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魚住陽子さんが遺した6つの物語『夢の家』が刊行

魚住陽子さん著『夢の家』

魚住陽子さん著『夢の家』

故・魚住陽子さんの短編集『夢の家』が駒草出版より刊行されました。

 

2021年8月に急逝した作家・魚住陽子さんが綴る、静謐でありながら自らの感情に向き合う強さを感じさせる珠玉の短編集

1951年に埼玉で生まれた魚住洋子さんは書店や出版社に勤務するかたわら同人誌に詩を発表、カルチャースクールで小説を学び、35歳の時に作家デビュー。『水の出会う場所』『菜飯屋春秋』など、その独自の世界観は多くの読者を魅了し、根強い人気を獲得します。

 
1989年には『奇術師の家』で第1回朝日新人文学賞を受賞し、その他芥川賞をはじめとする文学賞へも幾度となくノミネートされました。
しかし腎臓の病を患い、残念ながら2021年8月、69歳でその生涯の幕を閉じました。

 
今回発売された『夢の家』は魚住さんが遺した作品から、6編を収録した短編集です。

画家の女性と彼女がかつて共に暮らした男性との愛憎を互いの心情描写で綴る表題作「夢の家」、家族を喪った一人暮らしの中年女性と彼女が関わる整体院を中心に、彼女を取り巻く人間模様を描く「シェード」、往復書簡というかたちでの師弟ふたりのやりとりによってそれぞれの感情や生活の変化を描く「郭公の家」、そして、作者の母校の創立記念の冊子に収録されていた、女子高生たちの日常のやりとりをいきいきと描いた「物置に蝶が来ている」、その他2編を加えた全6編を収録。

 
静謐でありながら、その奥に潜む生々しい感情(後悔、諦め、憎しみ、愛、失望、希望など)をしっかりと見つめ、自らに向き合う強さを感じる作品群は、作者独自の世界観にあふれています。

また、病を抱えながら暮らし、創作を続けてきた作者ならではの死と生についての鋭敏な感覚も、そこここに散見され、はっとさせられるものがあります。

 
作者が晩年取り組んでいた俳句のエッセンスやどの作品にも登場するたくさんの草花、そして何気ない生活風景の描写にも魚住ワールドともいうべき美意識が感じられる短編集です。

 
【目次】
・物置に蝶が来ている
・萌木色のノート
・夢の家
・シェード
・郭公の家
・旅装
・あとがき(加藤 閑)

 
<小川洋子さん 推薦のコメント(帯コメントより)>

遠ざかってゆく者と残される者。
魚住文学はその間に横たわる暗がりへと読者を誘い込む。
他のどこにもない小説が、そこに映し出されている。

 

著者プロフィール

著者の魚住陽子(うおずみ・ようこ)さんは、1951年生まれ。埼玉県出身。埼玉県立小川高校卒業後、書店や出版社勤務を経て作家に。1989年「静かな家」で第101回芥川賞候補。1990年「奇術師の家」で第1回朝日新人文学賞受賞。1991年「別々の皿」で第105回芥川賞候補など。

2000年頃から俳句を作り、『俳壇』などに作品を発表。2004年の腎臓移植後、2006年に個人誌『花眼』を発行。著書に『奇術師の家』(朝日新聞社)、『雪の絵』『公園』『動く箱』(新潮社)、『水の出会う場所』『菜飯屋春秋』(駒草出版)がある。2021年8月に腎不全のため死去。

 

夢の家
魚住 陽子 (著)

2021年8月に急逝した作家、魚住陽子が遺した作品から、6編を収録。
静謐でありながら、自らの感情に向き合う強さを感じさせる珠玉の短編集。

 


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