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【訃報】作家・杉本苑子さんが死去 『孤愁の岸』で直木賞

『孤愁の岸』などで知られる直木賞作家の杉本苑子(すぎもと・そのこ)さんが5月31日、熱海市内の自宅で老衰のため死去しました。91歳。東京都出身。葬儀・告別式はすでに近親者で営んでいます。後日、お別れの会を行う予定。

 
杉本苑子さんは、1925年6月26日生まれ。文化学院卒業後、1951年に『サンデー毎日』の懸賞小説に『申楽(さるがく)新記』が選ばれ、選考委員だった吉川英治に師事。1961年に初の短編集『船と将軍』を刊行。1963年には幕府の権力に抵抗しながら治水工事を完成させた薩摩藩士の姿を描いた『孤愁の岸』で直木賞を、1978年に『滝沢馬琴』で吉川英治文学賞を、1986年に『穢土荘厳(えどしょうごん)』で女流文学賞を受賞しています。

また、『マダム貞奴』『冥府回廊』は1985年のNHK大河ドラマ『春の波濤(はとう)』の原作となっています。

1987年に紫綬褒章、1995年に文化功労者、2002年には「歴史小説の領域を広げた」として文化勲章を受章。2002年には菊池寛賞も受賞。

 
他の著書に『春日局』『悲華 水滸伝』など。

 
なお、杉本さんは 1977年に熱海市に別荘を構え、1980年に居を移しています。静岡新聞などによると、文学館の設立を条件に1995年に「著作権や土地家屋、預貯金など全財産を死後、熱海市に遺贈する」と約束し、市と調印を交わしています。「文学的に厚みのある風土なのに、文学館がないことを残念に思ってきた。執着する物を持たずに生きたいと、10代の頃から決めていた」と当時の会見で語っています。「人生の終末を迎えるに当たり、熱海のために少しでもお役に立てれば」とも。

 

孤愁の岸(上) (講談社文庫)
財政難に喘ぐ薩摩藩に突如濃尾三川治水の幕命が下る。露骨な外様潰しの策謀と知りつつ、平田靭負ら薩摩藩士は遥か濃尾の地に赴いた。利に走る商人、自村のエゴに狂奔する百姓、腐敗しきった公儀役人らを相手に、お手伝い方の勝算なき戦いが始まった……。史上名高い宝暦大治水をグローバルに描く傑作長編。

 
孤愁の岸(下) (講談社文庫)誰のために? 何のために? 慣れない重労働に、疫病で死ぬ者200名、巨大な権力に捨身の抗議をぶつけて屠腹する者50名。未曾有の難工事は薩摩藩士の死屍累々の上についに完成するのだが――。泥海の中に潰え去った男たちの無念に、平時のいくさの惨酷さを見事に描き切った著者の代表作。

 
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作家の杉本苑子さん死去 熱海在住、文化勲章受章者|静岡新聞アットエス

 


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