村上春樹研究で知られるイム・キョンソンさん短編集『ホテル物語』邦訳版が刊行
日之出出版は、韓国国内累計65万部超のベストセラー作家で、日本では村上春樹研究で知られるイム・キョンソンさんの短編集『ホテル物語 グラフホテルと5つの出来事』をマガジンハウスより刊行しました。閉業を控えた名門「グラフホテル」を舞台に、5人の大人たちがそれぞれの人生の転換点を迎える、心揺さぶる短編集です。
この人たち、この後どうするんだろう――? 想像の余地を絶妙に残した結末の余韻に思い切り浸りたくなる大人のオムニバスドラマ
本作は、名門グラフホテルが閉館する最後の半年間に起きた出来事を背景に、それぞれの人生の転換点に立ち、さまざまな感情や決断を迫られる人々の姿を描いた5つの短編からなる物語です。
閉館を半年後に控えたグラフホテルでは、誰もが過去と現在、そして未来に向き合いながら、自分自身や周囲の人々とどのように向き合うのかが描かれています。それぞれの物語が、登場人物たちの複雑な感情や、彼らの人生における重要な局面を鮮やかに映し出しています。
◆「一か月間のホテル暮らし」
後輩監督の脚本チェックの仕事を引き受けることとなった映画監督のドゥリ。グラフホテルの部屋を用意され、そこで1カ月間集中して仕事に取り組むことになったが、かつての栄光と現在のギャップに心が揺れる。自身の体調の変化も重なり、思うように仕事が進まないでいたが、ある人との再会をきっかけに、彼女は新たな決意をする。人生の節目に彼女が下した決断とは?
◆「フランス小説のように」
女と会うために、仕事中にも関わらずグラフホテルに向かう男。女の「フランス小説みたいなことをしたい」というリクエストに応えて、男は昼日中のホテルで女と密会することにしたのだ。非日常の世界で燃え上がる二人だったが、女のふとした言葉に男の心は揺さぶられる。はたして二人の関係はどうなるのか?
◆「ハウスキーピング」
人とのかかわりをこばみ、SNSで発信されるひいきの作家の投稿を心の支えに、グラフホテルでハウスキーピングメイドとして働くジョンヒョン。完璧な清掃を繰り返す日々に充足感を得ていたが、そんなある日、過去の同級生との再会が彼女の心に波紋を広げる。
◆「夜勤」
夜勤のドアマンとして働くトンジュ。勤勉な彼には、過去にある年上の女性との燃えるような恋と別れの経験があった。そのほろ苦い思いもそろそろ薄らいできたそんなある日、二人は思いもかけない場所で再会することに…。過去と現在の思いが巡る中、トンジュと女が最後に下した決断は? 韓流恋愛ドラマを思わせる純愛と悲しい別れの物語。
◆「招待されなかった人々」
毒舌で人気の芸人サンウは、先輩芸人ヨンイルからセレブリティとの食事会に誘われる。その芸風とはうらはらに、人みしりのサンウはなかなか話の流れに乗れないでいたが、そこにいた投資顧問の男バンと意気投合する。ふたりは男同士の交流を深めるが、しかし「バンがなぜ自分と交流するのか」がわからないサンウは、意を決してその思いを吐き出すが…。閉館を控えたグラフホテルのピアノバーで繰り広げられる大人の軽妙な会話劇にも注目。
人生の転換点に直面する登場人物たちの悲喜こもごもが、グラフホテルの歴史と共に語られる本作は、読者を深い余韻の中に誘います。あなたも、この珠玉の5編が紡ぎ出すドラマチックな世界に浸ってみませんか?
著者プロフィール
■イム・キョンソンさん
韓国ソウルに生まれ、横浜、リスボン、サンパウロ、大阪、ニューヨーク、東京で成長、10年あまりの広告会社勤務等を経て、2005年から専業として執筆活動。
著書にエッセイ『母さんと恋をする時』『私という女性』『態度について』『どこまでも個人的な』『自由であること』『京都に行ってきました』『私のままで生きること』、小説『ある日、彼女たちが』『覚えていて』『私の男性』『そばに残るひと』『そっと呼ぶ名前』『ホテル物語』ほか多数。
歌手でもあり作家でもあるヨジョさんとは『女性として生きる私たちに│ヨジョとイム・キョンソンの交換日記│』も刊行。邦訳に『村上春樹のせいで│どこまでも自分のスタイルで生きていくこと│』がある。独立した個としてそれぞれが誠実に、自分らしく生きることをテーマにしたエッセイを多く書き、小説ではもっとも大切な価値観として「愛」を見据え、恋愛を主に扱う。
■訳:すんみさん
翻訳家。早稲田大学文化構想学部卒業、同大学大学院文学研究科修士課程修了。訳書にチョン・セラン『屋上で会いましょう』『地球でハナだけ』『八重歯が見たい』(以上、亜紀書房)、キム・グミ『あまりにも真昼の恋愛』『敬愛の心』(以上、晶文社)、ウン・ソホル他『5番レーン』(鈴木出版)、キム・サングン『星をつるよる』(パイ インターナショナル)、ユン・ウンジュ他『女の子だから、男の子だからをなくす本』(エトセトラブックス)など、共訳書にイ・ミンギョン『私たちには言葉が必要だ』(タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(以上、筑摩書房)などがある。
ホテル物語 グラフホテルと5つの出来事 イム・キョンソン (著), すんみ (翻訳) この話は、グラフホテルが閉館する、最後の半年間に起きたことである。 日本では村上春樹研究でも知られる作家イム・キョンソンによる、ホテルを題材にした珠玉の短編集。年末の閉業を控えた名門「グラフホテル」を舞台に、5人の大人たちが、それぞれの人生の転換点・区切りを迎える出来事が描かれる。 かつての売れっ子映画監督ドゥリが、動画配信サービス向けドラマ脚本のチェックを依頼されホテルで缶詰めに。時代の流れに悩みつつも行き着いた決断とは(「一か月間のホテル暮らし」)。 相手の女性の「フランス映画みたいなことをしたい」という願いをうけ、会社を抜け出してグラフホテルで情事にふけった男だが…(「フランス小説のように」)。 グラフホテルに宿泊していた作家のトンジュが、ふとしたきっかけでドアマンの男から聞かされた純愛と逃避行の物語、その結末とは…(「夜勤」)。 ほか「ハウスキーピング」「招待されなかった人々」の5編を収録する。 |
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