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小林秀雄賞作家・髙橋秀実さんが認知症になった父親の介護体験を綴る『おやじはニーチェ』が刊行

髙橋秀実さん著『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』

髙橋秀実さん著『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』

『ご先祖様はどちら様』で小林秀雄賞を受賞、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』(二宮和也さん、有村架純さん主演でTVドラマ化)、『はい、泳げません』(綾瀬はるかさん、長谷川博巳さん主演で映画化)など映像化作品もある実力派ノンフィクション作家・髙橋秀実さんによる、新感覚の介護本『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』が新潮社より刊行されました。

 

認知症の父を介護する日々は「想定外」だらけ!

ボケてもやっぱり父は父は父だった!
突然怒り、取り繕い、身近なことを忘れる。変わっていく認知症の父に、60男の著者は戸惑うが、周囲の人の助けも借りて、なんとか新しい環境に向き合っていく。時に父と笑い合いながら、亡くなるまでの日々を過ごす。
「健忘があるから、幸福も希望もあるのだ」という哲学者ニーチェの至言に背中を押されながら――。

 
まるで哲学者のように話す父は、ボケているのか、とぼけているのか?

たとえば、本書では、著者と父親のこのようなやり取りが掲載されています。

 
(本文より抜粋)

【引き算と綱引き?】
「100引く7?」
父は驚いたような表情を浮かべた。
――そう、100引く7。
「100引く7って、こう、引くのか?」
綱引きのような仕草をして父はたずねた。

 
【野菜で大事なことは?】
――野菜の名前をできるだけ多く言って。
「ほうれん草」
――他には?
「他は菜っ葉」
――菜っ葉にもいろいろあるでしょ。
「いいか。野菜で大事なのは名前じゃない。誰の野菜かってことだよ」

 
【することないの。。。】
――昨日は何をしていたの?
「なんにもしてない」
――おとといは?
「なんにも」
――明日は?
「なんにもしてない。することないもん」

 
【コップをめぐる禅問答?】
――これわかる? これは何?
コップを手にして訊いた。
「何って何?」
――いや、訊いているんだよ。
「何を?」
――だから、これは何?
「何って?」
――何って、何?
「何よ」
――だから、これは、何ですか?
「ほんとだ」
自分でも何を訊いているのかわからなくなった。

 

脱力系ノンフィクション作家が、認知症介護のあれやこれやの日々をユーモアいっぱいに、また一方で幻覚、徘徊、脱糞など、シビアな現実もしっかりと描かれています。

 

著者プロフィール

著者の髙橋秀実(たかはし・ひでみね)さんは、1961年生まれ、横浜市出身。東京外国語大学モンゴル語学科卒業。

『ご先祖様はどちら様』で第10回小林秀雄賞、『「弱くても勝 てます」開成高校野球部のセオリー』で第23回ミズノスポーツライター優秀賞を受賞。昨年、『はい、泳げません』が綾瀬はるかさん・長谷川博己さん主演で映画化。近著に『道徳教室 いい人じゃなきゃ ダメですか』。

 

おやじはニーチェ
髙橋 秀実 (著)

覚えていなくても、変わってしまっても、おやじはおやじ。

 


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