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プラン・インターナショナル主催「夏休み読書感想文コンクール2018」表彰式開催 角田光代さんが講評

プラン・インターナショナル主催「夏休み読書感想文コンクール2018」表彰式開催 角田光代さんが講評

プラン・インターナショナル主催「夏休み読書感想文コンクール2018」表彰式開催 角田光代さんが講評

国際NGOプラン・インターナショナルが2018年6月20日から9月10日まで募集していた「夏休み読書感想文コンクール2018 『リアル』を知る。未来が変わる。」の表彰式が11月18日に開催され、受賞者の表彰や、審査委員長を務めた直木賞作家・角田光代さんの講評などが行われました。

 

「夏休み読書感想文コンクール2018」表彰式が開催!

プラン・インターナショナルが主催する「夏休み読書感想文コンクール2018」の表彰式が、フクラシア品川クリスタルスクエア(東京・品川)で11月18日(日)13:00より開催されました。

 
本コンクールは、次世代を担う中高生に、読書を通じて過酷な環境に置かれている女の子や女性たちの「今」、「等身大の姿」、「夢や可能性」を知ってもらい、よりよい世界をつくるために何ができるかを考え、その声を発信する機会となることを目指しています。

今年で5年目を迎えたコンクールには、22の都道府県および海外の53校の中高生から979作品の応募があり、中学生、高校生が、同世代を生きる途上国の女の子への思いを感想文に綴りました。

 
【「夏休み読書感想文コンクール2018」入賞作品】

■中学の部
最優秀賞:細野 真好さん(3年)「『バナの戦争』を読んで」
優秀賞 :吉瀬 茉城さん(2年)「一人も残らず笑顔の世界に」
特別賞 :宮脇 颯大さん(3年)「未来へつなぐ」

■高校の部
最優秀賞:湯浅 果奈さん(2年)「『女子校』という選択、そしてこの先」
優秀賞 :篠原 京都さん(1年)「僕にできること」
特別賞 :乾 桜楽さん(2年) 「諦めないで」

■学校賞:関西創価高等学校、広島女学院高等学校、弥富市立弥富北中学校

 
また当日は、体験型ワークショップ「私が大統領になったら~みんなで考える途上国の今~」も行われ、学生さんたちの活発な意見交換が行われました。

当日の様子は、https://www.plan-international.jp/news/event/20181121_13014/ をご覧ください。受賞者の方たちの作品も掲載されています。

 

角田光代さん 講評

「じゃんけんに負けて本を読むことになった、というユニークな書き出しの「未来へつなぐ」ですが、宮脇颯大
さんは、この本からとても大きなものを得たと思います。その大きなものとは、想像力です。感情移入のできな
い本は苦手という宮脇さんですが、『危機の現場に立つ』には引きこまれたと書いてあります。読書にとって重要なのは、共感や感情移入ではない、想像力です。彼はこの本からそれを得て、紛争地域で暮らす人たち、働く人たちを想像し、彼らの身になって考えることができた。この本から得たものは、きっと宮脇さんを一生支え続けることと思います。

「一人も残らず笑顔の世界に」の吉瀬茉城さんは、シリアで起きている悲劇、過去に広島で起きた悲劇を、遠
い国のこと、遠い過去のことではなく、身近なものとしてとらえようとし、「平和とは何か」という大きな問いへの、身近な答えを、ご自身の言葉で得たのだと思います。

「『バナの戦争』を読んで」を書いた細野真好さんの、ボランティアについて義務感を持ってしまっていた、や
らなくてはならないと思っていた、という指摘を読み、「私もそうだったかもしれない」と、考えさせられました。義務感ではなく、「その国を思う」ということが支援だという、さりげなくも根本的な指摘に感銘を受けました。

「諦めないで」を書いた乾桜楽さんは、女の子だから差別される世界について、そういうこととは「ほぼ無縁
と思われている日本」で生まれ育ったと書いていますが、じつは、ご自身の将来の目標について、「女性には無理」と言われています。「女性だから」という理由で、権利を奪われたり天引きされることは、今なお私たちの生きるこの社会でも行われていることを鋭く指摘し、その改善を力強く訴えています。「諦めないで」という言葉は、世界じゅうの女の子へ、そして、自分自身に向けた決意の言葉なのだと思いました。私も応援します。

「僕にできること」を書いた篠原京都さんも、女性差別ははたして発展途上国だけの問題だろうかと疑問を投
げかけます。そしてそのことに無自覚だった自分も加害者となる可能性があったと考えます。そのことに私は本
当に心を動かされます。差別に関わる大人の多くは、そのような意識に対して無自覚です。その正反対のことを
考え、自分にできることからしていくと決めた篠原さんを、私はとても立派だと思います。

男女に対する固定観念に反発を抱き、女子校に進んだという、「『女子校』という選択、そしてこの先」の湯浅
果奈さんの考えが、私にはとても新鮮でした。私も女子校出身ですが、「女子だけの世界」に少々マイナスイメージを持っていました。けれども湯浅さんの感想文を読んで、女子だけだからできることがあると、あらためて気づかされました。そういえば、今まで視察にいった国々で、村の女性だけを集めて話し合いをしたときに、彼女たちがのびのびと発言していたことを思い出し、「女性限定」の持つプラス面にはじめて思い至ました。そしてそこで得たものを、女性ばかりではない社会でどう生かしていくのか、ということは、湯浅さんだけではなく、また日本だけでもなく、世界じゅうの問題であると思いました。そのことを、みごとに指摘してくれた感想文でした。

 

「夏休み読書感想文コンクール2018 『リアル』を知る。未来が変わる。」実施概要

■募集期間:2018年6月20日(水)~9月10日(月)

■課題図書

■応募資格:2018年6月時点で中学生・高校生であること

■審査員
◎審査員長:角田光代さん(直木賞作家/プラン支援者)
◎審査員:プラン関係者、協力団体関係者

■賞
◎中学生・高校生各3名を「最優秀賞」「優秀賞」「特別賞」として表彰
 ※賞品はBecause I am a Girl に関連する書籍やグッズ
◎100作品以上応募のあった学校、または全校生徒数の3割以上の応募のあった学校を「学校賞」として表彰

■後援・協力
◎主催:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
◎後援:文部科学省、外務省、国際連合広報センター、公益財団法人文字・活字文化推進機構
◎協力:公益社団法人ガールスカウト日本連盟、認定NPO法人開発教育協会(DEAR)、NPO法人16歳の仕事塾、特定非営利活動法人全国女性会館協議会

★詳細:https://www.plan-international.jp/news/event/20180605_9523

 

角田光代さん プロフィール

角田光代さんは、1967年、神奈川県生まれ。1990年に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。

『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)、『坂の途中の家』など著書多数。

 

プラン・インターナショナルとは

プラン・インターナショナルは、子どもの権利を推進し、貧困や差別のない社会を実現するために世界70カ国以上で活動する国際NGOです。

創立は1937年。長年にわたり、子どもや若者、地域の人々とともに地域開発を進めています。すべての子どもたちの権利が守られるよう、とりわけ女の子や女性への支援に力を入れています。市民社会、政府機関や国際機関と連携しながら、世界を持続的に、前向きに変えていきます。

 

■「夏休み読書感想文コンクール2018」課題図書

バナの戦争
現代版「アンネの日記」と話題の感動手記!
米「タイムズ」誌が選ぶ「ネット上で最も影響力がある25人」に選出!世界中が注目する読書好きの少女が見た戦争の姿とは?

「今夜、わたしは死んじゃうかもしれない」
シリアのアレッポから激しい内戦の状況をTwitterで世界に発信していた当時7歳(現8歳)の少女、バナ・アベドの手記。
平穏な日常を戦争と爆弾によって破壊された、少女と家族の運命は?

【心に迫るツイートの数々】
「ただ、こわがらずにくらしたい」
「おねがいだから、わたしたちの子ども時代をうばわないで」

【読書好きの少女の目線で見た戦争の姿と前を向くことば】
「ドカーン! という音がしたあと、何かが割れた。
拍手みたいだけれど、もっと大きな音だ」

「こわいときでも、同時に勇気は出せるの。
わたしにはわかる。だって、その日から何度となく、そんなことがわたしに起こったから」

「希望を捨てないで。
わたしなんて、3ヶ月爆撃が続いてもあきらめなかった。
だってつらいときは、希望が人生そのものだから」

 
危機の現場に立つ
クローズアップ現代+に著者出演で話題!国連軍縮担当事務次長であり、二人の女の子の母親である中満泉さんは、世界中の紛争地で平和活動に奮闘しています。本書は、その生々しい交渉現場から、目の当たりにした不正義への憤りと国連で働く意義、グローバルに子育てと両立して働く方法まで、これから国際協力の現場を目指す人に有意義なメッセージが詰まった1冊です!

 
わたしは13歳、学校に行けずに花嫁になる。: 未来をうばわれる2億人の女の子たち
6歳で家事使用人として売られる女の子。7歳からタバコ巻きのしごとをする女の子。夢を叶えたくても「女の子だから」という理由で自由と未来をうばわれます。

あなたも、わたしたちの未来をいっしょにつくってください。

 
Because I am a Girl――わたしは女の子だから
角田光代が訳さずにはいられなかった――!
世界を代表する7人の作家が描いた 名もなき女の子たちの物語

「作家たちが(おそらく私と同様の思いで)描き出した、幾人もの女の子たちの声を、私は私たちの言葉で、届けなくてはならなかった。」
――角田光代

本書は、国際NGOプランが推進するBecause I am a Girlキャンペーンの主旨に賛同した作家が、それぞれ異なる国のプランの活動地を取材し、その体験をもとに執筆して生まれた書き下ろし短編集です。執筆陣には『トレイン・スポッティング』のアーヴィン・ウェルシュや『ショコラ』のジョアン・ハリスなど世界一流の作家が参加しています。

角田光代さん自身も、プラン・ジャパンより依頼をうけて2009年と2011年に西アフリカ・マリの女性性器切除の撲滅活動や、インドの人身売買シェルターの様子を取材。そのルポは『CREA』や『日経ウーマン』など各誌に掲載されました。その経緯から、角田さんは本書のコンセプトに共感して翻訳を決意し、このたび出版に至ることになりました。

本書の印税・売上の一部は国際NGOプランに寄付され、途上国の子どもたちを支援する活動に役立てられます。

■Because I am a Girlキャンペーンについて
Because I am a Girlは、国際NGOプラン(本部:イギリス)が展開するグローバルキャンペーン。女性であること、そして子どもであることへの二重の差別ゆえに、様々な困難に直面する途上国の女の子たちの問題を訴え、彼女たちが「生きていく力」を身に付け、途上国の貧困が削減されることを目指します。

【以下、角田光代さんの「私も女(の子)だからこそ――まえがきにかえて」より】
この本は、私のように依頼を受けて開発途上国にいった、世界各国の作家たちによるアンソロジーである。小説を書いた人も、ルポルタージュを書いた人もいる。作品はそれぞれ異なるけれど、それぞれ訪れた国でだれしもが共通のショックを受けたことがわかる。私たちがそれぞれ暮らしているちいさな世界には、あり得ないことがそこでは次々と起こる。作家たちは傷つき、怒り、皮肉り、なんとか冷静になろうとしながら文章を書き綴っている。根底にあるのは、私が感じたのと同じ、痛烈な「なんとかしたい」である。
翻訳にかんして私はまったくの門外漢である。だから、この本を訳すなんて本当に無謀なことだとわかっていた。けれど、その依頼を引き受けないわけにはいかなかった。私はすでに、ここに登場する女の子たちを知っているのだ。知る、ということは、なんとかしたい、と思うことで、なんとかしたい、と思うことは、私のなかでは、かかわるということである。作家たちが(おそらく私と同様の思いで)描き出した、幾人もの女の子たちの声を、私は私たちの言葉で、届けなくてはならなかった。

 
【関連】
夏休み読書感想文コンクール2018 「リアル」を知る。未来が変わる。|プラン・インターナショナル・ジャパンのボランティア・寄付で途上国の子どもに支援を。
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