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【第54回講談社絵本賞】たじま・ゆきひこ(田島征彦)さん『なきむしせいとく』が受賞

講談社は4月20日、第54回講談社絵本賞の受賞作を発表しました。

 

第54回講談社絵本賞の受賞作が決定!

第54回講談社絵本賞の受賞作品は次の通りです。

 
<第54回講談社絵本賞 受賞作品>

たじまゆきひこ(田島征彦)さん
『なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語』(童心社)

 

受賞者のたじまゆきひこさんは、受賞者のたじまゆきひこさんは、1940年生まれ、大阪府堺市出身。高知県で少年時代を過ごす。兵庫県・淡路島在住。1977年『祇園祭』(童心社)で第6回ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、1979年『じごくのそうべえ』(童心社)で第1回絵本にっぽん賞、1987年『てんにのぼったなまず』(福音館書店)で第11回ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、2015年『ふしぎなともだち』(くもん出版)で第20回日本絵本賞大賞を受賞。

たじまさんには、賞状と記念品および副賞として100万円が贈られます。

選考委員は、きたやまようこさん、高畠純さん、武田美穂さん、長谷川義史さん、もとしたいづみさん。

 

受賞作『なきむしせいとく』について

舞台は1945年戦争末期の沖縄。国民学校2年生の男の子「せいとく」は、いつも泣いているのでみんなから「なちぶー」とよばれています。戦況がきびしく敗色が濃くなっていく中、出征していた父に続き、中学生だった兄までも「鉄血勤皇隊」に招集されてしまいます。せいとくと母、妹の3人は少しでも安全な場所を求めて家を捨て、南へ南へと避難します。
激しいアメリカ軍の砲撃でせいとくは母を失い、軍民が入り乱れる混乱の中、妹とも生き別れてしまいます……。

 
本作は8歳の男の子、せいとくの視点から物語が描かれます。
空襲や艦砲射撃、そして地上戦……。家族を失い、死体を踏み越えて逃げ、味方と避難場所を奪い合う凄惨をきわめた沖縄戦を経て、泣き虫だったせいとくはついに、涙をながすことすらなくなってしまいます。

 
絵本作家の田島征彦さんは、ロングセラー絵本『じごくのそうべえ』(1978年刊・累計87万部)などの著作で知られる一方で、児童文学作家の故・灰谷健次郎さん(1934~2006)との取材をきっかけに、40年以上沖縄に通い、沖縄を題材にした絵本を作り続けてきました。
沖縄戦を題材にした本作について、田島さんは次のように語っています。

「自然のすばらしさに魅せられて沖縄に通い始めて、もう40年以上になる。沖縄を舞台にした最初の絵本『とんとんみーときじむなー』(童心社/1987年)は、沖縄の自然の魅力を伝えたいと思って創った。しかし、子どもたちに沖縄のことを知ってもらうには、それだけでは充分ではない。沖縄の一面しか伝えていない。日本の国土面積の0.6%しかない沖縄に、日本にある米軍専用施設の70%が集中していることを見逃してはいけないと思った。(中略)
沖縄戦を描くというのは、困難な仕事だ。悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ。」
(『なきむしせいとく』投げ込み「沖縄戦を絵本にする」より)

★<インタビュー>田島征彦さん『なきむしせいとく』刊行記念インタビュー 「沖縄戦」を描く:https://www.doshinsha.co.jp/news/detail.php?id=2646

 

講談社絵本賞について

「講談社絵本賞」は、2018年まで開催されていた講談社出版文化賞の一部門「絵本賞」を引き継ぎ、絵本において新分野を開拓し、質的向上に寄与した優秀な作品に対して贈呈される絵本賞です。

 
なお、講談社出版文化賞は、1970年(昭和45年)に講談社が創業60周年記念事業の一環として創設。さしえ賞(挿絵)、写真賞(写真)、ブックデザイン賞(装幀)、絵本賞(絵本)の4部門で構成されていました。
4部門のうち、写真賞・さしえ賞・ブックデザイン賞については、2018年度で終了となり、絵本賞は「講談社絵本賞」と改称し、引き続き単独で運営されることとなりました。

 

なきむし せいとく: 沖縄戦にまきこまれた少年の物語 (童心社の絵本)
たじま ゆきひこ (著, イラスト)

《沖縄に40年以上通い続けてきた著者が描く「沖縄戦」》

ここは1945年の沖縄。ぼくの名前は「せいとく」です。
いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」とよばれています。
父に続き、兄も兵隊となり、ぼくは母と妹の3人で、南へ逃げることになりました。

===

絵本作家・田島征彦は、40年以上取材を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描いてきました。
(『とんとんみーときじむなー』[1987年]『てっぽうをもったキジムナー』[1996年]『やんばるの少年』[2019年、いずれも童心社・刊])

本作では、長年の取材の集大成として、真っ正面から「沖縄戦」を描きます。

===

「悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ」
田島征彦(「母のひろば」685号より)

 


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