もし時間を巻き戻せるとしたら、もう一度、母になりたいと思いますか?――母親になったことを後悔する女性23人の切実な思い『母親になって後悔してる』が刊行
2016年にドイツで発表されると、ヨーロッパで大きな反響を巻き起こし、現在、世界各国で翻訳出版が続いている、イスラエルの社会学者オルナ・ドーナトさん著『母親になって後悔してる』が新潮社より刊行されました。
オルナ・ドーナトさんが、母親になったことを後悔している23人の女性にインタビュー、女性が社会に背負わされる重荷を明らかにし、母親たちの切実な思いが世界中で共感を集めた一冊です。
「子どもを愛している。それでも母でない人生を想う。」
子どものいる女性は幸せであり、子どものいない女性は不幸である―ー。社会が押し付ける二分法のなかで、「子どもがいても不幸を感じている女性」や「母親になったことを後悔している女性」は、これまで存在しないものとされてきました。
イスラエルの社会学者であり、フェミニストでもある著者オルナ・ドーナトさんは、本書でそのタブーに切り込みます。
(1) もし時間を巻き戻せるとしたら、再び母親になりたいと思いますか?
(2) あなたにとって母になるメリットは、デメリットを上回っていますか?
この2つの質問に「ノー」と答えた23人の女性(うち5人は孫を持つ)を「母親になって後悔している」女性と捉え、丹念にインタビューを重ねました。彼女たちが勇気をもって語り出した言葉は、切実で、心を揺さぶられるものです。
「望んだわけではありません。払わなければならなかった代償です」
「結局すべては、子どもを持つためなのです。それが社会通念です」
「端的に言えば、自分に向いてないと思いました。好きじゃなかった」
「子どもへの責任感と、子どもを思う気持ちが、常にあります。重荷なんです」
「それは自分らしくないことなのです」
「母になると望むことが何もできなくなる。私たちは、そのことと闘うためのシステムを作らなければなりません」
彼女たちの言葉が示しているのは、女性が母親になり、母親としての人生を生きるなかで感じる複雑で多様な感情です。母親が多様な感情を持つのは本来なら当たり前のことですが、母親にならない女性は「わがまま」だと批判され、母親であることに不満を持てば「泣き言」だと切り捨てられ、「母親が辛いのは今だけであり、やがて必ず報われる」と諭される世の中で、こうした感情が表に出ることがありませんでした。
本書では、母親たちの多様な感情をつぶさに追っていくことで、社会が女性に押し付けている役割や、母親が強制される道徳規範などの存在を示し、女性であれば誰もが直面する理不尽さや苦しさを明らかにしていきます。
そして、母であっても独立したひとりの人間であり自由な意志と自由な感情を持つこと、また女性には母にならない選択肢も当然ありうるということを丁寧に論じていきます。
<内容紹介>
子どものことは愛している。それでも――。世界中で大反響を呼んだ一冊。
もし時間をまき戻せたら、あなたは再び母になることを選びますか? この質問に「ノー」と答えた23人の女性にインタビューし、女性が母親になることで経験する多様な感情を明らかにする。女性は母親になるべきであり、母親は幸せなものであるという社会常識の中で見過ごされてきた「女性の生きづらさ」に迫った画期的な書。
世界中で共感を集めた本書が、日本でもあるツイートをきっかけに大きな反響を!
「はあ、わかる。わかりみ本線日本海。ああああ、どうしたらいいのやこの気持ち」
はあ、わかる。わかりみ本線日本海。ああああ、どうしたらいいのやこの気持ち pic.twitter.com/gXmIlAvwus
— 村井理子 (@Riko_Murai) March 25, 2022
翻訳者でエッセイストの村井理子さんが本書の写真とともに投稿した短いツイートが、深い共感とともにリツイートされ、またたく間にSNS上に広がりました。
子どもを愛していても、時に母親という役割の重さに耐えられなくなる。そうした心情をかかえる母親は少なくないようです。このタイトルを見た人や、本書をすでに読んだ人から、複雑な感情を吐露するツイートが次々と投稿されています。
「たしかにこの社会は女性に多大な負担をかけてる」「後悔はしていないけど、母でいるのがしんどい時がある」「女性には母性があるという価値観が辛い」「私の母もきっとそう感じていたと思う」「子どもを持つ前に読んでおきたい」「子どものいる人もそうでない人にも救いになる本だ」
また、『BUTTER』や『らんたん』の著者である柚木麻子さん、そして『母がしんどい』や『ママだって、人間』で知られる田房永子さんからは本書に推薦コメントが寄せられています。
◆柚木麻子さん(小説家)
読み終えた時、真っ先に感じたのは救いだ。すべての女性に本書を手に取ってもらいたいと思う。
◆田房永子さん(漫画家)
彼女たちの言葉によって、母としての「口をつぐまされている部分」がほぐれていくのを感じた。
これまでタブーとされてきた「母親になった後悔」について、女性の感情に寄り添いながら、冷静かつ説得的に論じた本書。これからますます広がっていきそうです。
本書の構成
はじめに
後悔について話すとき、私たちは何について話しているのか
研究について
本書のロードマップ
1章 母になる道筋
社会の指示vs女性自身の経験
「自然の摂理」または「選択の自由」
流れにまかせて
子どもを持つ隠された理由
意志に反して母になることに同意する
2章 要求の多い母親業
母は、どのように見て、行動し、感じるべきか
「良い母親」と「悪い母親」:彼らは常に「母親像」を追いかけている
母性のアンビバレンス
3章 母になった後悔
誰の母でもない自分になれたら
時間と記憶
後悔:取り消せないことを元に戻したいという願い
後悔と生殖と母性のかけひき
「それはひどい間違いでした」
後悔は母になったことであり、子どもではない
実現の瞬間
母であることのメリットとデメリット
母親になって後悔してる
4章 許されない感情を持って生きる
母である経験と後悔の表現
過去の私と今の私
トラウマ的な体験としての母
母性愛の絆と束縛
世話をする義務
母であること:終わらない物語
父親はどこにいる?
消し去る空想
子どもと離れて暮らす
子どもを増やすか否か
5章 でも、子どもたちはどうなる?
母になったことの後悔─沈黙と発言のはざまで
話そうとする・沈黙を保つ
「子どもたちは知っているの?」
後悔について沈黙することで、子どもを守る
知らせることで、子どもを守る
6章 主体としての母
後悔から学ぶ
母親への働きかけ:長所と短所
母であることの満足度:条件だけが問題なのか?
客体(オブジェクト)から主体(サブジェクト)へ:人間としての母、関係性としての母性
エピローグ
著者プロフィール
■著者:オルナ・ドーナト(Orna Donath)さん
イスラエルの社会学者(博士)、社会活動家。テルアビブ大学で人類学と社会学の修士号、社会学の博士号を取得。
2011年、親になる願望を持たないユダヤ系イスラエル人の男女を研究した初の著書『選択をする:イスラエルで子どもがいないこと』を発表。2冊目となる本書は2016年に刊行されるとヨーロッパを中心に大きな反響を巻き起こし、世界各国で翻訳が進んでいる。
学術研究に加えて、イスラエルのレイプ危機センターの理事会の議長を務め、12年以上にわたってボランティア活動を行っている。
■訳者:鹿田昌美(しかた・まさみ)さん
国際基督教大学卒業。小説、ビジネス書、絵本、子育て本など、70冊以上の翻訳を手掛ける。近年の担当書に『世界を知る101の言葉』(Dr.マンディーブ・ライ著/飛鳥新社)、『いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる最高の子育てベスト55』(トレーシー・カチロー著/ダイヤモンド社)、『人生を変えるモーニングメソッド』(ハル・エルロッド著/大和書房)などがあるほか、
著書に『「自宅だけ」でここまでできる!「子ども英語」超自習法』(飛鳥新社)がある。
母親になって後悔してる オルナ・ドーナト (著), 鹿田 昌美 (翻訳) 子どもを愛している。それでも母でない人生を想う。 社会に背負わされる重荷に苦しむ23人の切実な思い。世界中で共感を集めた注目の書! |
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