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岡崎武志さん〈人生詰んだ人のための「脱力系文庫本」〉『人生の腕前』が刊行

人生評伝の名手・岡崎武志さん著『人生の腕前』が光文社文庫より刊行されました。

 

「人生の腕前」最上級者たちの生き様とは

『人生の腕前』は、作家の人生評伝の名手・岡崎武志さんが、「人生の腕前」最上級者たちの生き方を綴った本です。

 
「刻苦勉励、日々努力、今日より明日は成長しようと駆け抜けた人の人生からは、あまり学ぶことはない気がする。どこかだらしなく、ボタンをはずして寝転んでいるような人生にこそ、よき人生のモデルケースがある」
(序文より)

そのモデルケースを見せてくれるのが、次の7人。

 
「低く見せることは、高く見せることより難しい」……井伏鱒二
「社会の常識や通年にやすやすとは呑み込まれない」……高田渡
「いいところだけを見れば、友達とはいいものだ」……吉田健一
「できないこと、無理なことはしない」……木山捷平
「都市に生まれ、育ち、生き、さすらい、死んでいった」……田村隆一
「人間はズボラだったが、芸にウソはなかった」……古今亭志ん生
「徹底した『個』の人」……佐野洋

…生き方に迷っている人、人生をあきらめつつある人、「詰んだ」と感じている人などなど、読めば勇気が湧いてくること間違いなし!

 
解説は、ヘニョヘニョとした生き様で、いま各界から熱い注目を集めている、歌手・芸人のタブレット純さんが担当。

 

著者プロフィール

岡崎武志(おかざき・たけし)さんは、1957年生まれ、大阪府出身。立命館大学卒業後、高校の国語講師を経て上京。出版社勤務の後、フリーライターとなる。書評を中心に各紙誌に執筆。「文庫王」「均一小僧」「神保町系ライター」などの異名でも知られる。

著書に『読書の腕前』『蔵書の苦しみ』『読書で見つけたこころに効く「名言・名セリフ」』(以上、光文社知恵の森文庫)、『上京する文學 春樹から漱石まで』『ここが私の東京』(いずれも、ちくま文庫)、編書に『愛についてのデッサン ――野呂邦暢作品集』『野呂邦暢 古本屋写真集』(以上、ちくま文庫)、『上京小説傑作選』(中公文庫)など多数。

 

人生の腕前 (光文社文庫)
岡崎武志 (原著)

井伏鱒二、高田渡、吉田健一、木山捷平、田村隆一、古今亭志ん生、佐野洋子……。なぜ彼らは他人の評価や世間の常識に汲々とすることなく、思うように生き、そして素晴らしい仕事を成し遂げ、旅立っていったのか。作家評伝の名手・岡崎武志が綴る、「人生の腕前」最上級者たちの生き様。

★★★解説は、あのタブレット純さん!★★★

こんなに飲みたくなる本はありません。(中略)それはこの本に、著者が愛して止まない”チープで不器用な生きざま”、その逸話が全編にとろけるように包み込まれているからに違いありません。

ここはツマミの「お好みミックス豆」よろしく、ぼくの心に響いた、各章のお気に入りの言の葉たちをぽりぽりとつまんでみたいとおもいます。

井伏鱒二さんが人として奏でる”なだらかな嶺“について著者が評した「低く見せることは高く見せることより難しいはずなのである」。

高田渡さんの住む部屋に入ってきたノラ猫、そのさまを見て渡さんが呟いた「あの子たちのことを考えると、引っ越せない」。

吉田建一さんの「犬が寒風を除けて日向ぼっこをしているのを見ると、酒を飲んでいるときの境地というものについて考えさせられる」という悲しみに裏打ちされた“美点“へのまなざし。

なぜ臆病で、しかも病弱であった木山捷平さんが無事厳しい戦地から復員できたのか?という問いに対して、木山さんのご子息いわく「なにもしないのがよかったんじゃないんでしょうか」。

田村隆一さんが詩に込めた「針一本/床に落ちてもひびくような/夕暮れがある」、そんな「詩人が生活するに足る文明が備わってこそ、都市は成立する」と現代の利便性ばかりに偏る街を断ずる著者。

戦火の迫る満州の修羅場での落語会、そこで古今亭志ん生さんが客の一人から聞いた「イヤ、どうせ死んじまうんですから、笑って死にたいと思いましてね」。

佐野洋子さんが椎名誠さんに向けて評した「文体こそ全てであると信じる者なんで、独自の文体というものをきわ立って持った奴の勝ちなのである」ゆえに「日本語はもっと、体と一体になった温度とか匂いとか、生活に結びついているべきである」。

……珠玉の山の中から、こうして手のひらに拾っているだけでも、お酒の酔いとともにむくむくと生きることへの頼もしさがふくらみます。

 


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