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宮口幸治さん『ケーキの切れない非行少年たち』が上半期ベストセラーランキングで新書「3冠」! 連載マンガ化も

宮口幸治さん著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)

宮口幸治さん著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)

出版取次大手の日本出版販売(日販)とトーハンは5月29日、今年上半期(集計期間:2019年11月24日~2020年5月23日)のベストセラーランキングを発表しましたが、新書部門(教養新書)で、日販、トーハンともに1位となったのは、宮口幸治さん著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)でした。
5月28日に発表されたオリコン上半期ランキングの「新書1位」とあわせて、同書は「3冠」を達成したことになります。

 

人口の10数%いる「境界知能」の人々

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いる、という事実に気づきます。

 
たとえば、本書の帯のイラストには著者が医療少年院に勤めていた時、「ケーキを三等分する」という課題に対して在院中の少年が出した答えの一例が掲載されています。

少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いましたが、さらに驚くべきは、これを描いた少年たちが、殺人や強姦致傷などの凶悪な犯罪を起こしている、という事実です。

 
問題の根深さは、普通の学校でも同じ状況がある、ということです。こうした「境界知能」の人々は、人口の実に10数%いるというのです。「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開したのが、この一冊です。

 
<本書の構成>

はじめに

第1章 「反省以前」の子どもたち
「凶暴で手に負えない少年」の真実/世の中のすべてが歪んで見えている?/面接と検査から浮かび上がってきた実態/学校で気づかれない子どもたち/褒める教育だけでは問題は解決しない/一日5分で日本が変わる

第2章 「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年
ケーキを切れない非行少年たち/計算ができず、漢字も読めない/計画が立てられない、見通しがもてない/そもそも反省ができず、葛藤すらもてない/自分はやさしいと言う殺人少年/人を殺してみたい気持ちが消えない少年/幼児ばかり狙う性非行少年

第3章 非行少年に共通する特徴
非行少年に共通する特徴5点セット+1【/ 認知機能の弱さ 】見たり聞いたり想像する力が弱い「/不真面目な生徒」「やる気がない生徒」の背景にあるもの/想像力が弱ければ努力できない/悪いことをしても反省できない【/ 感情統制の弱さ 】感情を統制できないと認知機能も働かない/ストレス発散のために性非行/ “怒り”の背景を知らねばならない/ “怒り”は冷静な思考を止める/感情は多くの行動の動機づけである【/ 融通の利かなさ 】頭が硬いとどうなるのか?/BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)/学校にも多い「融通の利かない子」/融通の利かなさが被害感につながる【/ 不適切な自己評価 】自分のことを知らないとどうなるのか?/なぜ自己評価が不適切になるのか【?/ 対人スキルの乏しさ 】対人スキルが弱いとどうなるのか?/嫌われないために非行に走る?/性の問題行動につながることも【/ 身体的不器用さ 】身体が不器用だったらどうなるのか?/不器用さは周りにバレる/身体的不器用さの特徴と背景

第4章 気づかれない子どもたち
子どもたちが発しているサイン/サインの「出し始め」は小学2年生から/保護者にも気づかれない/社会でも気づかれない「/クラスの下から5人」の子どもたち/病名のつかない子どもたち/非行化も懸念される子どもたち/気づかれないから警察に逮捕される

第5章 忘れられた人々
どうしてそんなことをするのか理解不能な人々/かつての「軽度知的障害」は人口の14%いた?/大人になると忘れられてしまう厄介な人々/健常人と見分けがつきにくい「/軽度」という誤解/虐待も知的なハンディが原因の場合も/本来は保護しなければならない障害者が犯罪者に/刑務所にかなりの割合でいる忘れられた人々/少年院にもいた「忘れ られた少年たち」/被害者が被害者を生む

第6章 褒める教育だけでは問題は解決しない
褒める教育で本当に改善するのか?/「この子は自尊感情が低い」という紋切り型フレーズ/教科教育以外はないがしろにされている/全ての学習の基礎となる認知機能への支援を/医療・心理分野からは救えないもの/知能検査だけではなぜダメなのか「?/知的には問題ない」が新たな障害を生む/ソーシャルスキルが身につかない訳/司法分野にないもの/欧米の受け売りでは通用しない

第7章 ではどうすれば? 1日5分で日本を変える
非行少年から学ぶ子どもの教育/共通するのは「自己への気づき」と「自己評価の向上」/やる気のない非行少年たちが劇的に変わった瞬間/子どもへの社会面、学習面、身体面の三支援/認知機能に着目した新しい治療教育/学習の土台にある認知機能をターゲットにせよ/新しいブレーキをつける方法/子どもの心を傷つけないトレーニング/朝の会の1日5分でできる/お金をかけないでもできる/脳機能と犯罪との関係/性犯罪者を治すための認知機能トレーニング/被虐待児童の治療にも/犯罪者を納税者に

あとがき

 

大きな反響を呼んで「50万部」の大台に

「”三等分“したケーキの図」に代表される衝撃的な内容に、「私の過去を物語っているような内容に驚愕しました。元非行少女として、本当に本当に良かったです。もっと早く会いたかった」(少年院経験者の女性)、「教育関係者はみんな読んだほうがいい」(養老孟司さん)など、多くの反響が寄せられました。

その結果、昨年7月の刊行以来20回以上の重版がかかり、今年5月中旬には、「50万部」を突破することになりました。

 

「くらげバンチ」でも連載開始

イラスト:鈴木マサカズさん

イラスト:鈴木マサカズさん

ちなみに、同書はマンガ化され、「くらげバンチ」(https://kuragebunch.com/)で、6月12日(金)から連載がスタートします。

◆「ケーキの切れない非行少年たち」
【原作】宮口幸治さん
【漫画】鈴木マサカズさん

(C)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

(C)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

 

 


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