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【第55回文藝賞】日上秀之さん「はんぷくするもの」と山野辺太郎さん「いつか深い穴に落ちるまで」が受賞 ともに東北出身

河出書房新社は8月30日、第55回文藝賞の受賞作を発表しました。

 

第55回文藝賞は、東北出身の2名が同時受賞!

第55回文藝賞は、8月23日に山の上ホテルにて、磯崎憲一郎さん、斎藤美奈子さん、町田康さん、村田沙耶香さんの選考委員4氏により選考会が行われ、次の通り受賞作が決定しました。

 
■第55回文藝賞

日上秀之(ひかみ・ひでゆき)さん
「はんぷくするもの」

山野辺太郎(やまのべ・たろう)さん
「いつか深い穴に落ちるまで」

 
受賞者の日上秀之さんは、1981年岩手県生まれ。秋田大学工学資源学部卒業。現在、フリーター。岩手県在住。

同じく受賞者の山野辺太郎さんは、1975年生まれ。福島県生まれ、宮城県育ち。東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科修士課程修了。現在、会社員。東京都在住。

受賞者には、正賞として記念品、副賞として賞金50万円が贈られます。授賞式は、10月中旬に山の上ホテルで開催。

 
なお、受賞作・選評・受賞の言葉は、10月6日発売の『文藝』冬号に掲載されます。

 

受賞作の内容紹介

■日上秀之さん「はんぷくするもの」(400字×132枚)

僅かタタミ十畳――プレハブの仮設店舗で問われる“生の倫理”
彼は言った。「あなたは津波に家を流されたじゃないですか。我が家はね、全く無事だったんですよ。波の飛沫すら一滴もかかりはしなかった」と――。
被災地の仮設店舗で、病気の母とともに今にも潰れそうな商店を続ける毅(つよし)。訪れる客といえば、近所に住む腰の曲がった老婆の風峰さんと、支離滅裂な万引き論を熱く繰り広げる同級生の武田、そしてツケで買い物をする古木さん。古木さんはツケの3,413円を、電話では何度も払うと言いながらいっこうに払いに来ない。そんな中、母の体調が悪化し、その原因は古木さんにあると考えた毅は取り立てを決意する。しかし毅が古木さんの家へ向かおうとする度に、カラス、猫、石、そして街が突然不吉な気配を放ち、彼を止めてしまう。ある日、常連客の風峰さんの身体に突然の不調が訪れ、毅はその責任が自分にあると考え始めるが……。
被災地の日常の中、時に笑いにまで昇華される底知れぬ畏れ――生の倫理を根源的に問う、驚異の新人登場。

 
■山野辺太郎さん「いつか深い穴に落ちるまで」(400字×213枚)

日本社会のシステムを戦後史とともに“真顔のユーモア”で描きつくす!
戦後から現在まで続く「秘密プロジェクト」があった。発案者は、運輸省の若手官僚・山本清晴。敗戦から数年たったある時、新橋の闇市でカストリを飲みながら彼は思いつく。「底のない穴を空けよう、そしてそれを国の新事業にしよう」。かくして「日本ブラジル間・直線ルート開発計画」が「温泉を掘る」という名目の元、立ち上がった。その意志を引き継いだのは建設会社の子会社の広報係・鈴木一夫。彼は来たるべき事業成功の際のプレスリリースを記すために、この謎めいた事業の存在理由について調査を開始する。ポーランドからの諜報員、作業員としてやってくる日系移民やアジアからの技能実習生、ディズニーランドで待ち合わせた海外の要人、ブラジルの広報係・ルイーザへの想い、そしてついに穴が開通したとき、鈴木は……。
様々な人間・国の思惑が交差する中、日本社会のシステムを戦後史とともに真顔のユーモアで描きつくす、大型新人登場。

 

文藝賞について

文藝賞は、1962年に文芸誌『文藝』で創設された公募の新人文学賞です。河出書房新社が主催。

日本における新人作家の登竜門とされ、第一回受賞作である高橋一巳さん『悲の器』をはじめ、田中康夫さん『なんとなく、クリスタル』、山田詠美さん『ベッド タイム アイズ』、綿矢りささん『インストール』、白岩玄さん『野ブタ。をプロデュース』、山崎ナオコーラさん『人のセックスを笑うな』など、実力と才能を兼ね備えた作家を多数輩出しています。

ちなみに、創設当時の『文藝』の編集長は坂本一亀さんで、音楽家・坂本龍一さんの父。

 
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