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知っているようで意外に知らない「百首の謎」を解き明かす――ピーター・J・マクミランさん『謎とき百人一首 和歌から見える日本文化のふしぎ』が刊行

日本在住36年のアイルランド出身の日本古典研究者が「百人一首」の謎をわかりやすく解き明かす、ピーター・J・マクミランさん著『謎とき百人一首 和歌から見える日本文化のふしぎ』が新潮社より刊行されました。

 

人気翻訳者が読み解く、ミステリアスで豊饒な和歌の世界!

日本人はなぜ「儚さ」に美の本質を見出したのか。
なぜ「主語」を明記せずに歌を詠んだのか。
なぜ「本歌取り」で新しさを表現しようとしたのか。
なぜ「擬音語」や「言葉遊び」を多用したのか。

 
『百人一首』全訳で日米の翻訳賞を受賞した英文学者が、和歌に秘められた「100の謎」を一つ一つ解き明かします。

 

ピーター・J・マクミランさん コメント

こんにちは。ピーター・J・マクミランと申します。アイルランド生まれで、数十年前に来日し、教師、翻訳家、作家、そしてテレビ出演や、ラジオパーソナリティーとして活動しています。この本は、『百人一首』の新たな英訳と共に、外国人の視点から見た日本古典の不思議な世界を紹介しています。ぜひ読者の皆さんにも自由な気持ちで『百人一首』を楽しみながら、その謎と面白さをたくさん発見していただければと願っています。

 

本書の構成

はじめに

1 袖を濡らしたのは「露」か「涙」か? 天智天皇◆秋の田の
2 「干したり」と「干すてふ」は何が違うのか? 持統天皇◆春過ぎて
3 「ひとり寝」の夜はどれだけ長いのか? 柿本人麻呂◆あしびきの
4 富士山は「実景」か「想像」か? 山辺赤人◆田子の浦に
5 踏み分けたのは「人間」か「鹿」か? 猿丸大夫◆奥山に
6 「鵲かささぎ」とはどんな鳥か? 中納言家持◆鵲の
7 「月」を見て日本人が思い浮かべるのは? 阿倍仲麻呂◆天の原
8 「うぢ山」に掛けられたふたつの言葉とは? 喜撰法師◆我が庵は
9 「掛詞」はいくつ使われているのか? 小野小町◆花の色は
10 「逢坂の関」を越えるとどうなるのか? 蝉丸◆これやこの
11 「漕ぎ出る舟」は何を意味しているのか? 参議篁◆わたの原
12 「乙女」が舞う舞台はどこか? 僧正遍昭◆天つ風
13 「筑波嶺」は何を表す歌枕なのか? 陽成院◆筑波嶺の
14 「しのぶもぢずり」の乱れ模様が暗示しているのは? 河原左大臣◆陸奥の
15 天皇は何のために「若菜」をつむのか? 光孝天皇◆君がため
16 残していく人がいるのは「京都」か「因幡」か? 中納言行平◆立ち別れ
17 正しいのは「くくる」か「くぐる」か? 在原業平朝臣◆ちはやぶる
18 なぜ男性が「女の歌」を詠んだのか? 藤原敏行朝臣◆住の江の
19 作者が「節の間」に見いだしたものは何か? 伊勢◆難波潟
20 「今はた同じ」は何と何が同じなのか? 元良親王◆わびぬれば
21 女が男を待っていたのは「一夜」か「数カ月」か? 素性法師◆今来むと
22 「嵐」には「雨」が含まれていないのか? 文屋康秀◆吹くからに
23 秋はいつから「悲しみの季節」になったのか? 大江千里◆月見れば
24 なぜ日本にはあちこちに「神」がいるのか? 菅家◆このたびは
25 女性に贈る歌になぜ「さねかづら」が添えられるのか? 三条右大臣◆名にし負はば
26 定家が「小倉山」の歌を選んだのはなぜか? 貞信公◆小倉山
27 思い人に「逢っていない」のか「逢えていない」のか? 中納言兼輔◆みかの原
28 「山里の冬」がいっそう寂しいのはなぜか? 源宗于朝臣◆山里は
29 「白菊」を際立たせる「見立て」の技法とは? 凡河内躬恒◆心あてに
30 「無情」なのは「月」か「女性」か? 壬生忠岑◆有明の
31 「吉野」が「雪」と「桜」と組み合わせられるのはなぜか? 坂上是則◆朝ぼらけ
32 「しがらみ」の本来の意味とは? 春道列樹◆山川に
33 「ひさかたの」にどんな意味が込められているのか? 紀友則◆ひさかたの
34 「松」は友人になりうるのか? 藤原興風◆誰をかも
35 詠まれているのは「男女間」か「男性間」か? 紀貫之◆人はいさ
36 夏は「夜が短い」のか「昼が長い」のか? 清原深養父◆夏の夜は
37 正しいのは「白露に」か「白露を」か? 文屋朝康◆白露に
38 女の本心は「ひたむきな恋」か「強烈な皮肉」か? 右近◆忘らるる
39 「浅茅生の小野の篠原」に隠された恋のイメージとは? 参議等◆浅茅生の
40 顔色に出ていたのは「物思い」か「恋」か? 平兼盛◆しのぶれど
41 「歌合」の勝敗の決め手となったこととは? 壬生忠見◆恋ひすてふ
42 「末の松山」は何を象徴していたのか? 清原元輔◆契りきな
43 「後朝」のルールは守られたのか? 権中納言敦忠◆あひみての
44 平安朝の「色好み」が見せた技巧とは? 中納言朝忠◆逢ふことの
45 「あはれ」はいかに訳すべきか? 謙徳公◆あはれとも
46 「梶」を失った恋はどこへ向かうのか? 曾禰好忠◆由良の門を
47 「八重葎」が表す屋敷の変化とは? 恵慶法師◆八重葎
48 「岩」に重ねられているのは誰か? 源重之◆風をいたみ
49 「篝火かがりびの炎」に何を見たのか? 大中臣能宣朝臣◆みかきもり
50 「長くもがな」に込められた思いとは? 藤原義孝◆君がため
51 「さしも草」に喩えられた気持ちとは? 藤原実方朝臣◆かくとだに
52 「朝ぼらけ」を恨めしいと思うのはなぜか? 藤原道信朝臣◆明けぬれば
53 「色あせた菊」を歌に添えて贈ったのはなぜか? 右大将道綱母◆嘆きつつ
54 恋の絶頂期になぜ「不信感」を詠んだのか? 儀同三司母◆忘れじの
55 「滝」の流れを感じさせる技巧とは? 大納言公任◆滝の音は
56 「恋多き女」が死を覚悟しながら歌を贈った相手とは? 和泉式部◆あらざらん
57 「月の歌」か、「恋歌」か、それとも……? 紫式部◆めぐりあひて
58 「そよ」に込められた二つの思いとは? 大弐三位◆有馬山
59 穏やかに表現された「悲しみ」とは? 赤染衛門◆安らはで
60 「名高い母」に比べられた娘が見せた機知とは? 小式部内侍◆大江山
61 「九重」はどこを意味するのか? 伊勢大輔◆いにしへの
62 清少納言は歌を贈った相手と「恋仲」だったのか? 清少納言◆夜をこめて
63 三条院を激怒させた「没落貴族」の末路とは? 左京大夫道雅◆今はただ
64 「大山札」は百人一首にいくつあるか? 権中納言定頼◆あさぼらけ
65 朽ちるのは「干さぬ袖」か「名」か? 相模◆恨みわび
66 厳しい修行中に「桜」に呼びかけた思いとは? 大僧正行尊◆もろともに
67 「手枕」はどんな場面で差しだされたのか? 周防内侍◆春の夜の
68 歌に込められた「絶望」の深さとは? 三条院◆心にも
69 「平凡」という評価は妥当なのか? 能因法師◆嵐吹く
70 「三夕の歌」に数えられるべきはどの歌か? 良暹法師◆寂しさに
71 「まろ屋」に吹き込む風の強さは? 大納言経信◆夕されば
72 「あだ波」に喩えられるのはどんな人か? 祐子内親王家紀伊◆音に聞く
73 「大学者」はなぜ内大臣の家で「桜」を詠んだのか? 権中納言匡房◆高砂の
74 「松尾芭蕉」が詠んだ見事なパロディーとは? 源俊頼朝臣◆憂かりける
75 「しめぢの原のさせも草」は当てになるか? 藤原基俊◆契りおきし
76 権力者が詠んだ「わたの原」のスケール感とは? 法性寺入道関白太政大臣◆わたの原
77 この歌を題材にして作られた古典落語とは? 崇徳院◆瀬を早み
78 「須磨」はいつから「もの悲しい場所」になったのか? 源兼昌◆淡路島
79 「柿本人麻呂」を崇拝する父子が始めた儀式とは? 左京大夫顕輔◆秋風に
80 「黒髪の乱れ」は何を表しているのか? 待賢門院堀河◆長からん
81 「ホトトギス」にはどのようなイメージがあるのか? 後徳大寺左大臣◆ほととぎす
82 僧なのに「歌狂い」がいるのはなぜか? 道因法師◆思ひわび
83 俊成が日本文化に残した「巨大な影響」とは? 皇太后宮大夫俊成◆世の中よ
84 父に冷遇された苦労人が詠んだ「辛さ」とは? 藤原清輔朝臣◆長らへば
85 「夜明け」は来てほしいものか、来てほしくないものか? 俊恵法師◆夜もすがら
86 西行はなぜ「花」と「月」を愛したのか? 西行法師◆嘆けとて
87 歌に詠まれているのは「近景」か「遠景」か? 寂蓮法師◆村雨の
88 「身をつくす」姿を北斎はどう描いたか? 皇嘉門院別当◆難波江の
89 「男性」の立場で詠んだのか、「女性」の立場で詠んだのか? 式子内親王◆玉の緒よ
90 「涙の色」は紅くなるのか? 殷富門院大輔◆見せばやな
91 「虫の鳴き声」の違いを聞き分けられるか? 後京極摂政太政大臣◆きりぎりす
92 「沖の石」にはどんな思いが込められているのか? 二条院讃岐◆わが袖は
93 子規はなぜ実朝を「第一流の歌人」と評したのか? 鎌倉右大臣◆世の中は
94 「本歌取り」ではなぜ季節を変えるのか? 参議雅経◆み吉野の
95 「おほけなく」と言いながらも示した決意とは? 前大僧正慈円◆おほけなく
96 「散りゆく桜」と「老いていく我が身」の関係は? 入道前太政大臣◆花さそふ
97 定家が「まつほの浦」を詠んだ狙いとは? 権中納言定家◆来ぬ人を
98 「楢の小川」はどのように訳すべきか? 従二位家隆◆風そよぐ
99 後鳥羽院の歌が『百人一首』に入選したのはなぜか? 後鳥羽院◆人もをし
100 「しのぶ草」に込められた思いとは? 順徳院◆ももしきや

おわりに

 

著者プロフィール

ピーター・J・マクミランさんは、アイルランド出身。翻訳家、日本文学研究者、詩人。英文学博士。アイルランド国立大学を卒業後、米国で英文学の博士号を取得。プリンストン、コロンビア、オックスフォードの各大学の客員研究員を経て来日、現在、武蔵野大学客員教授、東京大学非常勤講師。

2008年に英訳『百人一首』で日米の翻訳賞を受賞。2016年には英訳『The Tales of Ise』(伊勢物語)、2018年には英訳『One Hundred Poets, One Poem Each』(百人一首)の2冊がPenguin Booksより出版される。『日本の古典を英語で読む』『英語で味わう万葉集』など著書多数。

 

 
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