金原ひとみさん「谷崎潤一郎賞」受賞作『アンソーシャル ディスタンス』が文庫化 文庫解説は朝井リョウさん
2021年に第57回谷崎潤一郎賞を受賞した金原ひとみさんの短編集『アンソーシャル ディスタンス』が文庫化され、新潮文庫より刊行されました。
整形、不倫、ストロングゼロ……金原ひとみさんが『アンソーシャル ディスタンス』で描く、絶望する女性たちの暴走
絶望の果てに、必死に掴んだ一筋の希望。それがアルコールや整形、不倫だとしたら……?
芥川賞作家・金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』が浮き彫りにするのは、現代の女性たちの苦悩と喜び、依存そして暴走。解説を寄稿した作家の朝井リョウさんも〈とにかくキマる〉としびれた短編集が文庫化されました。
〈朝起きてまずストロングを飲み干す。化粧をしながら二本目のストロングを嗜む。通勤中は爆音で音楽を聴きながらパズルゲームをやり、会社に着くとすぐにメールや電話の連絡作業をこなす。昼はコンビニで済ませてしまうか、セナちゃんや他の同僚と社食や外食に行き、食事中あるいは戻る前にビールかストロングを飲む〉
(「ストロングゼロ」より)
本作で描かれるのは、5人の“絶望する女性たち”です。
◎心を病んだ恋人との生活に耐えきれず、高アルコール飲料に依存する女性(「ストロングゼロ」)
◎十歳年下の彼氏の肌の若さに当てられ、整形沼へ走る女性(「デバッガ―」)
◎夫から逃げだしたのに、今度は不倫相手に振り回される女性(「コンスキエンティア」)
◎生きる糧だった推しのライブが中止になり、彼氏と豪遊の心中旅行に繰り出す女性(「アンソーシャル ディスタンス」)
◎恋人と会えない孤独の日々の中、性欲と激辛欲が荒ぶる女性(「テクノブレイク」)
彼女たちが絶望に溺れ必死にもがく姿はまったく他人事ではなく、やがて共に転がり落ちるように、一気に物語に引き込まれます。
朝井リョウさんが解説を寄稿
文庫化にあたっては、『正欲』も話題の直木賞作家・朝井リョウさんが解説を寄稿。
〈すぐに全編を一気読みした私は、これぞ金原ひとみ、ありがとう金原ひとみ、いつも心に金原ひとみ、と万歳三唱せんばかりの高揚感を抱いた。本書は、著者の作品を愛する読者の方々には勿論胸を張って差し出したいし、著者の作品が初めての方、購入を迷われている方にはそれ以上の自信を持って推薦したい一冊なのだ。〉
(解説より)
突き抜けた物語の圧倒的“中毒性”にしびれる『アンソーシャル ディスタンス』。朝井リョウさんの熱い解説と共に、お楽しみください。
著者プロフィール
金原ひとみ(かねはら・ひとみ)さんは、1983年生まれ、東京都出身。2003年『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞。翌年、同作で芥川賞を受賞。
2010年『TRIP TRAP(トリップ・トラップ)』で織田作之助賞、2012年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2020年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、2021年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、2022年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。
著書に『アッシュベイビー』『AMEBIC』『ハイドラ』『持たざる者』『マリアージュ・マリアージュ』『軽薄』『fishy』『デクリネゾン』『腹を空かせた勇者ども』、エッセイにパリでの移住生活、そして帰国後の東京での日々を綴った『パリの砂漠、東京の蜃気楼』などがある。
アンソーシャル ディスタンス (新潮文庫) 金原 ひとみ (著) |
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