新潮社)
受賞者プロフィール
磯野真穂(いその・まほ)さんは、1976年生まれ、長野県安曇野市出身。人類学者。専門は文化人類学・医療人類学。2010年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年より在野の研究者として活動。2024年より東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。一般社団法人De-Silo理事。応用人類学研究所・ANTHRO所長。
著書に『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリマー新書)、『他者と生きる――リスク・病い・死をめぐる人類学』(集英社新書)、宮野真生子さんとの共著に『急に具合が悪くなる』(昌文社)がある。
山本七平賞について
山本七平賞は、平成3年12月に逝去した山本七平さんの長年にわたる思索、著作、出版活動の輝かしい成果を顕彰することを目的に、平成4年5月に創設されました。
賞の対象となる作品は、前年7月1日から当年6月末日までに発表(書籍の場合は奥付日)された書籍、論文で、選考委員は、伊藤元重さん(東京大学名誉教授)、中西輝政さん(京都大学名誉教授)、長谷川眞理子さん(日本芸術文化振興会理事長)、八木秀次さん(麗澤大学教授)、養老孟司さん(東京大学名誉教授)の5名。
コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート 磯野 真穂 (著) 最後のお別れすら許さない病院、火葬すら立ち会わせない予防策、子どもたちへの黙食指導、至る所に設けられたアクリル板、炎天下でも外せないマスク、連呼された「気の緩み」――あの光景はなんだったのか? 人類学者が「不要不急」のフィールドワークから考えた、「和をもって極端となす」日本社会の思考の癖、感じ方の癖! コロナ禍で連呼された「大切な命」というフレーズ。それは恐らく、一面的には「正しい」フレーズであった。しかし、このフレーズのもとに積み重ねられた多様で大量の感染対策が、もとから脆弱であった人々の命を砕いたのも事実である。そしてその余波は、いまだに続いている。 もちろん必要な対策もあっただろう。しかし、「批判を避けたい」「みんながそうしている」「補助金が欲しい」といった理由に基づく名ばかりの「感染対策」はなかったか。そのような対策が、別の命をないがしろにしていた可能性はなかったか。忘却する前に、思い出す必要があるはずだ。未来の命を大切にするために。 “出会いとは、自分が予想し得なかった人や出来事との遭遇のことを指す。だからこそ、出会いの瞬間、私たちは驚き、戸惑い、右往左往する。2020年冬にやってきたコロナも私たちにとっては出会いであった。驚いた私たちは困惑し、社会は恐れと怒りに包まれた。あれからすでに4年が経過する。人でごった返す繁華街から人影が消えたあの時の風景に私たちはどのように出会い直せるだろう。” 「出会い直し」とは、過去に出会った人や出来事の異なる側面を発見することを通じ、それらとの関係を新たに編み直すことを指す。本書では、コロナ禍のフィールドワークで集めた具体例とともに、「コロナ禍と出会い直す」ためのいくつかの視点を人類学の観点から提供する。現地に赴くフィールドワークを、研究者自らの手でエッセンシャルから「不要不急」に追いやっていいのだろうか。感染予防のためなら、暮らしのほとんどは「不要不急」になるのだろうか。 人間の生とは何か。人類学者が問いかける。 |
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