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爆殺された伝説のパレスチナ人作家が遺した不朽の名作『ハイファに戻って/太陽の男たち』が緊急重版

河出書房新社は、在庫僅少となっていたパレスチナ人作家・カナファーニー著『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫/2017年6月初版刊行)の緊急重版を決定しました。重版出来は2023年11月7日を予定しています。

 

SNSで話題!パレスチナ解放を訴え続けた作家カナファーニーの代表作を緊急重版

2023年10月7日に行われたイスラム組織ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃。そしてこれに対抗するイスラエルの報復攻撃。現在も激しい戦闘が続いており、日々痛ましいニュースが世界に伝えられています。

特に被害が大きく出ているのはパレスチナのガザ地区ですが、1948年のイスラエル建国以来70年以上、パレスチナの人々は祖国を失い、激動かつ悲運の歴史の中に生きています。これを受け、いまカナファーニー著『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫)がSNSで注目を集めています。

 
本書の著者、ガッサーン・カナファーニーは、1936年に当時パレスチナ領域内の地中海に面した港湾都市アッカー(現在はイスラエル領)で生まれました。イスラエル建国の年である1948年、12歳のときユダヤ人武装組織によるデイルヤーシン村虐殺事件を生き延び、難民となってシリアに逃れます。大学を中退後は、拠点をクウェート、レバノンと移しながらパレスチナ解放戦線(PFLP)の公式スポークスマンとしても活躍するなど、パレスチナ解放運動では政治的に重要な役割を果たしていました。この間、自身の体験と、パレスチナ人が置かれた現実を小説、戯曲として多数執筆しています。しかし1972年、何者かが自動車に仕掛けたダイナマイトによって36歳の短い人生を終えました。

 
パレスチナの悲劇とパレスチナの人びとが置かれている理不尽なまでの悲惨な現状。そして祖国を失い郷土を離れつつも、生涯を賭けて苦闘し続けたカナファーニー。その思いはカナファーニーの全ての作品に込められており、作品の1つ1つがカナファーニーによる世界に向けた魂のメッセージです。「パレスチナ問題」の過酷な真実に迫る膨大な作品群の中から7篇の名作を収録したものが、本書『ハイファに戻って/太陽の男たち』です。

 
【内容紹介】

悲劇的な親子の再会を通して時代に翻弄される人間の苦しみを描いた「ハイファに戻って」、密入国を試みる男たちの凄惨な末路を描く「太陽の男たち」ほか、世界文学史上に不滅の光を放つ名作7篇を収録。若くして爆殺された伝説の作家による、パレスチナ問題の過酷な真実に迫る衝撃の作品群。

収録作品:太陽の男たち/悲しいオレンジの実る土地/路傍の菓子パン/盗まれたシャツ/彼岸へ/戦闘の時/ハイファに戻って

 

西加奈子さんによる「文庫版解説」収録

『ハイファに戻って/太陽の男たち』には、2017年の文庫化の際に作家・西加奈子さんの文庫版解説を収録しています。そのなかから一部を引用します。

 
これは今もイスラエルで起こっていることだ。イスラエルだけではない、シリアで、イエメンで、ミャンマーで、世界中で起こっていることなのだ。そしてそこで悲嘆に暮れている人、悲劇の最中にいる人たちは、私たちだったかもしれない。オレンジを、椅子を、テーブルを、部屋を美しくしようと飾った装飾品を、写真を、扉の留め金を、バルコニーを奪われたのは私たちだったかもしれない。

その「私たちだったかもしれない」という想いをこそ、カナファーニーは私たちに求めたのではあるまいか。

 

著者プロフィール

 
■ガッサーン・カナファーニー

1936-1972。パレスチナに生まれ、12歳のときユダヤ人武装組織による虐殺を生き延び難民となる。パレスチナ解放運動で重要な役割を果たすかたわら、小説、戯曲などを執筆。36歳の若さで自動車に仕掛けられた爆弾により暗殺される。遺された作品は現代アラビア語文学を代表する傑作として評価されている。

 
■訳:黒田寿郎(くろだ・としお)さん

1933年生まれ。著書に『イスラームの国家・社会・法』、『イスラームの構造』など。

 
■訳:奴田原睦明(ぬたはら・のぶあき)さん

1940年生まれ。著書に『遊牧の文学』、訳書にバラカート『六日間』、クーニー『ティブル』など。

 

ハイファに戻って/太陽の男たち (河出文庫)
ガッサーン カナファーニー (著), Ghassan Kanafani (原名), 黒田 寿郎 (翻訳), 奴田原 睦明 (翻訳)

20年ぶりに再会した息子は別の家族に育てられていた――時代の苦悩を凝縮させた「ハイファに戻って」など、不滅の光を放つ名作群。

 


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