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安部公房『箱男』が映画化 永瀬正敏さん、浅野忠信さん、白本彩奈さん、佐藤浩市さんらが出演

安部公房『箱男』(新潮文庫)

安部公房『箱男』(新潮文庫)

世界的作家・安部公房の代表作『箱男』が、石井岳龍さん監督で映画化され、8月23日(金)より全国公開されます。

また、8月17日(土)~8月23日(金)の期間、シネマヴェーラ渋谷にて「生誕百年記念 シネアスト安部公房」が開催されます。

 

それは、人間が望む最終形態――。

8月23日(金)より問題作にして代表作の1つ『箱男』の映画が公開されます。監督は石井岳龍さんが務め、永瀬正敏さん、浅野忠信さん、白本彩奈さん、佐藤浩市さんほかが出演しています。

なお、新潮文庫では、本作のビジュアルが巻かれたフル帯バージョンの『箱男』も7月末より各書店店頭で展開中です。

 
<映画「箱男」概要> ※敬称略

■出演者:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、渋川清彦、中村優子、川瀬陽太 ほか

■監督:石井岳龍

■脚本:いながききよたか、石井岳龍

■原作:安部公房『箱男』(新潮文庫)

■製作:映画「箱男」製作委員会
■制作プロダクション:コギトワークス
■製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ

(c)2024 The Box Man Film Partners

★公式サイト:https://happinet-phantom.com/hakootoko/

 

 

「生誕百年記念 シネアスト安部公房」、特別展「安部公房展――21世紀文学の基軸」を開催

シネマヴェーラ渋谷では、「生誕百年記念 シネアスト安部公房」が8月17日~8月23日に開催されます。

 
世界的な評価を集める勅使河原宏監督作「砂の女」や「他人の顔」などはもちろん、演劇「仔象は死んだ」の映像作品、アニメーション「詩人の生涯」、安部公房が監督した「時の崖」等々、安部公房が関わった映画作品をほぼ網羅したプログラムとなっています。

 
★「生誕百年記念 シネアスト安部公房」上映スケジュール:http://cinemavera.com/schedule.html?id=316

 

著者プロフィール

撮影:新潮社

撮影:新潮社

安部公房(あべ・こうぼう/1924-1993)は、東京出身。東京大学医学部卒業。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。

1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。2012年、読売新聞の取材により、ノーベル文学賞受賞寸前だったことが明らかにされた。

 

箱男 (新潮文庫)
安部 公房 (著)

全国各地には、かなりの数の箱男が身をひそめている。
どうやら世間は箱男について、口をつぐんだままにしておくつもりらしい――。

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。
読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。

本文より
さらに五日目からは部屋にいるかぎり、食事と、大小便と、睡眠以外のほとんどを、箱のままで過すようになった。一抹の疚(やま)しさを除けば、べつに異常なことをしているという意識はない。それどころか、この方がずっと自然で、気も楽だ。これまでは嫌々ながらだった独り暮しまで、今ではかえって、禍い転じて福となった思いである。
六日目。いよいよ最初の日曜日。来客の予定はないし、外出の計画もない。(中略)
そして、翌朝――ちょうど一週間目――Aは箱をかぶったまま、そっと通りにしのび出た。そしてそのまま、戻ってこなかった。
(「たとえばAの場合」)

本書「解説」より
考えてみればわれわれ現代人は、隅々まで約束事や習慣や流行や打算に支配され、その上、この小説の主人公がかつてそうであったように、「ひどいニュース中毒」に罹っている。「自分で自分の意志の弱さに腹を立てながら、それでも泣く泣くラジオやテレビから離れられない。」もしもそういうものをすべてかなぐり捨てたら、世界はどう見え、われわれはどんな存在になるだろうか。風景が均質になり、いままで大切に思っていたものも、無価値と思って無視してきたものも、同等の価値をもって目にはいって来る。それと同時に、こちらの方向感覚、時間感覚も麻痺し、われわれ自身でなくなって、「贋のぼく」が現われる。
――平岡篤頼(文芸評論家)

 
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