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「第44回野間文芸新人賞」候補作が決定 石田夏穂さん、宇佐見りんさん、温又柔さん、永井みみさん、町屋良平さんの計5作品

「第44回野間文芸新人賞」候補作が決定

「第44回野間文芸新人賞」候補作が決定

講談社は9月27日、第44回野間文芸新人賞の候補作5作品を発表しました。

最終結果の発表は11月4日の予定です。なお、当日は第75回野間文芸賞、第60回野間児童文芸賞および第4回野間出版文化賞も同時に発表されます。

 

「第44回野間文芸新人賞」候補作品

第44回野間文芸新人賞の候補作品は、次の5作品です。

 
<第44回野間文芸新人賞 候補作品>

◎石田夏穂(いしだ・かほ)さん
 「ケチる貴方」(講談社『群像』2022年3月号掲載)

◎宇佐見りん(うさみ・りん)さん
 『くるまの娘』(河出書房新社)

◎温又柔(おん・ゆうじゅう)さん
 「祝宴」(新潮社『新潮』2022年5月号掲載)

◎永井みみ(ながい・みみ)さん
 『ミシンと金魚』(集英社)

◎町屋良平(まちや・りょうへい)さん
 『ほんのこども』(講談社)

 

野間文芸新人賞について

野間文芸新人賞は、講談社初代社長・野間清治さんの遺志により設立された財団法人野間文化財団が主催。純文学の新人に与えられる文学賞です。

受賞者には、正賞として賞牌、副賞として100万円が贈られます。

 

くるまの娘
宇佐見りん (著)

17歳のかんこたち一家は、久しぶりの車中泊の旅をする。思い出の景色が、家族のままならなさの根源にあるものを引きずりだす。50万部突破の『推し、燃ゆ』に続く奇跡とも呼ぶべき傑作。

ミシンと金魚
永井 みみ (著)

【第45回すばる文学賞受賞作】
【選考委員絶賛!】
小説の魅力は「かたり」にあると、あらためて感得させられる傑作だ。――奥泉光氏

この物語が世に出る瞬間に立ち会えたことに、心から感謝している。――金原ひとみ氏

ただ素晴らしいものを読ませてもらったとだけ言いたい傑作である。――川上未映子氏
(選評より)

【絶賛の声続々!】
「言葉にならない」が言葉になっていた。掴んだ心を引き伸ばして固結びされたみたい。今もまだ、ずっとほどけない。――尾崎世界観氏(ミュージシャン)

いまだに「カケイさん」の余韻が、胸の奥をふわふわと漂っています。生きることの全てが凝縮されている、とてもいい物語でした。――小川糸氏(作家)

カケイさんの心の中の饒舌に引き込まれているうちに、小説としてのおもしろさと力強さに頭をはたかれました。読み終わった時には、自分自身が癒されて、私ももっと小説を書きたい、頑張りたい、と強く思いました。――原田ひ香氏(作家)

カケイさんの中に亡き祖母を見た。祖母もきっと見ただろう花々に私も出逢えると信じて、これからも生きてゆこう。――町田そのこ氏(作家)

認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。
父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。
そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのに――。
暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。

ほんのこども
町屋 良平 (著)

横溢する暴力と身体、無垢なる魂の軌跡。「やさしく恋するみたいに他の人体を壊す」

元同級生あべくんからのメールにあった文章から着想したシーンをつないで、商業作家はあべくん自身の人生を小説にしようとする。
父による母殺傷事件、両親がころしころされていたあべくんはやさしく恋するみたいに他の人体を壊す。
殴られても反発するようによろこぶ身体。やさしさや暴力で愛撫し合い痛みをこらえるようによろこぶ身体。
物語にかえろうとするから人生はつらく、日常が重すぎてひとをころしたくなる。
恋人をころして自分も死んだところで折り返し、あべくんの物語は無限に再生を繰り返す。
小説家があべくんなのかあべくんがかれなのか、やがてふたりの境界は曖昧になり、問い自体が意味を失う。

言葉を与えられていない領域に光をあて小説は紡がれ、大量虐殺の記憶が時空を架橋しやがて物語は侵蝕される。
ーー世界文学に接続する芥川賞作家の真骨頂・新境地。ーー

鴻巣友季子さん絶賛!読書量と強靭な知性に瞠目!
“すべてのポートレイトは画家の自画像であり、すべての小説は自伝を目指すと言う。おそらくすべての小説はどこかしら、一人称の失恋なのだ。”
“小説でなにかを「再現」することは、過去のよみがえりのように見えて、未然の予告なのだ。すべてのフィクションは自伝を目指し、すべての自画像は他人の顔をしている。”
“かきあうこと、傷しあうこと、死にあうこと。「かれ」と「私」、その人称空間のよじれは経験と真実味との落差そのものだ。落差から、小説は来る。”――鴻巣友季子(翻訳家)

 
【関連】
野間文芸新人賞:講談社

 


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