本のページ

SINCE 1991

【第11回新井賞】小川糸さん『ライオンのおやつ』が受賞

小川糸さん著『ライオンのおやつ』(ポプラ社)

小川糸さん著『ライオンのおやつ』(ポプラ社)

カリスマ書店員・新井見枝香さんが主宰する個人賞「第11回新井賞」が発表され、小川糸さん著『ライオンのおやつ』(ポプラ社)が受賞作に選出されました。

 

「新井賞」とは

「本屋の新井が作った賞です。
この半年で、いちばんおもしろかった本をたった一人で選び、勝手に表彰します。
偶然ですが、芥川賞・直木賞と同じ日に発表です。賞金はありません。」

(―HMV&BOOKSオンラインページより引用)

 
「新井賞」は、HMV&BOOKSの書店員・新井見枝香さんが2014年に創設したもの(創設当時は三省堂書店勤務)で、個人的に推したいと選定した本を独断で選出するという異色の文学賞になります。

これまでに10回開催されており、今回2019年下期が第11回。
発表の直前となったタイミングで「一番面白かった本は何か」と自分に問い掛け、ぱっと浮かんだ1冊を発表しているとのことです。

 
毎年芥川賞・直木賞と同日に発表されることでも話題ですが、近年では受賞作が芥川・直木賞を受賞した作品より売れる店舗も出てくるほどで、業界だけでなく世間の注目度も急上昇中のイベントです。

 

受賞作『ライオンのおやつ』について

『ライオンのおやつ』は昨年10月にポプラ社より刊行。人が懸命に生きていく姿・真摯に死と向き合う姿を描いた本作は発売直後から熱い支持を集め、現在12万部を突破しています。

瀬戸内の島にあるホスピスを舞台に、若くして余命を宣告された主人公が周りの人々とともに残された日々を生きていく物語です。

著者の小川糸さんは2008年に『食堂かたつむり』でポプラ社よりデビューし、以後食べることや生きることをテーマにした数々の傑作を送り出されてきましたが、今作はそうした意味で真骨頂とも言える、新たな代表作となりました。

 
<あらすじ>

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――

33歳にして余命を宣告された雫は、瀬戸内にある島のホスピス「ライオンの家」で残りの日々を過ごすことを決める。

「ライオンの家」では、毎週日曜日、入居者がもう一度食べたいおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。

食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。

★『ライオンのおやつ』特設ページ:https://www.poplar.co.jp/pr/oyatsu/

 
<小川糸さん プロフィール>

小川糸さん

小川糸さん

小川糸(おがわ・いと)さんは、1973年生まれ。2008年『食堂かたつむり』でデビュー。以降数多くの作品が様々な国で出版されている。

『食堂かたつむり』は、2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞。

2012年には『つるかめ助産院』が、2017年には『ツバキ文具店』がNHKでテレビドラマ化され、『ツバキ文具店』と『キラキラ共和国』は「本屋大賞」にノミネートされた。

その他著書に『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』『ミ・ト・ン』など。

 

新井見枝香さん「あるシーンが悲しい記憶とリンクした、泣いた」

新井見枝香さんによる個人賞「新井賞」の第11回受賞作が決定したことを記念して、”1億人の本と本屋の動画投稿サイト”「本TUBE」では新井見枝香さんにインタビューを開催。新井さん本人に『ライオンのおやつ』を選出した経緯や作品への思い入れを伺っています。

 

 
「タイトルの「ライオンのおやつ」っていうのはどういうことかというと、作中のホスピスで「最後に食べたいおやつは何ですか?」って聞いてもらえるんです。

主人公の彼女のもとには誰も面会の人は来ない。33歳の女の子で誰も来ないっていうのは、ちょっとおかしいなって私も読んでて思いました。で、それが最後、彼女にどんなことが起きるかっていうのが、この物語の一番山場です。

この本を新井賞に選んだ理由は本当に個人的な理由です。本っていうのは読む人の気持ちの状態とか、過去に何があったかっていうので印象が大きく違うと思います。この中に出てくる、なんてことない、おでんのシーンがあるんですが、そこが私の強い悲しい記憶にリンクしたので、これを選びました。でもその悲しい記憶を思い出して泣いたのはもちろんそうなんですけど、これを読んだ時に、その悲しくて悔しくてかたまった気持ちが、本当に何年も経っているんですけど、ようやく昇華できた気がして、この本を今このタイミングで読んだことが本当に良かったなと私は思いました。なので全ての人にこの本が私のように響くかと言ったら、絶対そんなことはないと思うんです。でも新井賞なんで、私が選ぶ賞なので、この本が一番おもしろかったですということは、お伝えしたいです。」

 
<新井見枝香さん プロフィール>

新井見枝香(あらい・みえか)さんは、1980年生まれ。東京都出身。アルバイトで書店に勤務し、契約社員の数年を経て、現在は正社員として本店の文庫を担当。文芸書担当が長く、作家を招いて自らが聞き手を務める「新井ナイト」など、開催したイベントは300回を超える。

独自に設立した文学賞「新井賞」は、同時に発表される芥川賞・直木賞より売れることもある。出版業界の専門紙「新文化」にコラム連載を持ち、文庫解説や帯コメントなどの依頼も多い。テレビやラジオの出演も多数。

 

ライオンのおやつ
小川 糸 (著)

余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。毎日をもっと大切にしたくなる物語。

 
【関連】
第11回新井賞発表
第11回新井賞『ライオンのおやつ』|本の動画投稿コミュニティサイト「本TUBE」

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です