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平松洋子さんが5年の歳月をかけて探究した『ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け』を刊行

人の身体は、どのように作られていくのか――作家・エッセイストの平松洋子さんがこのギモンとテーマをもとに5年の歳月をかけて探究した『ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け』が新潮社より刊行されました。

 

「私たちは、身体から離れては生きられない」

『買えない味』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を、『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞を、そして去年、『父のビスコ』で読売文学賞を受賞した作家・エッセイストの平松洋子さん。週刊文春の「この味」とdancyuの「台所の時間」の連載は十年以上つづき、根強い人気と支持を集めています。

 
「食」をめぐる随一の書き手でもある著者の、いわば「究極」と言えるのが本書のテーマ、ずばり「身体と食」「人の身体はどのように作られていくのか」。

着目したのは理想の身体を作り上げ、「体が資本」のアスリートたち……誰もが身にまとう「筋肉と脂肪」に肉迫し、「知りたかったことが、ぎっしり詰まっている」「こういう本、これまでなかった!」と賞賛と驚きの声が早くもあがっている、唯一無比のルポルタージュです。

 
【内容紹介】

私たちは「身体」から離れては生きられない。その究極を表現するアスリートには、自分だけが知る身体の声がある。
相撲部屋を開設した押尾川親方、不世出のプロレスラー・武藤敬司、日本記録を保持するランナー・新谷仁美、東京五輪2020で複数のメダルをもたらしたスポーツ栄養士、大学駅伝三冠を達成した駒澤大学陸上競技部の寮母・大八木京子など、各種競技の最前線を取材。あわせて筋トレ、体脂肪、栄養、腸内環境、サプリンメントなどのメカニズムと、これからむかう先にも踏み込む。誰もが身にまとい、他人事ではない「筋肉と脂肪」の内側に分け入り、未知の扉が開く唯一無比のルポルタージュ。

 
<「唯一無比」と断言できる、5つのオススメ・ポイント>

1.「食」に精通した人気作家・エッセイストならでの視点と内容

「身体と食」と言うとダイエット本を、「人の身体は、どのように作られていくのか」と言うと小難しい学術書を想像しそうです。でも、本書はそれらのどれとも違います。

相撲部屋でちゃんこの奥深さを知り、次に新日本プロレスの若手養成所で「100年に1人の逸材」棚橋弘至選手に偶然(!)出会い、驚きの食事風景を目の当たりにし……と数珠つなぎのように興味と取材先がつながり、広がっていく(だから読みやすく、読者も「筋肉と脂肪」をめぐる探究の旅に連れ出されます)。「食」に精通し、長年の取材と見聞に裏打ちされた著者ならではの視点と内容で、新たな扉が次々と開いていきます。

2.アスリートたちの名言、金言、迷言(=誰にも当てはまる「教え」と「気づき」)

本書には「なるほど!」「なに、それ?」といった名言、金言、迷言にあふれています。「和食はアドバンテージである」「マッスルメモリー」「筋肉は裏切らない」「脂肪がついていないとダメ」……これらの言葉や教えはアスリートだけに当てはまる、特殊なことではありません。

われわれ誰もが知っておいた方が良く、日常生活に採り入れなくては! と気づかされます。ここも本書の魅力と「ありがたみ」であり、「唯一無比」ポイントです。

3.栄養、体脂肪、腸内環境、サプリメント、そして筋トレ……

身体は「食」だけで作られるものでなく(言うまでもなく)、本書には「身体と食」まわりのこともきっちり取り上げ、探究しています。

アスリートを支える栄養士の仕事内容(栄養士曰く「細胞レベルから変える」「汗の質を変える」との名言が。でも、どのようにして変えるのか……?)、肥満と体脂肪、体脂肪計の誕生ヒストリー、話題の腸活、いま大注目の筋トレ、サプリメントのなりたち、そしてジェンダーとスポーツのこと等々。これまでほとんど語られてこなかった分野や問題にも光をあて、「他人ごと」でなく「自分ごと」として気になる/気になってくることを深掘りしています。

4.それぞれの「食」(サッカー、野球、「大学駅伝三冠達成」駒澤大学陸上部の寮ほか)

スポーツ栄養士によって「食」が管理されているチームや競技のある一方、自炊や自己管理が基本の世界もある。サッカー元日本代表選手の専属栄養士の奥義に感嘆し、「食」の違いに驚く。

今年の正月、箱根駅伝で往路と復路を制覇して優勝、大学駅伝三冠を達成した駒澤大学陸上競技部の寮と厨房も取材。大八木監督の妻で寮母の京子さんが寮の食事を作り出してから、何がどのように変わったか。箱根駅伝のレースを見ながら、平松さんは「京子さんは報われなくてはならない、報われるべきだ」と本書に記した、そのワケは……?

5.コロナ、東京オリンピック2020……

本書の取材と執筆期間の5年間は、未曾有のコロナ禍、東京五輪の延期と開催があり、われわれとアスリートたちの「日常」は大きく変化しました。

ほとんど報道されることのなかった五輪選手村の食堂とその斬新な取り組みを、現場にいた当事者から聞き、コロナと非常事態宣言下のスポーツの祭典から見えてきた「身体と食」についても検証しています。

 

本書の構成

序章 スタートライン

一章 相撲とちゃんこ 国技を脂肪が支える
相撲部屋の朝稽古/マッスルメモリー/手探りで体重を増やす/えびすこは強い/ジョコビッチの「戒律」/和食はアドバンテージである/根性論では勝てない

二章 プロレスと筋肉 食べなければ得られない
新日本プロレスの寮生活/自炊もトレーニングのうち/ちゃんことの結びつき/エンターティナーの意味/オーラを消した「100人に1人の逸材」

三章 プロティンか、青汁か 自分の肉体を表現する
ミケランジェロと勝負する身体/棚橋弘至と六十分/真夜中に飲むプロティン/食べたいものを食べない/玄米と十円玉 石井智宏

四章 サプリメントの発見 身体表現の一部として
武藤敬司の身体を創造したもの/クレアチンの効果/運動・栄養・休息のトライアングル/サプリメントの開発秘話/トレーニング二割、食八割/その可能性と限界

五章 筋トレとはなにか 筋肉は身近な宇宙である
スポーツと経済/桑原弘樹の特別講義/『キン肉マン』人気の秘密/メンタルを支える/筋肉博士が読み解く/筋肉の世界/筋トレがもたらす力

六章 「肪と健康」 体脂肪計をつくったひとたち
生まれたら数値化される/タニタが起こした発想の革命/「測る」という健康ブーム/脂肪と体重を「同時に測る」実験/体脂肪率の正体/数字を愛する

七章 見えないものを見る 腸内環境を覗く
初めての腸内フローラ検査/ビフィズス菌と腸活/過剰な期待

八章 「勝つ」ための栄養 「公認スポーツ栄養士」という仕事
メダルをもたらす公認スポーツ栄養士・鈴木志保子/マツダ陸上競技部のトレーニング/勝つための秘策/パラリンピック・アスリートへの指導/日本栄養士会会長・中村丁次「ご飯を手放してはいけません」/汗の質を変える/長距離ランナーの試行錯誤/「アスリートは芸術品」

九章 アスリートを支える食のプロフェッショナル 野球、サッカー、駅伝
大谷翔平を育てた丼めし/落合博満「食べることも仕事」/横浜FCの食を請け負う/トップアスリート専属栄養士・吉村俊亮の奥義/駒澤大学陸上競技部を支える寮母・大八木京子

十章 弱さとスポーツ 「感動物語」の背後にあるもの
アスリート新谷仁美の発信力/「スポ根」の危険/ジェンダーとスポーツ/順天堂大学「女性アスリート外来」/女子バスケットボール元日本代表の葛藤と再生

十一章 身体と時代 二〇二一年東京オリンピックのあとで
進化を生きる/押尾川親方の現在/東京オリンピックの遺産/新谷仁美「結果以上のものを見せる」/オリンピック選手村の食堂で/時代と身体は直結する

それぞれの現在

おわりに

 

著者プロフィール

著者の平松洋子(ひらまつ・ようこ)さんは、1958年生まれ、倉敷市出身。東京女子大学文理学部社会学科卒業。エッセイスト。食文化と暮らしをテーマに幅広い執筆活動を行っている。

2006年『買えない味』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を、2012年『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞を、2021年『父のビスコ』で読売文学賞を受賞。

著書に『食べる私』『日本のすごい味 おいしさは進化する』『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』など。

 

 


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