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呉勝浩さん『スワン』重版! 呉さん×芦沢央さん対談をカドブンで公開 芦沢さん「こんなもの書かれたらたまったもんじゃないわ」

呉勝浩さん(撮影:小嶋淑子さん)

呉勝浩さん(撮影:小嶋淑子さん)

KADOKAWAは10月31日に、呉勝浩(ご・かつひろ)さんの最新小説『スワン』を刊行しましたが、同書は発売前から反響が大きく、このたび緊急重版が決定しました。

また、呉勝浩さんと芦沢央さんの対談も文芸Webマガジン「カドブン」にて公開中です。

 

芦沢央さん×呉勝浩さん白熱対談をカドブンにて公開中!

芦沢央さん『カインは言わなかった』と呉勝浩さん『スワン』。刊行を機に、お二人の対談が実現。作品のことから創作論まで、バッチバチの対談の一部を以下に掲載します。

撮影:小嶋淑子さん/構成:瀧井朝世さん

撮影:小嶋淑子さん/構成:瀧井朝世さん

<対談より> ※敬称略

こんなもの書かれたらたまったもんじゃないわ(芦沢央)

芦沢:『スワン』もめちゃくちゃ面白くて、「こんなもの書かれたらたまったもんじゃないわ」というのがまず褒め言葉としてあるんです。で、私もいろいろ訊きたいことがあるんです。スワンというショッピングモールで無差別殺人が起きて、生き残った人たちが謎の人物にお茶会に集められて、当日の行動を確認される。「あの時なぜああしたのか」「こうしたほうが良かったんじゃないか」って追い詰められていくなかで、生き残った一人、バレエをやっている女子高生の片岡いずみが、ある人物と対決しますよね。あそこはある意味、エンタメとしてのクライマックスじゃないですか。呉さんの作品ってこれに限らず、エンタメとして面白いものを書くんだという覚悟を感じて、だからこそそこに収まりきらない何かが際立っていると思うんですが、これもそういう場面。恐ろしい理不尽な出来事が起こって、それに飲み込まれていく人たちという、生半可な気持ちでは絶対書けないものを、すごい覚悟を持って書いたうえで、でもエンターテインメントしている。あのシーンを書く時に迷いはなかったんでしょうか。

呉:自分ではむしろエンタメとして成立しているかどうかはギリギリだなという感じがあって。僕は驚きをどうぞ、みたいな感じはあまり得意でないし、仕掛けを施してミスリードをさせて、みたいなものは自分のやりたいこととはちょっと違ってしまうんです。まあ、エンタメ魂があるかって訊かれたら、「ありますよ」と取材では言いますけれど(笑)。あのシーンに関しては、書くのはわりと迷いがなかったですね。むしろ書こうという気持ちがあった。エンタメだからという意味だけでもなくて、ちゃんと書いておかねばならんだろうなっていうのがあって。

芦沢:エンタメにしようという目的ではなかったんですね。

呉:自分にとって面白いものってエンタメなんです。どんな小難しい議論も、自分が面白いと思ったらわりとエンタメだと思っちゃうので、そこはあまり線引きして書いている気がしませんね。

芦沢:前半、いろんな情報が伏せられているじゃないですか。最後の最後まで引っ張る謎がある。ミスリードは意識しないけれど伏せておくということなんでしょうか。風呂敷の広げ方だってめっちゃ上手いじゃないですか。どんだけ広げるんだっていう。

呉:それは何も考えていないから広げられるんです。そんなもんね、畳み方を細かく考えたら広げられないですよ。広げてみてから考えるという。

芦沢:広げて広げて、畳み切っていますね。

呉:まあ、なんとかやりたいことはできたかなという感じにはなっています。僕がいちばん大切にしているのは、基本的にINGなんですよ。読んでいるその瞬間、楽しいか楽しくないかってことをいちばんに考えたい。謎かけも伏線も、今読んでいるこの瞬間に面白いと思えるようにやりたいなと。
で、後で辻褄合わせを必死でするんです。書き終わって、いったん作品と距離を置いて、売る側の人間の立ち位置に近いところから作品を見て、「もうちょっと分かりやすくしたほうがいいんじゃないか?」と思ったら直したりはする。でも書いている時あまりそこは考えられない。僕、事前にプロットは作らないので。

芦沢:じゃあこれは最初、どこまでプロットが……。

呉:全然なかったですね。実際に何が起こったかも決めてないし、なんでみんな集まってごちゃごちゃしてるんだろうって。

芦沢:ええっ、ええっ。

呉:いずみが最初「私はスワンにいませんでした」って言うところも、「いませんでした」って言ったほうが面白いかなと思ったからで、書いてから、なんでいなかったのかなって悩んでしまって。

芦沢:そこも決めてなかったんですか! どんだけ行き当たりばったりなんですか!! 最後に明かされる、事件の裏で実際には何があったのかということも、最初は何も決めてなかった?

呉:なかったですね。

芦沢:じゃあ、最初に決まっていたのは何だったんですか(笑)。

呉:ショッピングモールにロケハンに行って、貯水池があったんでスワンっていう名前のショッピングモールにしようと思って、スワンといったら白鳥の湖だなってなって、じゃあ、バレエさせてみっかな、みたいな……。本当にバレエについて真剣に調べて書かねばと思ったのは、第1回のお茶会が終わってからですね。でもまだ何が起こっているのか全然分かっていないから、結局、後のほうから振り返ってちょいちょい直したりしました。そういう書き方だから、僕、絶対連載はできないと思ってます。書き下ろししかできない。(※注:『スワン』は全編書きあがった後、「カドブンノベル2019年9月号」に一挙掲載された。)

芦沢:その都度、自分でも「なんでこうなんだろう?」と言いながら書いているってことですか。

呉:それがいいのか悪いのか分からないんですけれど、そういうやり方のほうが向いているというか。芦沢さんもプロットはお作りにならないとおっしゃってるじゃないですか。でも、『カインは言わなかった』はかなり入り組んだ話だし、どのタイミングでどの情報を出すかもセンシティブにやらないといけなかったでしょう? それこそ他の作品でも、長篇の『いつかの人質』や『悪いものが、来ませんように』なんかは伏線を仕込んでおかないといけないタイプの話じゃないですか。それもプロットなしでやるんですか。

芦沢:そうですね(笑)。

呉:今あなたから言われたことを全部お返しするわ!(笑)

 
※対談全文は、文芸WEBマガジン「カドブン」にてお楽しみください!
★前編:https://kadobun.jp/feature/talks/9z7effi45jk8.html
★後編:https://kadobun.jp/feature/talks/8vhx9ujlskcg.html

※文芸Webマガジン「カドブン」(https://kadobun.jp/)では『スワン』の試し読みも公開中!
★「スワン」試し読み第1回:https://kadobun.jp/serialstory/swan/dcluh04nb6gc.html

 

「悲劇」はもう一つの顔を持つ――『スワン』とは?

【あらすじ】

知っているのだろうか。
事件のさなか、わたしと彼女がとった行動を――。

巨大ショッピングモール「スワン」で起きた無差別銃殺事件。死者21名を出した悲劇の渦中で、高校生のいずみは犯人と接しながら生き延びた。しかし、同じく事件に遭遇した同級生・小梢により、次に誰を殺すか、いずみの指名によって犯行が行われたという事実が週刊誌で暴露される。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに招待状が届く。集められたのは事件に巻き込まれ、生き残った5人の関係者。目的は事件の中のひとつの「死」の真相をあきらかにすること。その日、本当に起こったこととはなんだったのか?

★『スワン』公式ツイッター(@swan_1031):https://twitter.com/swan_1031

 

呉勝浩さん プロフィール

呉勝浩(ご・かつひろ)さんは、1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。

2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞。他にも吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞の候補になるなど、話題作を発表し続けている。

著書に『ライオン・ブルー』『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』『バッドビート』がある。

 

スワン
呉 勝浩 (著)

銃撃テロを生き延びた五人。彼らは何を隠しているのか、何を恐れているのか。

首都圏の巨大ショッピングモール「スワン」で起きたテロ事件。
死者二十一名、重軽傷者十七名を出した前代未聞の悲劇の渦中で、犯人と接しながら、高校生のいずみは事件を生き延びた。
しかし、取り戻したはずの平穏な日々は、同じく事件に遭遇し、大けがをして入院中の同級生・小梢の告発によって乱される。
次に誰を殺すか、いずみが犯人に指名させられたこと。そしてそのことでいずみが生きながらえたという事実が、週刊誌に暴露されたのだ。
被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに一通の招待状が届く。集まったのは、事件に巻き込まれ、生き残った五人の関係者。目的は事件の中の一つの「死」の真相を明らかにすること。
彼らが抱える秘密とは? そして隠された真実とは。

圧倒的な感動。10年代ミステリ最後の衝撃!

カインは言わなかった
芦沢 央 (著)

芸術にすべてを懸けた男たちの、罪と罰。
エンタメ界のフロントランナーが渾身の力で書き上げた、慟哭のノンストップ・ミステリー!

「世界のホンダ」と崇められるカリスマ芸術監督率いるダンスカンパニー。
その新作公演三日前に、主役が消えた。
壮絶なしごきにも喰らいつき、すべてを舞台に捧げてきた男にいったい何があったのか。
“神”に選ばれ、己の限界を突破したいと願う表現者たちのとめどなき渇望。
その陰で踏みにじられてきた人間の声なき声……。様々な思いが錯綜し、激情はついに刃となって振るわれる。

『火のないところに煙は』で本屋大賞ノミネート。
『許されようとは思いません』続々重版中。
もっとも次作が待たれる作家の、実に2年ぶりの長篇大作!

 
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