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「第11回ポプラ社小説新人賞」受賞作品が3ヶ月連続刊行 第1弾は菰野江名さん『つぎはぐ、さんかく』

第11回ポプラ社小説新人賞受賞作品が3ヶ月連続刊行

第11回ポプラ社小説新人賞受賞作品が3ヶ月連続刊行

ポプラ社は、2021年12月に発表された「第11回ポプラ社小説新人賞」で新人賞を受賞した1作品、特別賞を受賞した2作品の全3作品の単行本を、2023年1月~3月まで3ヶ月連続刊行します。

 
第11回ポプラ社小説新人賞では、過去最多の1251作の応募がありました。一次選考では97作、二次選考では35作が選ばれ、その後三次選考を経て最終候補作として11作品を選出しました。11名の選考委員が臨んだ最終選考会では、8作品が入賞しました。

その中で、新人賞を獲得した菰野江名さんの『つぎはぐ、さんかく』(応募時タイトル:「つぎはぐ△」)、特別賞を受賞した川上佐都(応募時筆名:葉柳いち)さんの『街に躍ねる』(応募時タイトル:「踊動」)と、冬野岬(応募時筆名:原竜一)さん『毒をもって僕らは』((応募時タイトル:「とべない花を手向けて」)の3作品が1~3月に刊行となります。

 

1月刊行『つぎはぐ、さんかく』(菰野江名さん)

選考委員満場一致、新人賞受賞作。
惣菜屋を営む3きょうだいを、温かなまなざしで描き出した作品です。
1月30日(月)頃に発売となります。

第11回ポプラ社新人賞で、選考員の満場一致で選ばれた本作。著者は、現役の裁判書記官でありながら、本作で作家デビューとなった菰野江名(こもの・えな)さん。
物語は、小さな惣菜屋を営みながら、自分たちだけで生活している3兄弟の物語。本来一緒に過ごすことのなかった血のつながらない3人はなぜ「家族」として過ごしているのか 。
互いを想い合うことで傷つきながらも、彼らが懸命に進んだ先に見つけた“答え”に胸が熱くなります。
「家族とは?」「一緒に生きていく意味とは?」 …多様性がうたわれる今の時代だからこそ、多くの人の心に強く残るはずです。

 
【あらすじ】

「たとえそのつぎ目が不格好でも、
つながっていられればそれでいいと思っていた。」

惣菜と珈琲のお店「△」を営むヒロは、晴太、中学三年生の蒼と三人兄弟だけで暮らしている。ヒロが美味しい惣菜を作り、晴太がコーヒーを淹れ、蒼は元気に学校へ出かける。
しかしある日、蒼は中学卒業とともに家を出たいと言い始める。これまでの穏やかな日々を続けていきたいヒロは、激しく反発してしまうのだが、三人はそれぞれに複雑な事情を抱えていた――。

傷つきながらも身を寄せ合って生きてきた三人が、懸命に明日を紡いでいくための物語。

 
<選考委員の声>

冒頭から独特の世界観に心を掴まれた。
家族とは、自己とは……身を寄せ合って生きてきた3人の出した答えに、深い感動が込み上げる。
あたたかい優しさで包みこんでくれるような傑作だと思う。

作品の雰囲気やたたずまいがとてもよい。
主人公が自身のルーツに触れて、ようやくたどり着いた心境にリアリティと静かな感動がある。

全体的に漂う空気、完成された世界。完璧な映画を観たような充実感と余韻があり、この優れた書き手をポプラ社から世に送り出せることが、本当に嬉しくてたまらない。

 
【著者・菰野江名(こもの・えな)さん プロフィール】

1993年生まれ。三重県出身、東京都在住。
現役の裁判所書記官 として働きながら、『つぎはぐ、さんかく』(応募時の「つぎはぐ△」を改題)にて第11回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビュー。

〔著者メッセージ〕
素朴で必死な三人の暮らしを書きました。
読後、誰かとごはんが食べたい気持ちになってもらえたら嬉しいです。

 
◆ポプラ社デビューの人気作家から応援の声ぞくぞく!

◇小川糸さん
ページをめくるたびに、炊きたてのご飯や湯気のたつお惣菜、ひきたてのコーヒーなど、様々な香りが漂ってきて胸がいっぱいになりました。
主人公のヒロが、自分の足で、手で、自らの世界を広げていく。その姿に勇気をもらい、感動しました。
晴太と蒼、それぞれの温もりが最高です。

◇伊吹有喜さん
丁寧に作られるお惣菜と、穏やかに流れる時間。
ちょっぴり疲れた心のほころびもそっと継ぎ合わせてくれそうな物語です。

◇小野寺史宜さん
ヒロのいい意味での折り合いのつけ方がとてもよかったです。
タイトルの 、つぎはぐ 、もいいですね。 口にしたくなる言葉です 。
三兄弟のお話でスタートを切った菰野さん。
次は何を読ませてくれるのか。 期待しています 。

◇寺地はるなさん
大切な友人の話に静かに耳を傾けるように読んでほしい本です。

 

2月刊行『街に躍ねる』(川上佐都さん)

特別賞受賞作。
兄弟の絆を通じて、人と違うことの苦しさ、素晴らしさを描いた感動作です。
2月15日(水)頃に発売となります。

 
【あらすじ】

小学生五年生の晶と高校生の達は、仲良しな兄弟。物知りで絵が上手く、面白いことを沢山教えてくれる達は、晶にとって誰よりも尊敬できる最高の兄ちゃんだ。でもそんな兄ちゃんは、他の人から見ると普通じゃないらしい。晶以外の人とのコミュニケーションが苦手で不登校だし、集中すると全力で走り出してしまう癖があるから。

 
<選考委員の声>

瑞々しく純粋な感性と、極めて現実的で容赦のない描写が共存しており、その対比がこの作品の無二の魅力を作り出していると思った。
人は常に誰かと違うということ、違いを知ろうとすることの大事さが、限りなく真摯に描かれていると感じる。

今日的な問題をはらんでいて、最後まで一気に読ませる筆力がある。
一見、世間的な常識の「外」にいる主人公の兄の存在が、家族というものの「在り方」を読者に絶妙な形で突きつけてくる。そのバランスが心地よい。

兄の凄さが世間のものさしから外れていることに対するもどかしさや歯がゆさ、そして純粋だからこそ感じる世の中への疑問が、小学生の視点を通して描かれていて、その率直さとリアリティが素晴らしいと感じた。

 

3月刊行『毒をもって僕らは』(冬野岬さん)

※カバーデザインは調整中です

※カバーデザインは調整中です

特別賞受賞作。
時代の汚れにまみれながらも、懸命に生きる高校生たちの、胸に迫る青春小説。
3月15日(水)頃に発売となります。

 
【あらすじ】

高校生の木島道歩は、尿路結石で入院していた病院で16歳の誕生日を迎えた。またみんなに馬鹿にされる……。そんな木島に「ねえ、君にお願いがあるんだ」と声をかけてきたのは、不治の病とたたかう綿野という少女だった。「この世界の、薄汚い、不幸せなことを私に教えてくれないか。もっと、もっと、もっと」――。二人は「生きる証」を打ち立てようと、嘲笑と裏切りを突き抜けて進んでいく。

 
<選考委員の声>

生への執着と情熱が暴れまわり、渦巻いている。
滑稽で、悲愴で、ときに甘美。
勢いのある物語の進行は多様な感情を引き連れて、ゴールへと進んでいく。
面白い、とにかく面白い。

露悪的な描写が並んでいるが、それを含んでいる「この世界」を、結果として生きていくしかないというメッセージがきちんと伝わってくる。
キャラクターも一筋縄でいかない人物ばかりだが、最後は愛しく感じる。

読んでみたら良い意味で予想を裏切られた。
1行目から引き込まれて、ヒリヒリしながら読めた。牽引力がある。
きれいごとではない生々しい言葉の一つ一つにとても惹かれる。
心を切り裂いていくような鋭さに、オリジナリティを感じた。

 

つぎはぐ、さんかく
菰野 江名 (著)

 
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