【第14回辻静雄食文化賞】陸田幸枝さん・大橋弘さん『古くて新しい 日本の伝統食品』が受賞
辻静雄食文化財団は5月26日、よりよい「食」を目指し、新しい世界を築き上げた作品や個人を顕彰する「第14回辻静雄食文化賞」の受賞作品・受賞者を発表しました。
「第14回辻静雄食文化賞」受賞作・受賞者
第14回辻静雄食文化賞の受賞作品・受賞者は次の通りです。
<第14回辻静雄食文化賞 受賞作品>
著:陸田幸枝(むつだ・ゆきえ)さん、写真:大橋弘(おおはし・ひろし)さん
『古くて新しい 日本の伝統食品』(柴田書店)
<受賞理由>
モノとして存在するだけでは失われてしまう伝統食品の数々を言語化し、写真とともに再現可能な形で伝えたことは、大きな文化的意義を持つ。時間をかけた取材だけが可能にした記録を集大成した本書は、伝統食の百科事典とも呼べるもので、高く評価できる。
*本書の元になった「月刊 専門料理」の連載は、1990年代から雑誌「サライ」に連載された記事に基づき、「サライ」の連載自体は「サライ ムック」(小学館)や『伝統食礼讃』(アスペクト)などの形でも刊行されているが、刊行後時間がたっており、今回改めて編纂したことに大きな意義があると評価した。
<作品について>
日本の風土の中で育まれてきた伝統的食品をたずねて各地を旅し、丹念な取材を行って、その歴史や成立ち、製法を、製造工程を含む多数の写真とともに紹介している。取り上げた食品は、漬物、乾物、大豆加工品、すし、塩蔵品、練り製品、調味料など100種ほどにのぼり、あく抜き、乾燥、発酵、燻煙など、季節ごとに手に入る野菜、穀類、果物や魚介を、保存可能で美味しい食品へと変化させるための多様な知恵と技が一冊に集約されている。
<第14回辻静雄食文化賞 専門技術者賞>
■谷口英司(たにぐち・えいじ)さん
Cuisine régionale L’évo (キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ)オーナーシェフ
第14回辻静雄食文化賞の選考委員は、鹿島茂さん(委員長/フランス文学者)、石毛直道さん(国立民族学博物館名誉教授、文化人類学者)、福岡伸一さん(青山学院大学教授、分子生物学者)、湯山玲子さん(著述家、プロデューサー)、辻芳樹さん(辻調グループ代表、辻調理師専門学校校長)、八木尚子さん(辻静雄料理教育研究所副所長)。
なお、第14回辻静雄食文化賞の贈賞式は、8月に開催予定。
辻静雄食文化賞について
辻静雄食文化賞は、食分野の教育と研究に生涯を捧げた辻調グループ創設者・辻静雄さん(1933~1993)の志を受け継ぎ、2010年に創設されました。
同賞は、我が国の食文化の幅広い領域に注目し、よりよい「食」を目指して目覚しい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、もしくは個人・団体の活動を対象に選考し、これに賞を贈るものです。
また特別部門として専門技術者賞を設け、調理や製菓等の現場で活躍する技術者を顕彰しています。
古くて新しい 日本の伝統食品 陸田 幸枝 (著) 「月刊 専門料理」に2007年から2017年まで連載していた、「日本の伝統食品」から101食品を厳選し、まとめたものです。 著者の陸田氏とカメラマンの大橋氏が、日本各地を訪ねて集めた、つくり手たちの生の声と姿は貴重な情報であり、資料的価値も高い一冊です。 今読み返してあらためて思うのは、昔ながらの食品のなかにある、知恵や技の素晴らしさ。近年、関心の高まっている発酵や熟成といった加工技術も、多くの日本の伝統食品の中に脈々と受け継がれてきたものです。日本の伝統食品は、食の知恵と技術の宝庫といえるでしょう。そしてそれを支えているのは、伝統を守りつくり続けてきた人々の情熱と、それを待ち、生かす人たちの存在です。 |
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