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泣きつく・途方に暮れる・踏みたおす・開きなおる・貸す――文豪59人の借金名言集『文豪と借金』刊行

『文豪と借金』(編:「文豪と借金」編集部/解説:荻原魚雷さん)

『文豪と借金』(編:「文豪と借金」編集部/解説:荻原魚雷さん)

借金という視点で見ると、文豪たちは、周囲の人物に甘えて際限なく借金を繰り返して破滅したり、様々な迷惑をかけていながらも、まったく気にしていないような人が多くいます。

そんな文豪59人の借金にまつわる随筆・書簡・小説・詩などの作品を集めた借金名言集『文豪と借金』(編:「文豪と借金」編集部/解説:荻原魚雷さん)が方丈社より刊行されました。

 

太宰治「ふざけたことに使うお金ではございません。たのみます」、芥川龍之介「神経衰弱癒るの時なし」――この借金にして、この名作あり

文豪といえども、お金のことになると、なりふりかまっていられない。
――本書では、そんな文豪たちの赤裸々な姿が描かれた作品の数々を紹介。

 
「ふざけたことに使うお金ではございません。たのみます」(太宰治)
「若し、無理に庵を押し出されるような事があれば、意識的に、食を絶って、放哉、死にます……」(尾崎放哉)
「何故かうかとなさけなくなり、弱い心を何度も叱り、金かりに行く」(石川啄木)

…など、笑って読んでいたはずが、すべてをさらけ出しながらも、筆致が光る文章に次第に胸を打たれます。

 
なお、方丈社では本書の発売に合わせ「文豪と借金」名言しおりを作成。10冊以上の注文があった書店に順次発送するとのことです。読者の方の地元の書店で出会えるかもしれませんね。

 

『文豪と借金』収録作品一覧

1章 泣きつく
太宰治「太宰治の手紙」/尾崎放哉「書簡」/石川啄木「啄木の借金メモ」(宮崎郁雨)/森茉莉「借金」/芥川龍之介「芥川龍之介書簡集」/尾崎一雄「暢気(のんき)眼鏡」/内田百間「書簡」/太宰治「悶悶日記」/
国木田独歩「破産」(国木田治子)/北杜夫「或(あ)る生」/木山捷平「酔いざめ日記」/内田百間「無恒債者無恒心(五)」/田村隆一「青山さん」/大泉黒石「人間開業」

2章 途方に暮れる
樋口一葉「日記」/石川啄木「悲しき玩具」/山之口貘「借金を背負って」/葛西善蔵「子をつれて」/幸田文・徳川夢声「問答有用」/木山捷平「北京の借金」/芥川龍之介「芥川龍之介書簡集」/赤塚不二夫「新漫画党の仲間たち/寺田ヒロオ」/山本周五郎「青べか日記」/林芙美子「放浪記」/橘外男「或る百万長者と文士の物語」/戸川残花「史談会速記録」/大宅壮一「現代借金論」/葛西善蔵「貧乏」/松林伯円「松林伯円(経歴談)」

3章 踏みたおす
川端康成「借金の名人/川端康成の金銭感覚」(梶山季之)/坪田譲治「借金について」/勝海舟「清話の調べ(31・10・23)」/吉行淳之介「天ぷら屋の借金」/井原西鶴「門柱も皆かりの世」/田中小実昌「西荻窪の借金」/斎藤緑雨「作家苦心談」/種田山頭火「其中(ごちゅう)日記」/小池重明「アマ名人となる」(団鬼六)/草野心平「借金の証文」/池田満寿夫「池田満寿夫 ぼくから借金した唯一の男」(田村隆一)/古今亭志ん生「震災前後」/薄田泣菫著「天文学者」/壺井栄「苦労のご破算」/正岡子規「正岡子規」(夏目漱石)/山口瞳「リカ王」

4章 開きなおる
葉山嘉樹「集金人教育」/坂口安吾「詩境と借金」/室生犀星「借金の神秘」/河盛好蔵「借金」/辻潤「ふもれすく」/草森紳一「世にいう「生活」などとはとっくに無縁となっている」/桂文治「掛け取り」/色川武大「宿六/色川武大」(色川孝子)/尾上菊五郎「借金」/佐多稲子「借金の感じ」/竹内浩三「金がきたら」/山口瞳「借金もまた財産なり」/青山二郎「青山二郎の話」(宇野千代)/武者小路実篤「遺言状」/内田百間「無恒債者無恒心(四)」/久米正雄「小鳥籠」/豊島与志雄「程よい人」/十返舎一九「借金を質に置く文」

5章 貸す
夏目漱石「書簡」/尾崎士郎「借金について」/渋澤敬三「借金を返した話」/夢野久作「近世快人伝」/吉行淳之介「また辛き哉(かな)、紳士! 」

 

解説:荻原魚雷さん プロフィール

荻原魚雷(おぎはら・ぎょらい)さんは、1969年三重県生まれ。エッセイスト。

古書に関する作品が多く、著書に『古本暮らし』(晶文社)、『本と怠け者』(筑摩書房)、『閑な読書人』(晶文社)、『日常学事始』『古書古書話』(ともに本の雑誌社)など、編著に「吉行淳之介エッセイ・コレクション」(著:吉行淳之介さん)シリーズなど。

 

 


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