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【第71回読売文学賞】島田雅彦さん、松尾スズキさん、津野海太郎さん、礒崎純一さん、川野里子さん、千葉文夫さんが受賞

第71回読売文学賞、6部門が決定!

第71回読売文学賞、6部門が決定!

読売新聞社は2月1日、同社が主催する第71回(2019年度)読売文学賞の受賞作を発表しました。

 

第71回読売文学賞、6部門が決定!

第71回読売文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。

 
■小説賞
島田雅彦(しまだ・まさひこ)さん
『君が異端だった頃』(集英社)

■戯曲・シナリオ賞
松尾スズキ(まつお・すずき)さん
『命、ギガ長ス』(白水社)

■随筆・紀行賞
津野海太郎(つの・かいたろう)さん
『最後の読書』(新潮社)

■評論・伝記賞
礒崎純一(いそざき・じゅんいち)さん
『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』(白水社)

■詩歌俳句賞
川野里子(かわの・さとこ)さん
歌集『歓待』(砂子屋書房)

■研究・翻訳賞
千葉文夫(ちば・ふみお)さん
『ミシェル・レリスの肖像』(みすず書房)

 
選考委員は、池澤夏樹さん(作家)、荻野アンナさん(作家、仏文学者)、川上弘美さん(作家)、川村湊さん(文芸評論家)、高橋睦郎さん(詩人)、辻原登さん(作家)、沼野充義さん(文芸評論家、ロシア・東欧文学者)、野田秀樹さん(劇作家)、松浦寿輝さん(詩人、作家、批評家)、渡辺保さん(演劇評論家)。

 
受賞者には正賞の硯(すずり)と副賞の200万円が贈られます。贈賞式は2月17日午後6時より、東京・内幸町の帝国ホテルで開催。

 

読売文学賞について

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年(昭和24年)に創設されました。「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門があり、前年の作品から最も優れた作品を選んで表彰します。
なお、「随筆・紀行」は第19回から加わり、第46回からは「戯曲」を「戯曲・シナリオ」部門に改めています。

毎年11月に既受賞者をはじめ、文芸界の関係者に文書で推薦を依頼し、12月に第1次選考会、1月に最終選考会を行い、2月に受賞作品を発表しています。

 

君が異端だった頃
島田 雅彦 (著)

恥多き君の人生に、花束を!
「誰にでも少年時代はあるが、誰もがそれに呪われている。」3月生まれの幼年期から、めくるめく修業時代を経て、『優しいサヨクのための嬉遊曲』での鮮烈なデビューへと――。「オレは必ず小説家になり、空回りと空騒ぎに終始した恥ずべき高校時代を全て書き換えてやる」と誓った高校時代。「英語とロシア語両方できれば、世界の美女の半分に自分の思いを伝えられる」とロシア語漬けの大学時代。ソビエト留学中に知り合った男性に、小説を持ち込むことを勧められ、『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー後、芥川賞候補になるも、その後5回も落選するとは想像もしなかった。そして、酒の席で知り合った文豪たち――埴谷雄高、大岡昇平、安部公房、後藤明生、古井由吉、中上健次たち――は、君に伝統を保守する正統なんか目指さずに異端のままでいよ、と教えられた。そしてその間に繰り広げられた、妻がある身の最低男による華麗なる遍歴と、不埒な煩悶に翻弄される日々……。デビューから36年を経た著者が赤裸々に物語る、自伝的青春「私」小説!

命、ギガ長ス
松尾 スズキ (著)

オタクやツナミと同じく、世界に通用する日本語の一つになった言葉──「ひきこもり」は、1980年代から90年代にかけて増大した。彼らは自立するチャンスを失い続けたまま歳を重ね、新たな社会問題を引き起こしてもいる。年老いた親がニートである中高年の子供をわずかな年金で養い続けるという現象だ。中高年のひきこもりは現在、日本で60万人を超えると言われている。彼らの遠くない未来に待つのは親の介護やその死。その現実に直面したとき、どうふるまうのか?
ドキュメンタリー映像作家志望の女子大生が、ある福祉大学からの紹介をへて、「8050問題」の親子に出会った。そして、彼らが抱える問題をカメラ越しに浮彫りにしようと試みるなか、認識と記憶の儚さにさらされてゆくのだが……ハッピーエンドにするには、命が長すぎる。
東京成人演劇部の第一弾として、巻末に安藤玉恵との「解説対談」を収録。少人数で演劇を作る楽しさを教えてくれる、松尾スズキならではの「演劇論」としての戯曲。

最後の読書
津野 海太郎 (著)

老人になってしみじみわかる。これぞ本当の読書の醍醐味! ついに齢八十。目は弱り、記憶力はおとろえ、本の読み方・読みたい本も違ってきた。硬い本はもう読めないよ、とぼやきつつ先人たちのことばに好奇心をかきたてられる。鶴見俊輔、幸田文、山田稔、天皇と皇后、メイ・サートン、紀田順一郎、吉野源三郎、伊藤比呂美……。筋金入りの読書家による、滋味あふれる読書案内。

龍彦親王航海記:澁澤龍彦伝
礒崎 純一 (著)

不世出の異才の生涯を辿る

2019年は澁澤龍彦の生誕91年目にあたる。生前に残した膨大な作品群は根強い人気を誇り、今なお若い読者を惹きつけてやまない。本書は、澁澤と交流をもった最後の世代の編集者であり、2006年に『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』を編纂した著者が、知られざる逸話を交えながら不世出の異才の歩みを明らかにする初の試みである。
生い立ちと幼少年期、多感な青年時代。同時代を生きた盟友、出口裕弘や松山俊太郎、種村季弘、三島由紀夫、多田智満子、生田耕作、加納光於、野中ユリ、土方巽、稲垣足穂、加藤郁乎、池田満寿夫、巖谷國士、唐十郎、高橋睦郎、金子國義、四谷シモンらとの出会い。澁澤が彼らと交わした書簡や関係者の証言など未公開資料を盛り込みつつ、若き日の雑誌社でのアルバイト、岩波書店の校正室で知り合った最初の妻・矢川澄子、サド裁判、1960年代から80年代にかけて時代を映す出版物を次々と刊行した版元との関わり、雑誌「血と薔薇」編集長としての仕事、二度目の妻・龍子との出会い、晩年の生活にも触れられる。
戦後の日本で、フランス文学の紹介者として、翻訳家、小説家、エッセイスト、アンソロジストとして、日本文学史上に唯一無二の足跡を残した澁澤の文学と人生を一望する1冊。

歓待―川野里子歌集 (かりん叢書)
川野里子 (著)

著者第6歌集

途絶えることなくある人間への静かな熱情、そういうものを今、思う。次第に狭量になってゆく世界で、枯れ枝のような一人の老人は、小さな献身の連続によって温められ、尊い命となることができた。それは何という命への歓待であったことか。この歓待こそ時代への抗いなのだ。(川野里子・本書「あとがき」より)

ミシェル・レリスの肖像
千葉 文夫 (著)

没後30年、死後の生において「栄光」を手に入れたかに見えるミシェル・レリス。20世紀フランスにおける特異な存在である「文脈から逸脱をつづける人」について共振する、エレガントな研究エッセー。

 
【関連】
読売文学賞:表彰・コンクール(文化・スポーツ・国際)のお知らせ

 


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